この作品を読むまで宮本輝が神戸出身てしらなかった。
4つの短編からなる本。表題にもなっている「幻の光」という短編は一人称でずっと語られる物語なのだけれど、その大阪弁というか関西弁が見事。自分の叔母とかが暇ついでに昔話をしてくれているかのよう、めっちゃ自然で気持ちいい。なかなかここまで大阪弁を嫌味なく書いた文章も少ないんちゃうかなぁ。灰谷健次郎の小説のほうがちょっと言葉としてはきついし、自然にながれてない気がする(好きなんだけれど)
その表題作の話もとてもいいし、「夜桜」「こうもり」「寝台車」と、どの話も、とても身近な気分にさせてくれて、すっと腑に落ちるというか、小説なのに自分のことを追体験しているかのように錯覚させるほど、どの話も自然。ありふれたシチュエーションとかそういうことではなくて、景色が自分のいままでの生活のどこかに確かにあった、そんな気がする、そんな小説になってるから。
大阪の人間にしかわかんない感覚かもしれないけれどね。大阪というと”コテコテ”というイメージが先行しがちだけれど、この小説は読後に清涼感さえ感じる。
新潮社 1983