in the kitchen / 中島教秀・武井努 Duo

先日の中国・九州地方へのミニツアーのためもあって、7月にはいってから教秀さんといわゆる宅録のようなことをして、それをミニアルバムという形にしました。(ツアーについてはまた別途書くつもりです)

いわゆるちゃんとプレス工場にだしたようなものでもありませんし、エンジニアが何かをしたわけでもなく、2人でできることだけやって完成させたものなので、きちんとしたスタジオ録音盤のような音のよさというようなものはありませんが、逆に非常にリラックスした、まるで居間で聞いているかのような気楽な音が楽しめる作品になりました。

今回は教秀さんの曲を5曲収録(そのうち4曲は初録音)となりましたが、いずれ僕もこのDuoに作品を書いて、ライブでやったり、こんな風に音源にできたら楽しいだろうなと思っています。

作品はライブ会場での販売(できるだけ持ち歩きますね)に限られてしまいますが、送料や振込手数料がかかってもよいとおっしゃるのであれば郵送(たぶんメール便)いたしますので、気軽にご連絡くださいね。

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in the kitchen / 中島教秀・武井努

in the kitchen / 中島教秀・武井努

1. The Sense Of Oppotunity
2. キッチンがよごれてる
3. Daytime Fit For You
4. Sphere
5. Coming Soon

[member]
中島教秀 bass, percussion, piano
武井努 tenor and soprano sax

CD-R 定価\1,000(税込)

NanoPeaks
2014/7/23

千日紅の恋人 – 帚木蓬生

初めて読む帚木さん、まずお名前読めなかった、はかきぎほうせいさん、だそう。千日紅はかわいらしいちいさな丸い花で、紫やピンクなどいろいろな色があり、長期間咲いている花だそう。

父が遺した、彼が一生懸命に作り上げた安アパート”扇荘”を管理することと、介護施設での仕事をする日々を過ごしている時子。そのアパートには様々な住人が去来する。ずっとすんでいるものもいれば、すぐに出て行くものもいたり。かわった住人もいれば、まじめにコツコツ家賃を支払ういい住人もいる。

代わり映えもしなく、流れて行く、でも悩みのない日々。そこへ有馬という住人が越してくる。彼は古風な好青年で、抜擢された転勤でこの地へやってきて、扇荘にすむことになった。朗らかで、仕事もこなし、時子が手伝う職場にもボランティアでやってきたりする。かれはマメで、アパートの隅にあいていた土地に花壇をつくる。そこに植えられたのは千日紅だった。

今までに不幸な別離を経験してきた時子はそんな有馬を好ましく思うが、いまひとつ踏み込みこともできない。しかし有馬に誘われ母と一緒に鵜飼いを見に行ったり、施設の運動会ではしゃいだり、時子は少しずつ惹かれていく。ついに時子は彼から結婚を申し込まれるが、実は彼は転勤がきまったのだった。父の形見であるアパートと有馬との間で揺れる時子。。。。

男性作家が書く恋愛ものはそんなに読んできてないけれど、この帚木さんの小説はとてもぼくにフィットする(つまり好み)感じがする。ほかの作品も読んでみないとわからないけれど。男性作家特有の強引さ(いい意味でも悪い意味でも)がないし、話を進めるにしても、直接的な描写ではなく、(特にこの作品の場合は女性が主人公だからその視点で)やんわりした描写で無理なく話が景色としてはいってきて、いい読み心地だった。

すごく、すごく大人な恋愛もの。素敵。

新潮文庫 2008

宮部みゆき – 返事はいらない

6編からなる短編集。宮部さんの作品はいつもすこしクールな中に人の暖かさというかやさしさみたいなものが含まれていて、寒々しいことにならなくていい。それがシリアスな作品であっても。短編集ということでひとつひとつのお話はそう長くはないのだけれど、それも骨がある感じがする。

1994年の作品なので、いろいろ時代背景は古く、表題作である「返事はいらない」のキャッシュカードの話なんかは古いしくみ(でもいまでもそんなとこあるかもだが)だし、バブリーな感じのお店がでてきたり、東京がいまの感じとは違うキラキラさ加減で、その中にいるひとたちきらびやかな生活とそれにより浮き彫りになるさみしさ、などなどちょっと前の感じがするけれど、そこに描かれる人間の感じはかわってない。宮部さんぽいかなと。最後の「私はついてない」ってのはあるあるって感じでおもしろかったな。

「返事はいらない」「ドルネシアにようこそ」「言わずにおいて」「聞こえていますか」「裏切らないで」「私はついてない」って、なんかどれも中島みゆきの曲のタイトルみたい。

新潮文庫 1994