石田衣良 – 眠れぬ真珠

17歳年下の彼と恋に落ちていく版画作家の女性「黒の咲世子」。年の差ゆえに、生きる世界が違うがゆえに、彼女はこの恋を一時のもの、彼がもとの世界へ巣立っていくまでのものとしようとするが。。。

とても美しくて、とてつもなく哀しい。そして淋しい。

自分が同じような年齢になってきたからなのか、同年代の女性の気持ちもすこしは分かるようになった気がする。そんな気持ちで読むと、異性のことなのに自分が同化してしまう。咲世子がまるで自分のような気がしてきてしまう。こんな話みたいなことになったらどうなるんだろ。

し かし石田さんすごい話書くなぁ。たしかに解説で小池真理子さんが書いているように、まるで女性が書いた作品のように、この妙齢の女性の心理を見事に描き出 している。そんな40代の女性の心理や行動や生態を描くという点でも、版画作家そして映像作家とはどんなものかという点でも、読んでいて、なるほどと思う ことばかり。やはり石田さん相変わらず観察眼も知識も想像力も豊か。すばらしい。もちろん小説としても見事なバランスとテンポだと思う。

文章中からなるほどと思う事ひとつ。

「そう。女はね、二種類に分かれるの。ダイヤモンドの女とパールの女。光りを外側に放つタイプと内側に引きこむタイプ。幸せになるのは、男たちの誰にでも値段がわかるゴージャスなダイヤモンドの女ね。真珠のよしあしがわかる男なんて、めったにいないから」
「ダイヤの女は幸せになれて、パールの女は幸せになれないの」
「そんなに人生は単純なものじゃない」

なるほどなぁ。

眠れぬ真珠
眠れぬ真珠

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