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川上弘美 – どこから行っても遠い町


以前読んだ「センセイの鞄」もよかったけれど、この本の方がさらに好きかもしれない。都心から電車で20分ほどの郊外にある小さな町が舞台。そこに住む普通の人たちが主人公。とくに目立った人がいるわけでもなく、予備校の先生だったり、魚屋さんだったり、喫茶店なのか居酒屋なのかわからないお店の店員さんとかとか全員がいわゆる普通の人たち。

でもそんな普通のひとたちでも人生は平凡なわけではない。その人本人が平凡と思っていても他所から見ると平凡ではないし、普通なことは普通ではなかったりする。誰もがすこしずついいところも悪いところもへんてこなところももって、それぞれ生きている。

この本は11の物語で描かれていて、それぞれ違う人が主人公のお話なのだけれど、小さな町が舞台なのでその主人公になるひともそれ以外の人もいろんな話にでてきたり、話題に上ったりする。一人称でかたる視点と、まわりから見える姿、そして人の口にのぼった姿、いろんな姿がちょっとずつ重なって、今の、この町の様子、人々の暮らしができあがっている。

どこかにあるんだけれど、そこにはたどり着くことのできない不思議な町。でも人はちゃんと生きて、そして死んでいく。決して何か大きなことが起るわけでもないけれど、何もないわけではない。ちょっと時間が止まったように感じてしまう世界感。川上さんが生み出すなにか実態のない実は得体の知れない不思議な空間に引き込まれると、もうその世界に自分も所属してしまっている錯覚に陥って、町の住人のひとりとなってあちこちうろつきはじめたりする。

この本の感想はうまくかけない。読んでいるときはしっかりとその世界を感じているのに、本を閉じるとまるでゆめうつつであったかのように、物語とその感触はすっと遠のいてしまう。だからまた本を開いてそこにいる人たちに会いに行ってしまう。どうなってるのかよくわからないけれど、この本は好きだ。

解説で松家仁之さんが上手く書いてくれているので、それを参考に。

新潮文庫 2011

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