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辻仁成 – 右岸

先日読んだ江國さんの「左岸」と対をなす本。あとがきで読んで知ったけれど、もともとは江國さんと辻さんで呑みながら「だめだめな男女のおはなしを書こう」といって連載されはじめたそう。だけれども、ダメダメかなぁ?ダメダメかもしれないけれど、愛すべきダメダメさ、なのかも。

両方読み終わったからいうけれど、たぶん江國さんの左岸から読んだ方が最後まで話がクローズ(辻さんの本のほうが、より物語全体の構造というか、お話上の論点の帰結がわかりやすいかもしれないので、先に読んじゃうと江國さんの本のほうが、事実後追いのように感じるかもしれない)しなくていいような気がする。ま、たまたま好きだから江國さんから読んだけれど。もしかして逆でも、また楽しいのかもしれないけれど。

で、この辻さんのは物語の主人公の片方、祖父江九の物語。江國さんのを読んでいたときは、子供の頃は仲良かったのに茉莉の兄・惣一郎が死んでからは人間が変わってしまい、いつの間にかどっか放浪して、最後に帰って来たひと、みたいなイメージでしか(あとは時々寄越す手紙でくらい)なかったけれど、いやいやこの辻さんのほうの物語読むと、もしかすると茉莉以上に波瀾万丈の人生だったのかも。そして、物語の最後にどうやって再び茉莉と九が交わったのかがよくわかる。大いなる輪廻。

2つとも読むと見事に物語たちがシンクロし、過不足なくひとつのおおきな物語をつくってることがわかり、執筆段階での綿密な計画と周到な準備、そして2人の著者の見事な文章力に脱帽するしかない。とてもおもしろかった。やたらと盛り上がったり、おもしろおかしいわけではないけれど、2作品とも実に見事に各々の主人公の人生を描いているし、彼らの人生が、まるで自分のことであったかのように、走馬灯のように頭の中にありありと像を結んでいて、2人分の人生を生きたような気がする。

また、この辻さんのほうでは、九がいろいろ考えたり語ったりすることや、彼に多大な影響をあたえた黄色いオババの言葉、後の方にでてくる彼の前世に関わりのある人物が語る言葉が、ちょうどいま僕の人生にとても含蓄のある言葉として響いてくる。決して説教臭いわけではない。けれども、なにか迷いのあることそのものを発見させ、それについての対し方を教えてくれているような気がする。

ひとつ、オババの言葉:「人間は、苦しいのが当たり前なんだ。悲しいということが基本だ。寂しさから逃れられる者はいない。辛さから離れることは不可能だ。大なり小なり、みんな辛いんだ。それが、生き物の基本さ」(下巻p.171)

辻さん、江國さん、いい物語をありがとう。

集英社文庫 2012

 

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