有川浩 – 旅猫リポート

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有川さん×猫、こんな本あったなんて。読まずにはいられない。

以前飼っていた猫をやむない理由で手放したことがある主人公サトル。あるとき彼の車のボンネットでくつろぐ猫と出会う。ひょんなことから彼に飼われることになったその猫はナナ。しっぽが鉤型に曲がって7みたいだから。サトルとナナはすごく仲良く暮らしていたが、5年後、またサトルはナナを手放さなければならなくなる。そこでサトルはナナとの出会いの車・銀色のワゴンに乗って知人の家を回り、ナナをもらってくれないかと旅をするのだった。

ああ、これだけ書いただけでも泣けてくる。犬は飼ったことないからわからないけれど、飼っている猫をだれかにもらってもらわなきゃならないなんて、なんて寂しい状況か。あの、勝手気儘に暮らしているように見える猫も、一緒にいるとお互いの気持ちがよくわかる。そして時間が重なるにつれ明に暗に深く繋がっていく感じがする。お互い何かを共有して分け合ってるような。そういう猫のいる空間といない空間は全然ちがう雰囲気がしてしまう。

もちろん主人公はサトルなので、サトル周りで話は進むのだけれど、たまにナナの一人称で描かれるシーンがある。猫の目線で。この猫目線がよくできてるというか、有川さん猫なんじゃない?と思うぐらい猫の気持ち、生態なんかがよく描かれてる、うれしくなるぐらい。猫の好きなこと・嫌いなこと、子猫はまだバカであまり人語を解さないこと(というのと同時に猫は人語を解するということ、でもそれを人間はわかってないということw)、犬とも会話できること(もちろん犬もしゃべること)、外国の猫とはあまり通じないこと(人間も同じね)などなど。柴田よしきさんの猫のシリーズもよく生態見てるなーと思ったけれど、有川さんはより人間にちかく感じているような。

猫と旅をする。憧れることの一つ。残念ながら今まで飼った猫はみんな外が怖い子だったので、連れ出そうものならえらいことになったけれど、いつかそういことしてみたい。運転する車の中で猫が自由にうごきまわって、窓の外眺めたり、椅子で寝てたり。たまにリードをつけてどこか散歩したり。きっと旅好きな猫もいると思う。出会うかどうかはわかんないけど。いつかそんなことができたら、、、、楽しいだろうなあ。どこ連れてってやろうかな。デザイナーの平松さんが飼ってるノロが羨ましかったもんな(平松夫妻とノロは旅好き、ヨーロッパにも行った)。

かまはいなくなってしまったけれど、最近はPがやたらと甘えてくるので嬉しい。慰めてくれてるのか、単に寂しいのか、それとも単に暖かい腹がすきなのかw。でもくっついて来てくるということは、ぼくはまだ不吉な匂いがしないということだろうな、と猫に乗られながら安心する。猫は不吉なものには近寄らないから。ナナはそれがわかってもサトルと居ようとするのがたまらない気持ちにさせる。ぼくが猫と別れるときもいずれくるだろうけど。

きっとまだ近所に住んでいるであろう有川さんにもし会う機会ができたら、どの作品も素晴らしくて好きです、ってことを伝えるとともに、よくぞこの作品を
書いてくれたという感謝を伝えたいな。ありがとう、有川さん。

講談社文庫 2017

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トミー・コッテル・トリオ

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photo by yuki asane

先週のことになってしまいましたが、2月に続き再びスウェーデン・イエテボリ在住のベーシスト森泰人氏が主宰するスカンジナビア・コネクションの第41回目のツアー、トミー・コッテル・トリオのライブに参加しました。前回のアルベルトさんのバンドもでしたが、このトミーさんのバンドも演奏も楽曲も素晴らしかったです。

トミーさんのバンドはフリーフォームなところはあるものの、ほぼ彼が作曲した曲を演奏するのですが、未知のものですごく刺激的なのに、懐かしくて知ってるような感じがしました。例えて言うと父親のように猛々しく、母親のように大らか、そして弟のようにやんちゃで、妹のように純粋、というような。とにかく根本的に健康的でハッピーなサウンド、それでいて何かをなぞるのではなく、どこまでいっても創造的な演奏でした。

そんな中に入って演奏すると、聴いてるのと中に入って一緒に音を出すのはぜんぜん違う感触がして、いかに自分が自分であるかということが一番大事なのである、ということを強烈に認識させられました。

