愛川晶 – 七週間の闇

愛川さんはだいぶ久しぶり、というか「六月六日生まれの天使」しか読んだことがない。ので、あまり記憶にないのだけれど、その本も少しオカルトチックだったような感じがしたが、このお話も不思議な、というか人類普遍の謎である”生と死”がひとつのテーマになっていて、その中でも輪廻がキーワードになっている。

ある日大きな歓喜仏に抱かれるようにして首をつって死んでいる女性がいた。彼女は臨死体験者であり、かねてからその方面の著書もある人物であり、病気もあって間もなく自分は死ぬことを知っていたようだった。警察はこれを自殺と断定したが、本当はどうだったのだろうか?夫である画家と、後妻にはいった女。その間に生まれた子供の秘密。

時系列をすこしずつ行ったり来たりして、謎の核心に迫っていく書き方も、テーマも、全体の感じも前に読んだのと違ってすごく面白く感じられた。前はタイミング悪かったのかな。なによりもオカルトぽいところ(ここでは仏教や密教がモチーフにされている)が怖くて、でもそれは実際に僕たちの身にも降りかかるであろうことで、たんにお話として読むというより、もっとなにか諭されているような気になってしまうお話だった。

チベットの「死者の書」って読んでみたいなあ(たぶん章ごとに引用されてるのがそれよね、たぶん)、でも、ちょっとこわい。

タイトルで最初に気づくべきだったなあ。7週間ということは49日だもん、そういう系の話かってわかるよね。うまいタイトル。

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愛川晶 – 六月六日生まれの天使

このところ本を読むペースがすごく落ちているのでなかなかレビューも書いてないのだけれど、実は読んだけれどレビューかいてない本もあったりして(宿題ですな)、書き始めるとまあさっさと書けるのだけれど、なかなか手につかないと書けないという状態が続いている。なのでこのところは読んだ本とレビューというのは順番がごちゃごちゃになってます。

さて、これは最近読んだ本。何も考えずに読み出したのだけれど、読んだタイミングが悪かったのか、あまり好きな感じの文章ではなかった。ミステリーとしてはかなりよくできていると思うのだけれど、いかんせんちょっとすーっと読みたいと思って読んでしまうと、肝心な小さなトリックを見落としてしまうので、先まで読んで「あれ?どうなってんだっけ?」と戻ったりすることもしばしば。

ある事故により短期間の記憶蓄積能力がない男とそのそばでまた別のショックによって記憶を失った女が主人公、という設定ではじまるもんだから、ましてやなんの前知識もたい読者は一体どういうシチュエーションなのか理解できるまでに相当時間がかかるので、ここでイラっとする人には読みにくいかも。

解説で大矢博子さんも書いているように、こういう小説でのミステリーの一番の得意技は「書かないことによるトリック」であり、ちょっとずつ描いていくにしたがって様子は明らかになっていくのだけれど、うまく肝心な部分を避けて書くことにより、より一層物語を複雑化(もしくは単純に見せる)することができるので、愛川さんはそれをうまく使って見事に複雑な(でもよく読むとわかる)文章に仕上げている。

僕も最後までどうなってるのかちっともわからなかった。読み終わっても「あれ?」って感じだったので、じっくりある程度時間をかけて一気に読むのがいいのかもしれないなぁ。ちょっと文章は好きになれそうにないけど。