上橋さんの「守り人」シリーズの2作目。短槍ひとつで女用心棒として生きているバルサ。彼女を育ててくれたのは、ある陰謀により人生のすべてを投げ捨て逃亡生活に身を落としてまで彼女を守ってくれたジグロだった。彼女はジグロの汚名を晴らすべく25年ぶりに生まれ故郷に戻る。が、そこへと抜ける洞窟の中でであった2人の子供がきっかけで彼女が故郷に戻っていることが発覚し、故郷カンバル王国は彼女を捕らえようと躍起になる。
やっぱりファンタジーが好き。でもこのシリーズはグインほど突飛ではない(いまのリアル社会とそう遠くない感じがする、時代や場所が違うだけ、みたいな)ので、入り込みやすくていいんじゃないかと思う。でてくる人たちもわりと普通だし。でも今回のカンバル王国には、地底に住まうという山の民と山の王、小さな牧童の人々なんかもでてくるので、少し西洋的な感じがするかも。そういう意味ではまだ一作目(精霊の守り人)は東洋的だったように思う。
あとがきで上橋さん本人が書いているように、この作品は大人が読んでも楽しめる(もっとも”大人に支持されている”という書き方だったけど)作品だとおもう。ファンタジーというとどうしても夢の世界、想像の世界、現実離れしてとっつきにくい世界観というイメージで大人は読みにくい子供のものみたいなイメージだけれど、この作品は人間のドラマのようなところがあって(陰謀などのどろどろした部分も多く描かれるし)、そういう風に言われているんじゃないかと思う。実際読んでみて、もちろんファンタジックな部分はふんだんにありつつも、そういうドラマ的な部分もしっかりあって、物語としての骨組みがずっしりしてる感じがする。へんな例えだけど、一作目は明らかに子供向けだった映画ハリーポッターシリーズが2作目以降大人も楽しめるものになった、そんな感じ?(もっともこの本は大人ぽいけど)
話の進め方がうまいのか、章立てが細かいので、区切りよく読めるためか、とても読みやすくて一気読みしてしまった(前の本もそうだった)、400ページほどあるけど。単純に面白くてわくわくする。読後に爽やかさって感じはないけれど、なにかちょっとした達成感とほどよい疲労感があるのもいい。
このお話でもやはり現実と併行して存在する別世界がでてくる。実際こういうことがある(別次元とか、死後の世界とか、そんな言葉で語られるところ)と考えると現実に起こってること感じられることっていうのが、そういう世界からの干渉であったり、たまたまうっすら現れたりしたものだと思えなくもない。だいたい見えてることなんて、ほんとに狭い世界でしかないのだし。
シリーズ次作も早く読もう。
PS
あとがきで知ったけど(書いてるのがアニメ化した神山監督だった)、アニメ化されてるらしい。見るべきか見ざるべきか。。。。
新潮文庫 2007