ぼくは英語はもちろんスウェーデン語なんて全然なのですが、拙い英語でいろいろドラマーのダービッドと話して(彼はとても話好きだった)いると、日本人が演奏するジャズとはなんぞや?みたいな話になり、いろいろ考えさせられました。古来からある日本の伝統音楽と融合するというものでもなく、借りてきたフォームの上で演奏している自分は、一体どこに自分のアイディンティティがあるのか(出せるのか)というのは、普段意識してないけれど、実は一番考えたり感じたりしなければならない命題だと思います。誰かと同じこと、モノマネではなく、自分であって、しかもそれがこの土地にいる人間だからこそ出せるもの。きっとそういうものがあるんだと信じてやっているのですが、今の時点ではこれこれこうですよ、というものは具体的に出せないです。が、彼に答えたように、この土地にいてこの言葉と食べ物、文化によって育まれている自分のバックグラウンドから出る音、というものがあるはずで、それが自分なんだ、と思ってやっています。アルベルトのときにも同じようなことを思いました。

本当に再びとてもよい経験ができました。いつか逆にスウェーデンに行けたらなとも思います。今回のツアーを聞いてくださったみなさん、協力してくれたみなさん、ありがとうございました。そして、トミーさん、森さん、ダービッドさん、ツアーお疲れ様でした、もう帰国したころですかね。またお会いできたらと思います。

Tommy Kotter(Pf)、森泰人(B)、David Sundby(Ds) ゲスト 武井
4/10 梅田 Mr.Kelly’s
4/11 芦屋 Left Alone

tommykottertrio-leftalone

見原よう子新譜「想ひイロといろ」

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ちょっと前になってしまいましたが、昨年秋に録音した見原よう子(洋子がよう子に改められました!)さんの新譜「想ひイロといろ」が今月頭に発売になりました。ここ数年ライブでやっているメンバーでの和気藹々としたレコーディングの音がそのまま封じ込められています。見原さんの世界は素敵で、そっと大事に歌われる歌はどれもほんといいな、ほっとするなとおもいます。

今回のアルバムでは割と最近(といってもだいぶ経ったけど)見原さんにとぼくが書いた曲も3曲収録してもらいました。詞がついたときも嬉しかったですけど、こうやって音となって形になるのはさらに嬉しいことです。ぜひ沢山のひとに聴いてもらいたいです。

現在CDそのものはライブ会場での販売か、郵送等による販売しかしていませんが、ダウンロード販売は始まっています。Tunes Store, Amazon、LINE MUSIC、Rakuten Music、Google Play、Apple Music、kkbox、M mora, などなど・・で、配信中だそうです。視聴とダウンロードができます。

ぜひぜひ、一度彼女の世界に触れてくださいね!

見原よう子 HP >> http://yokomihara.music.coocan.jp

「想ひイロといろ」

1 ふるさとの言葉で
2 金木犀の香り
3 愛の波紋
4 ひとひらの桜の花びら
5 見守っていてほしい
6 風に揺れるコスモス
7 風の音
8 セルリアンブルーとバーミリオン
9 翳りゆく日々
10 星空
11 あさがお
12 虹の扉 水色の空

[member]
見原よう子(Vo)、山田裕(7弦Gt)、川辺ぺっぺい(B,Gt)、武井努(Sax,Fl,Cl)、とくじろう(Perc)、竹内仁美(Pf)

2017/4/1 CD \2,700(Tax in)

宮部みゆき – 東京下町殺人暮色

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宮部さんのミステリーもの。東京の海辺に近い下町。昔は本当に下町だったけれど最近はウォーターフロントだ再開発だなんだで他所から流入してくる人も少なくない。そんな街にくらす中学生の順。彼の父は刑事でなかなか家には帰ってこない。そんなせいで母親は出て行ったままだ。

そんな下町であるときから町内で殺人が起こっているという噂が流れる。ほどなく川や公園でバラバラ死体が。そして警察には声明文が。そんななか順の家にも声明文が。なぜか。警察の捜査にも関らず犯人は一向に尻尾を掴ませない。順たちは町内で噂の家を訪ねてみることに。そこは画壇では非常に有名なある人物の別宅だった。

猟奇的なのか、それを装っているのか、愉快犯なのかそれを装っているのか、まったく犯人像がつかめないまま物語はすすみ、怪しそうな人物がでてきては消え、複雑な人間関係を見せてきたあたりで、からくりの逆転が始まるような感じ、素直におもしろいミステリーだなと思った。スピード感もあっていいし。時代を超えた因果が絡んでるあたりもうまい設定で描いてるなーと思ったり。

オドロオドロしそうだったけれど、なんだか読後感は爽やかな感じのする作品だった。

光文社文庫 1994

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瞬間のイメージ

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昨日は奈良でレコーディング。歌手の芝山真知子さんの新譜。jazzフォーマットだけど素晴らしく和で、景色がある。

