雫井脩介 – 火の粉

初めての雫井さん。最初は分厚さに戸惑ったけれど読み始めると進む進む、あっという間に読み終えてしまった。

ある一家殺害事件で生残った武内。彼は状況から殺人犯と起訴されるが、逆転無罪となる。それからしばらく後のある日、その裁判の裁判官であった梶間と武内が偶然出会い、そしてまた偶然にも武内が梶間の隣に引っ越してくる。彼は裁判官であった梶間とその家族に恩を返すとばかりにいろいろ善意を向けてくるが、その一方すこしずつ梶間の家族が瓦解して行く・・・・・。

スピード感があってとってもいい。最初は冤罪を全面的にとりあげた作品なのかなと思ったけれど、それは問題提起としてあったとしても主は事件に関わった人物たちと裁判官家族の人間模様。どうして加害者だった冤罪になりかけた人間が元裁判官の隣に引っ越してきたのか?それは偶然なのか?以前の事件の真相はどうであったのか?主に梶間の妻・尋恵、そして息子嫁・雪見の2人の視点で描かれる物語はやがて武内の人物像に迫っていく。またそこで崩壊していく家族の描写が真に迫っていて怖い。

普段の生活ではほとんど目に触れない法曹界の内面や、人間としての裁判官という職業、冤罪などについて考えさせられる。世の中にどうして冤罪が生まれるのか。この物語の場合はさらにそれは冤罪だったのか?というところまで切り込んでいく。

本当に何が真実か最後までわからない。狂気だ。

幻冬舎文庫 2004

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