アルベルト・ピントン氏率いるグループのツアーに2本参加できました。スウェーデン在住のベーシスト森泰人氏が主宰するスカンジナビアン・コネクションという企画の40回記念として来日した彼らのツアーを垣間見たわけですが、本当に素晴らしかったですし、一緒にできたことは非常に貴重な経験になりました。
メンバーそれぞれが素晴らしい音楽家であることはいうまでもないのですが、グループとしてきっちり纏まっていて、かつまったくマンネリ化しない自由さを併せ持っているというのは驚きでした。フリーフォームの音楽は限りなく自由にいることができて、音楽的なものや感情の吐露がしやすいんじゃないかと思っていますが、同時に常にいろいろな要素の崩壊のリスクもあって、それが面白さになる場合もあるけれど、冗長になったり極端に破壊的になったりしてつまらなくなる場合もあります。まあ何が面白いか、どこまでがいいのか、なんてことは決められないことですが。
彼らの音楽は純粋に音楽的で、高度な技術とセンスに裏付けされていて、どこまでも理性的でコントロールされていて、そして何より健康的な感じがしました。すごくたくさんの物事が起こっているのに、それが常に濃密に凝縮されていて、決してつまらなくならない。アルベルトさんの曲の作り方や、グループのコントロールの仕方も素晴らしく。一つのステージでいろいろな絵が十分に、でも描かれすぎないぐらいの節度をもって作り上げられる、そんな感じでした。
ぼくはスウェーデン語は皆目^^;、英語もあんまりなのですが、そんな僕をうまく引き入れ、彼らの音楽に参加できるスペースと寛容さを与えてもらえて、とても嬉しくまたひとつ大きな勉強と経験になりました。フリーフォームの音楽の捉え方や考え方が今までは偏っていたなと思いましたし、新しい音楽を知った感があります。音楽を通して知らなかった文化に触れ、よりヨーロッパの、北欧の音楽やミュージシャンに興味が湧きました。いつか行ってみたいです。ネットや交通が発達して狭くなったと言われる世界だけれど、音楽はほんと言語であって文化であってその土地・食べ物・そこにいる人々によって育まれるものなんだなと思いました。大げさかもしれませんが。
「いつでもなんでも自分の好きなように演奏したらいいよ」と言われて、結局は好きに演奏したわけですが、やりながら結局は何をするにしても、確固たる自分の出したい音、ひいては自分は何(何者)なのか、どうしたいのかを常に意識したり考えたり、持ち続けなければならないのだ、と、すごく当たり前のことを強く意識させられました。
こんな機会を与えてもらえて幸せです。森さんに感謝します。、激しそうにみえる中で細心のコントロールをみせる素晴らしいトランペッター ニクラス・バーノ氏、音楽をつねに停滞させない豊富なアイデアと自由奔放な演奏で音楽を活き活きとさせるベーシスト トールビョン・セッテルベリ氏(通称とべさん)、若さと無邪気さと抜群のコントロールと音色の豊かさで音楽に彩色しつづけるドラマー コンラッド・アグナス氏、そして言葉では言い尽くせないほどの素晴らしいリード奏者/作曲家であり父のような雰囲気がしたアルベルト・ピントン氏、彼らに出会えてぼくはとても幸せです。そしてこの貴重な機会を一緒に支えたり体験できたみなさん、ありがとうございました!
また彼らに会いたいです。
(photo by Kento Yamamoto)