私の家に居候(というか共同生活、というか引きとった)するチエちゃん。少しクセがあるけれど、彼女にはまったくブレがない。何か不思議な感覚でもって彼女と私の生活が始まったのだけれど、彼女といると私はとても満足させられる・・・。
外から見れば中年のおばちゃんがちょっと年下の女性と共同生活をしていて、その人がちょっと変わり者で、いったいあの2人はなんなんだろう?やっぱり歳とって家庭も持たず、お互い淋しいからかなぁ、お金目当てかなぁ、と見えるような2人。こんな人達がいたら、きっと普通こういう目で見てしまい、実は2人にしか分からない特別な関係(説明するのも難しい)があって2人はとても幸せなのだ、ってことは分からないし理解できない、かも。でもこんなことがあるなら幸せだ。
ま、話の流れや背景なんかも面白いけれど、この本を読んですごくいいなと思うのは、ときどきチエちゃんがこぼす言葉たち。そしてその言葉を受けた私が巡らせる考えたち。生きていくことに大切なこと、大切にしていくべきこと、そんなものたちのメッセージがくるっと包まれているように思う。何でもない物語だけれどそこには大事なメッセージがさり気なく含まれていて、もっとゆっくり読んでいたい、もっと長く続いていろんな言葉を聞かせて欲しい、そう思える物語。
また読もう。
文春文庫 2009