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2009-09

小川洋子 – ミーナの行進

芦屋の大きなお屋敷に住むミーナと、そこに預けられた朋子の物語。昔動物園もやっていたそのお屋敷にそのころからいるコビトカバのポチ子がなんとも可愛い。

ぐぐっとくるドラマチックな展開でもなく、わりに淡々とお話が進むのだけれど、なんでもないような日常、朋子が知る新しい世界たちがつぎつぎとでてきて、スピード感あって、すいすい読めてしまう。けれども、さっさと読むと、こまかな描写やら事件やら、2人や、素敵な家族や昔話やら、いろんなことをあっさり読み飛ばしてしまいそうになるので、じっくり読むと素敵。

ミーナがやたらと関西弁なことやら、彼女が体が弱いのでそのポチ子にのって学校に通うということやら、芦屋を中心とした街の描写とか、なかでもミーナが大事にみんなに内緒でためていっているマッチ箱の図柄から連想する膨大な物語たち(これがどれもほんとうに素敵・・・小川さんもよくこんなの思いつくなぁ)とか、いろいろまるでいろんな味がするキャンディーのよう。

このひとたちがいまもこの世界のどこかにいるような気がしてならない。
幸せに暮らしてるのかなぁ?
ポチ子に乗りたかったなぁ。

挿絵があるんだけれど、とても素敵な絵たちなんだけれど、ちょっとイメージと違うなぁ、もっとふわふわしてほしいなぁ。

中公文庫 2009

乃南アサ – 団欒

「団欒」という、その言葉から想像する場合は、どちらかといえば和気あいあいとしたような、あったかいような、幸せな雰囲気を想像させるものであるのに、この5編からなる短編集はまことにもってゾッとする団欒、家族、恋人たちの模様が描かれている。普通に転がってる題材をこうも人間の負の部分を、また気持ち悪くなくさらっと描ける乃南さんの文書にまたまた脱帽。面白いもん、気持ち悪くても。

”だって家族なんですものね”という言葉ですべてのプライバシーというものがない家族を描く「ママは何でも知っている」、極度の潔癖症と整理整頓だけにすべてを奪われてしまう家族を描く「ルール」、ゲームをするかのように築き上げていた子どものままの世界がわずかなほころびから崩れ去ってしまう「僕のトンちゃん」、実際にありそうな(そしてあったら非常に怖い)、そしてすごく悲しい家族模様を描く「出前家族」、そして死体と一緒に暮らしてしまう表題である「団欒」。

あぁ、どれもシュールすぎる!

新潮文庫 1998

村上春樹 – 雨天炎天―ギリシャ・トルコ辺境紀行

村上さんのこういう旅の文章ってほんとおもしろい。普通の紀行文とか旅の記録みたいなのとは実に違ってるから。なによりもあくまで主観的立場を貫き続けられる姿勢(当たり前か)、全体的なことより自分が見て感じたあまりにも細かいディティールに関する考察の多さ(笑)、そして文句が多いこと(笑)。もちろん村上さんには会った事ないけれど、人柄がにじみ出てるし、ちょっと意固地インテリっぽいところさえ素敵。

前半はギリシア正教の聖地アトス(半島)の修道院を巡る旅、そして後半はトルコを車で旅する。もちろん行ったところのことのみ記しているけれど、そこで見聞きしたことから村上さんを通して文章としてつづられるこの2つの場所の魅力とまったくそうでない部分、人々の暮らし、国というシステム、日本にいる間には絶対理解できない生き方、そんなものが克明に、かつちょっとひねくれて描かれていて楽しい。でも楽しいだけじゃなくて、ふーんと感心したり、行ってみたくなったり。

この人が書くと「実にしようもない場所である」と書かれたとしても、行ってみたくなっちゃうから不思議。

新潮文庫 1991

浅田次郎 – 地下鉄に乗って

兄の死、父との葛藤、なにかフシギな恋人。地下鉄の構内にあるしがない衣料メーカーに勤める主人公と地下鉄をめぐる不思議な旅。

たしかに地下鉄は空は見えないし、ぼーっとしていると地の底へ、違う時空間へ連れて行かれるような気がすることがある。

割と軽く読めたけれど、実は時代としては重たい題材よね。
細かいけれど、怖かった混沌の時代がさらっと描かれてる。

講談社文庫 1999

田中啓文 – ハナシにならん!―笑酔亭梅寿謎解噺2


前作があまりにおもしろかったので、連続して一気に読んでしまった。

一話完結的な要素は薄まり、前の話がつぎの展開へとつながっていくようになり、竜二こと笑酔亭梅駆の成長記的などたばた劇となっていく。これまた楽しい展開。落語とミステリーという枠組みでなくて、梅寿や梅駆、そして江戸落語の担い手たち、魅力的なキャラクターがたくさんでてくる物語に変化しているあたりが見事。飽きさせずに読ませる。

江戸と上方の比較がしばしば出てくるのだが、これが、なるほどへーっというものばかりで面白い。落語文化をしらないからそう思うのかもしれないけど、お互い認め合うものもあり、確執もあり、ってところが音楽業界と同じかも。もしかして田中氏は両方を掛け合わせて(氏は両方詳しいから)無意識に描いたのかも。たしかに関西にいると東京はそう見えるし、逆もまた然り。これを肯定的に見るか否定的に見るかで先がかわってくるよなぁ。

本書には8編含まれているが、どんどん話が広がっているからか、ひとつの話がふくらんで結構きつきつになってるかも。もっと頁さいてもいいような気がするなー。お話がもったいないかも。

粋、江戸なら「いき」、上方なら「すい」、うーーーーん、なるほど。

集英社文庫 2008

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