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2008-06

田口ランディ – できればムカつかずに生きたい

表題を含む、26編からなる短編集。いろんな時期に書かれたものを3つのカテゴリにわけて収録している。ランディさんの本をたくさん読んでいると、「あの ころの話かなー」とか「ああどこかで読んだ事あるな」のような話題が多いのだが、そうでないものもあるし、そういったものもまた読んで、微妙にトーンが 違っているので面白くよめる。

やっぱりこの人の文章というか、語り口が好き。「どうして?なぜ?」と自他に問う姿勢が好きなのかも。そして、自分が感じたことを難しい言葉をつかわずに、なぜあんなにストレートに伝わるようにかけるのだろう。今回もいくつも「はっ」とする言葉があった。

特に好きなのは「寺山修司の宿題」という編。ねこの絵本の話にはほろりとしてしまった。

できればムカつかずに生きたい

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石田衣良 – 少年計数機―池袋ウエストゲートパーク2

ウエストゲートパークシリーズ2作目。今回も池袋の路上からさまざまな事件がおこり、トラブルシューターの真島誠が立ち上がる。

今回 は、ネットの覗き部屋に住む女の子、LD(ラーニング・ディスアビリティ)の少年、新鋭銀細工デザイナー、非合法の売春宿・・・・、今どれも実際にある (いる)ものたち。石田さんはこれらの素材をごまかしなく徹底した視点と描写で見事に描き、それが主人公真島の視点と口から、「~ぽい」感じじゃなくて、 まさにそのまんま20代前半の青年の語り口で語られる。だからもしかすると少し読みにくいのかも。実際少し時間かかるし。でも、一度この語り口になれる と、もう読み手さえそのストリートの住人であるかのような錯覚さえ覚えてしまう。自分の視線の先の出来事のような。

しかし、一体、どんなフィールドワークしてるんやろ。面白すぎる。

少年計数機―池袋ウエストゲートパーク〈2〉

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石田衣良 – 池袋ウエストゲートパーク

石田さんの本は相変わらず視点がするどく面白い。かなり今風な若者たちストリート系の話を、また若者たちの言葉で、でもそれらに詳しくないものたちにも、なぜかわかる(とくにそういう雰囲気がすごく良く伝わってくる)書き方で、いまの世相なんかをびしびしと。

池袋の片隅で果物屋を手伝う主人公真島誠に舞い込む数々の難題たち。池袋の街、ストリートからそれらはやってくる。それらをストリートのチームやら、警察やら、ときには組関係やらと関わりながら解決していく。こんなにいろんな人間関係持ってると楽しいだろうなー。

こういう風俗の描写の徹底さ加減もすばらしいけれど、起こる数々の事件(この本ではおはなしは4つ)の話の組み立てもとても面白い。すごくなるほどなーという展開するし、でもやっぱりストリート、こんな池袋界隈ならではの話題だし、ほんと石田さんって徹底しててすごいな。

池袋ウエストゲートパーク

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垣根涼介 – ワイルド・ソウル

戦前からつづいていた日本からの各国への移民制度。1950年代の終わり頃、政府によるいいとこどりの宣伝のおかげで、海外にて一旗揚げてやろうと考え、 すべてを投げ打って夢の新天地を求めたものの、目の前に現れたのは耕作すらまともにできない、そこからはどこにも行けないような、アマゾン奥地の荒れ地 だった・・・・・

”ブラジル移民”というものがあって、いまでもその2世3世がいて・・・ということは知っているものの、移民政策自体 がどういうものであったかは全く知らなかった。もちろん苦労して成功した人もいただろう。でも政府の宣伝と現実のあまりの違いに騙されたと思い、苦労の甲 斐なく倒れていったひともまた数多くいたに違いない。それらは巧妙に隠され、遠い土地であったことをいいことに、関係者たちは目をつぶり、口を閉ざしてい た。

この物語はフィクションだけれど、かなり事実に基づいて描かれているらしい。先人たちがどれほどの苦労をしたのか、そして志半ばで どんな思いで倒れていったのか、その地を逃げ出せたとしても、そこからどういう人生を歩んだのか。文字を追う目がふるえてしまいそう。想像すらできない。

物語はそこから生き延びたひとたちが当時の外務省担当者や関係者たちに復讐を、しかも自分たちの苦しみがわかるような、そんな方法を編 み出し実行するサスペンスだが、そんな面も物語として面白いけれど、それよりもその関係者たちが当時の事実に対してどう思っていたのか、どんな態度をとっ ていたのかということも描かれていて、それがこの物語中の外務省という特定の場所だけでもなく、現在でも累々と積み上げられていっている国の機関の失態、 不祥事、不正、矛盾、そんなものが見えているのは実は氷山の一角なだけで、苦しくても声をあげられずにいるひとたちがたくさんいるのではないか、と思わせ られてしまう。国は誰に向かって政治をしているのか?

上下巻併せて900ページほどあるが、あまりにも面白くて一気に読んでしまった。 伊勢に記念物としておいてあったブラジル丸、これも移民船だが、こんな歴史があったと知っていたら、子供心にも違って映ったかも。知らないという事は罪な のか。奇しくも世間はブラジル移民から100年だそう。ぜひ読んでほしい。

ワイルド・ソウル〈上〉

ワイルド・ソウル〈上〉 – Amazon

ワイルド・ソウル〈下〉

ワイルド・ソウル〈下〉 – Amazon

 

フライボーイズ

実話に基づいたお話。第一次世界大戦時にフランス空軍に参加するべく集まったアメリカの若者たちが、フランスに渡って飛行技術を学び、飛行機に乗り、ドイツ空軍と戦うお話。

第 二次世界大戦とちがって、なんだか複葉機とかはのんびり感があって、戦争ものであっても、少し悲壮感がないのは気のせいかな?でも、もしこの映画のなかの エピソードたちが実話に近いのであれば、この時代の闘いは、武士道精神ぽいところがあっていい時代だったのかもと思わせられる。いまのような大量発射大量 破壊みたいなものではなくて、一対一で正々堂々と戦うとこなんぞ、中世の騎士のよう。

ま、ストーリーは単純だったけれど、なによりも、フランスの大地のうつくしさには目をうばわれる。原野、森、草原、そして川、その色彩の豊かさ、そしてそれを繊細に映し出した画面、それに浮かぶ、なんだか少しのんびりした複葉機たち、そんな画面がすばらしく美しい。

フライボーイズ

フライボーイズ – Amazon

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