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小路幸也 – 東京バンドワゴン

初めて読む小路さん。そもそもこの本を手に取ったのは昨年だかに「東京バンドワゴン」というテレビドラマがあり、MITCHのブラスバンドでそのなかで使われる挿入曲をレコーディングしたから。そのとき面白いタイトルだなー、なにかバンドがワゴンに乗ってわいわい上京していくようなロードムービー的なものなのかな?と思っていた(つまりドラマは見ていない)。

で、本を開いてみると、バンド的な話ではなくて大家族のホームドラマだった(伝説のロッカーの父親ってのがいるけど)。これが小気味よくてテンポもよくて楽しい。もともと大家族的なものに憧れなんかもあったのもあるからだと思うけど、ちょっと事情ある家族だけど一つ屋根の下で仲良く暮らしていて、ちょっとしたさざ波が立つようなことがあっても家長(ここでは先代)の元で協力して解決していく、こんな話は単純に好き。

東京バンドワゴンは東京のとある下町にある古本屋さん。古本屋といってもちゃんとした古書も扱う本屋さん。そしてそれに併設されたカフェ。近所の人たちからも慕われるこのお店には、3代目でまだまだ現役の勘一、そしてその息子でふらふらして何もしない伝説のロッカー我南人(がなと)、その娘で未婚の母・藍子、学者肌の長男・紺、愛人の子だという次男・青、藍子の娘・花陽、そして紺のよくできた奥さん・亜美とその息子・研人という8人家族が住んでいる。

そこへ近所の子供からご隠居までが出入りしいろんな問題や謎が発生する。毎朝百科事典をこっそりもってくる女の子、いきなり家に上がり込んで来た古書好きの女性、預けた本が行方不明に、などなど。そんなものごとを家族や近所の人などで解決して行くのも楽しく、なんかほんわかあったかくていい。そこにはいま失われていっているという言われる、近所の人とのふれあい・親しさ、なんてものが濃厚にある。近所の小料理屋に親父たちが集まったりするの、とか。

本の語り部を3代目勘一の亡き妻サチが務める形になってる。読んで行くとわかるけれど、この本はまるでテレビのホームドラマそのもの。小説というよりほんとホームドラマの脚本を読んでいるような感じもする。まあそれよりは物語ぽいけれど。視覚的に想像しやすくてとても読みやすいということはあるけれど、絵では描きにくいような(もしくは行間で読ませるような)微妙な心情とか、時間的なものとか、影とか、そういうものは薄い感じがする。でもそれが全体にハッピーな雰囲気、あたたかな、そう、こたつでテレビを見ているときのような、そんな心地よさを与えてくれるのは確か。

なんせ、ほんわかする本だった。シリーズ化されているので、続きもよもう。

集英社文庫 2008

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