村山由佳 – 夜明けまで1マイル


久々の村山さん。大学生が主人公の青春小説。

偶然の出来事からアイドル的先生と深い仲になってしまう主人公僕。簡単にいうとこれは不倫なので公にはできない。僕は彼女にすごく恋をしているけれど、彼女はいったいどうなのだろう?どうやら夫は海外赴任しているようで、彼女はほとんど僕の家に入り浸っている。でも夫が帰ってきている間は会えなくてたまらなく寂しい。そして僕はバンドをしていて、その4人の中でも実はいろいろ。僕はその性格からかまとめ役になることが多い。男勝りですごくいい歌をうたうボーカルのうさぎ。彼女はいつも恋愛下手。その慰め相手もなぜか僕。でも僕はすこし彼女が気になるのだった。

学生と先生の恋、アマチュアバンドがデビューしようとするときにぶち当たる壁。これらってかなり使い古されたネタだと思うけれど(これを両方同時につかってるのってもの、きっとあるよね)このお話は陳腐なことになってない。陳腐になりそうな感じを見せつつ、そこでないところにうまく持っていってるのが上手いなあと思う。

無論この物語のあとに僕らがどうなるのか、先生がどうなるのか、なんてことを書き出したらきっと別の物語をつくってしまえると思うのだけれど、いい意味でコンパクトに(そういう意味では実に学生の日常、世界のいい意味での狭さ)まとまっていていいと思う。恥ずかしげもなく青春だなーと思える、そんなお話。二十歳頃の青かった自分を思い出す。こういうのって永遠に変わらないものなのかなぁ。

集英社文庫 2005

Amazonで詳細を見る
楽天ブックスで詳細を見る

村山由佳 – 星々の舟

ある家族の母(継母だった)の死を契機に描かれる家族模様。娘の視点、兄の視点、腹違いの妹の視点、末っ子の視点・・・・などなどいろんな視点から、彼女の死からはじまる波紋を描き、ひとつの家族とはどんなんか?みたいな話(になってるんだとおもう)。

とくに最後の章の、その夫の視点で語られる物語は、戦争体験に基づくものになっており、先妻とのこと、そして後妻とのこと、そして戦時中に出会った女性のことが描かれるのだけれど、そこで作者が語ろうとしたことが、まだちゃんと理解できていないけれど、幸せとはどういうことなのか?という作者なりの意見をふっと感じさせる、そういうところがとても気に入って、気になった。

人の幸せって、何やろね?

文芸春秋 2006

村山由佳 - 星々の舟
村山由佳 – 星々の舟