6編からなる短編集。宮部さんの作品はいつもすこしクールな中に人の暖かさというかやさしさみたいなものが含まれていて、寒々しいことにならなくていい。それがシリアスな作品であっても。短編集ということでひとつひとつのお話はそう長くはないのだけれど、それも骨がある感じがする。
1994年の作品なので、いろいろ時代背景は古く、表題作である「返事はいらない」のキャッシュカードの話なんかは古いしくみ(でもいまでもそんなとこあるかもだが)だし、バブリーな感じのお店がでてきたり、東京がいまの感じとは違うキラキラさ加減で、その中にいるひとたちきらびやかな生活とそれにより浮き彫りになるさみしさ、などなどちょっと前の感じがするけれど、そこに描かれる人間の感じはかわってない。宮部さんぽいかなと。最後の「私はついてない」ってのはあるあるって感じでおもしろかったな。
「返事はいらない」「ドルネシアにようこそ」「言わずにおいて」「聞こえていますか」「裏切らないで」「私はついてない」って、なんかどれも中島みゆきの曲のタイトルみたい。
新潮文庫 1994