めちゃめちゃひさしぶりに辻さん。このところ女性作家ばっかり読んでいたので、男性作家の、しかも恋愛ものを読むととてもその違いにびっくりする。とくに この人の場合はどーしても刹那的だったり恵まれなかったり、なにかすこし哀しい感じがしてしまうことがおおいのだけれど、この短編集はそうでもなく、心温 まるものやら、もっと悩んでしまうようなものまで。
表題作である「目下の恋人」がとてもいい作品だと思う。男の人ならこういう感覚がわか る(決して刹那的ではなく)ひとも少なくないのではないか。何か未来的なゴールやら結末というものを設定せずに、それでも大事な人を今まさに大事におもえ る/思うがために、目下の(いまのところの)恋人、と呼びたくなるような気持ち。実現できたらそれはすごく素敵な事なんだろうなと思う。
そのほかにも哀しくなるくらい奔放すぎる「青空放し飼い」「裸の王様」という連作やら、長い人生における恋愛?を舗装増させる「愛という名の報復」とか、どれも愛や恋についての話。どれもいいなーと思えるものばかり。
でもあとがきでも書かれているように、愛と恋は連立するようでしないものなのかも、これはぜんぜんわからない。恋はしたくなるものだけれど、愛はやってくるもの?はぐぐむもの?両者は同居できない?感覚的にも理性的にもぜんぜんわからない問題だ。悩んでしまう。
そして一番哀しかったのが、この本の一番最初の言葉
一瞬が永遠になるものが恋
永遠が一瞬になるものが愛
この言葉たちが実感できない自分。