昭和43~46年あたりに、漫画讀本、オール讀物に連載されていた東海林さだおのエッセイ集(当時エッセイって言葉なんかなかったかも)。たしか中島らもの本で東海林さんの本がおもしろい、と書いていたのでいつか読んでやろうと思ってついに手をだした。結構何冊もつづいているはず。
著者がちょうど30代にはいったころで、ようやく物書きとしてなんとかかんとかやっていたころだと思うのだけれど、まずは当時の風俗が赤裸々に描かれていてすごく面白い(どうも昭和40年代にはとても興味があるのだな)と思うし、あと話題も競馬だとか、男女関係だとか、新婚旅行とか、ハワイアンセンター(ちょっとまえに映画フラガールの舞台になった常磐炭坑)とかとか、当時話題になっていたようなことが、当時の視点・考え方、そして著者の視点でおかしく描かれていて非常に楽しく読める。
あとやっぱり著者のちょっと卑屈な、ヘイコラした、頑固な自分のキャラが何事にも「すんません」的な態度でルポしていくのだが、その中にキラリと光るニヒルな笑い、目立たないけど鋭い観察、柔らかく言ってるけれど実はすごい社会批評など、読んでいて「なるほど」とか「にやにや」とかすることばかり。うまいなぁ。それともこれが自然なのか。
漫画家として知られる彼の挿絵も的を得ていておもしろく、このシリーズ癖になりそう。
文春文庫 1976