レコーディングは前もってきっちり準備するのが必要なものもあるけど、今回は瞬間のイメージを摑まえることが大事だと思った。なので一回聴いただけでそのまま録った。

瞬間のイメージを摑まえることができるかどうかは普段の鍛錬の積み重ねである、ということと、最初に感じたものが最も大事だ、ということを改めて思ったレコーディングだった。当たり前といえば当たり前だけれど。そして平常心。音楽への感動の感情と平常心での演奏のバランスをとるのは難しい。

阿刀田高 – 猫を数えて

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備忘録的に。猫っていう字がタイトルにあるので手に取った本。「独り者学校」「同音異義語」「恋の確率」などなど短編10編。どれも男女の恋愛について。肝心の表題「猫を数えて」は飼っていた猫を順番に思い出しながらそれに紐づく男を思い出すというもの。どの短編も大人の男女の物語。でも昔というか昭和的な感じがして、少し懐かしいような、今はこんなことないなーと思うような。でも、時代を超えて共通する部分もあるな、とか。

講談社文庫 1993

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誉田哲也 – インビジブルレイン

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背が高く優秀だが周りにあまり好かれてない姫川玲子警部。彼女の直感を大事にする捜査は時に絶大な効果を発揮するが、組織としては邪魔になる場合もある。彼女の班があるチンピラの惨殺事件に関わるが、調べていくに従って、昔あった事件が見え隠れする。その事件では警察の失態があったのだが、実はその陰にもっと大きな失態があったのではないか?そう気付き始めたとき、常総部からその件に触れるなとの指示が。

捜査が進むにつれ、その昔の事件との因果関係が見え隠れするなか、上層部や組織との軋轢に板挟みになる姫川と彼女の所属する班。事件はどう解決されていくのか?

心に大きなトラウマを持ちつつ刑事の仕事をつづける玲子がかっこいい。これは以前読んだ「ストロベリーナイト」からつづく作品だが、今回はもっと玲子が女性的な面を見せる。結構な厚みのある作品だけれど、テンポもよくてすぐ読み終えてしまった。

実際どうなんでしょうね、こういう組織って。たしかに大きくなった組織は自己保身を目的にした選択をしたがったりもする。警察や検察ってなかなか非を認めないってイメージあるもんな。大きな組織の前に市井の人間などどうでもいい、と、組織が組織であるために考えがち(それが個人ではなく組織としてそう結論づけてしまう)なのかもだけれど、その組織もやはり個人のあつまりなのだ。良心をもっと信じたいし、信じれるような世になってほしい。

光文社文庫 2012

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宵野ゆめ – ヤーンの虜(グイン・サーガ140)

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グイン・サーガ140巻。138巻ぐらいから一気読みしてしまった。いくつか読みたい本がある場合は、なるべくいろんな作家さん(シリーズとか)を順番にするようにしてるんだけど、このグインのシリーズだけは続けて読みたくなってしまう。まあ読むペースが速いってのもあるのだけれど。

ロンザニアで起こった不穏な空気はそのままアンテーヌへ。謎の使者はここでも陰謀の種をふりまくのか。そして無事シリウスを助け出したグインは彼をどうするのか?一方失踪をつづけるシルヴィアは、、、ケイロニアの災難は続きつづける。そしてあの闇の司祭がグインの前に。。。グインが縦横無尽に活躍日が来ると思うとまた読んでいてワクワクしてしまう。もっとたくさん出して欲しいなあ。

ハヤカワ文庫 2016

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大島弓子 – グーグーだって猫である

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大島さんは初めて。昔アニメ映画で「綿の国星」があって、それの原作者だってのは知ってたけど、手に取ったのはこれが最初。あの綿の国星のイメージと全然ちがうこのグーグーのいい意味で乱暴な感じの絵が好き。そもそも手にとったのは先日読んだ江國さんの「はだかんぼうたち」に出てきた女子大生が好きで読んでいるって設定があって、興味わいたのだった。まあ、かまがいなくなったこともあったし、映画も面白かったらしいし。

最初のサバがいなくなるシーンはわかりすぎるので、泣きもできないけど、じんわり。そのあともグーグーがやってきて、ほかにたくさんの猫が去来していく感じ、ほんとよくわかる。ぼくもこんな家に住んでたら猫優先にしてしまいそうw 壁とか梁とかにキャットウォークつくるのが夢だったり。あまりにもたくさんだと無理だけど、2、3こ猫いたらほんと楽しいだろうなあ。

猫愛にあふれる作品でした。

角川書店 2011

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