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2009-02

石田衣良 – 眠れぬ真珠

17歳年下の彼と恋に落ちていく版画作家の女性「黒の咲世子」。年の差ゆえに、生きる世界が違うがゆえに、彼女はこの恋を一時のもの、彼がもとの世界へ巣立っていくまでのものとしようとするが。。。

とても美しくて、とてつもなく哀しい。そして淋しい。

自分が同じような年齢になってきたからなのか、同年代の女性の気持ちもすこしは分かるようになった気がする。そんな気持ちで読むと、異性のことなのに自分が同化してしまう。咲世子がまるで自分のような気がしてきてしまう。こんな話みたいなことになったらどうなるんだろ。

し かし石田さんすごい話書くなぁ。たしかに解説で小池真理子さんが書いているように、まるで女性が書いた作品のように、この妙齢の女性の心理を見事に描き出 している。そんな40代の女性の心理や行動や生態を描くという点でも、版画作家そして映像作家とはどんなものかという点でも、読んでいて、なるほどと思う ことばかり。やはり石田さん相変わらず観察眼も知識も想像力も豊か。すばらしい。もちろん小説としても見事なバランスとテンポだと思う。

文章中からなるほどと思う事ひとつ。

「そう。女はね、二種類に分かれるの。ダイヤモンドの女とパールの女。光りを外側に放つタイプと内側に引きこむタイプ。幸せになるのは、男たちの誰にでも値段がわかるゴージャスなダイヤモンドの女ね。真珠のよしあしがわかる男なんて、めったにいないから」
「ダイヤの女は幸せになれて、パールの女は幸せになれないの」
「そんなに人生は単純なものじゃない」

なるほどなぁ。

眠れぬ真珠

眠れぬ真珠

乃南アサ – 6月19日の花嫁

記憶喪失にからむミステリー。主人公が自分の過去を捜していくストーリー。はたして6月19日とは何の日であるのか?

乃南さんのものとしては軽めですいすい読める感じ。仕掛けも複雑じゃないし、どっちかいうと単純なストーリー。相方の男の心情が日記形式でつづられるのが変わってるかなーって感じかな。

それほどインパクトはつよくなかった。

6月19日の花嫁

6月19日の花嫁

よしもとばなな – イルカ

これはフィクションなのかそれとも結構事実なのか、そのへんの事情はよくわからないけれれど、主語もなく冒頭から一気に一人称で描き出される物語のスピー ドと展開にすぐに引き込まれて一気に読んでしまった。章立てもなにもなく、まるで親しい友人が目の前で最近起こったことを矢継ぎ早にしゃべっているよう。

女 性の視点で描かれているから、実はところどころに見え隠れするこまかい感情についてはわかりきれないところもあるけれど、主人公キミコの一生懸命生きてい る様子、落胆する様子、とまどう様子なんかが、恥ずかしげもなくというか赤裸々にというか、はっきりいって痛々しいほど生々しい感情の吐露として描かれ、 読んでいて息苦しくなってしまうほど。こんなにストレートに全部正直に言葉を飾らずに感情を出されたら、こちらはただただうろたえるだけ。堪えられそうに ない。

でもそのほんとにほんとなストレート感は嫌なものではなく、素直に(いい意味で)きれいに、潔く生きようとするひとにはとてもうらやましい姿なんじゃないだろうか?自分にはきっとできないけれど。だからこそ読んでいて自分との差に愕然とし息苦しくなるのかもしれない。

ぜひ女性に読んでもらいたい本。

いままでよんだばなな氏の本で一番好き。衝撃的だった。あまりにも直球すぎて怖い。でも好き。

イルカ

イルカ

中島らも – 砂をつかんで立ち上がれ

らもさんの、とくに書物にかんして書かれた短編やあとがき、そのほかをまとめたもの(だと思う)。同時期に書かれたものもあるのか、話の内容が重なったりしてるけれど、そんなことはちっとも気にならない。らもさんの語り口なら同じ話を何度聞いても平気。

とくに「一冊の本」に書いていたシリーズで紹介される本がどれも読んでみたくなるものばかり。またそういう気にさせる書き方してるもんだからたまったもんじゃない。東海林さだおと町田康がとくに気になるなぁ。

またいろんな本のあとがきをつづったものも、やっぱりらもさんらしくなにかひねってあって、面白くもない作家をほめたり、その足跡だけをたらたら描いたようなものではなく、なにかしら「いっちょやったろかー」的な文体がいちいち楽しい。好きやわ。

ああ、もっとこの人の生み出すものを見続けたかった。

砂をつかんで立ち上がれ

砂をつかんで立ち上がれ

村上春樹、大橋歩 – 村上ラジオ

久しぶりに読む村上さん。ananに連載していたという50編からなる短編集。一編が3ページほどなので、すすっと読めてしまうのだけれど、どの話も村上さんらしくて、味わいというか人柄でてて楽しい。まるでテーブルでお茶をしながらしゃべっているような錯覚さえ起こる。

ほんとこういうタッチ上手いよなぁ。

ちょっとした食べ物のはなしやら音楽の話やら。どれも楽しいし、気になるモノやら本やら音楽やらがちらちらでてくるあたりがニクイ。それらを知りたくなるもん。

大橋さんの版画もすごく素敵。微笑んでしまう。

村上ラヂオ

村上ラヂオ

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