少し前に読んだので備忘録的に。
初めての浦賀さん。医療ミスと思われる事故でなくなった女性をフリーライターの銀次郎が探る。しかもその主治医は彼の元妻であった。彼女を助け、あわよくばよりを戻すとまではいかなくとも関係修復をと願う銀次郎だが、この事件の闇は深かった。
なかなか医療系の物語には手を出しにくい。というのは血が苦手なのです。で、こういうのを読んで、治療とか手術とか、病気の進行とかそういうものが克明に描かれると(そのほうが物語のリアルさがでるし)、ありありと想像してしまって(っていうても見たことはない)、ぞぞーっとしてしまうので。この物語も溶血を巡るあたりで結構詳細な医療的な話がでてきて、苦手だなーと思って、でも読み進めたところ、その事件の影に隠れる愛憎劇、闇に葬ったものごとたちなどなど複雑に絡み合って、一見そう複雑でない話だとおもっていたのに、奥がかなり深く、面白かった。
医療のために頑なになること、信じること、でも科学はそれを容赦なくひっくり返すことなど、こと医療に関しては日進月歩で変わっていくので、ぼくらが子供の頃常識だとおもっていたことがまったく正反対であることなども現実にしばしば。そしてときが進むごとに病気という名前のものは複雑多様化し、何が正常で何がそうでないのかちっともわからないところにきている。怖い。
もしかしてもうややこしいことは知らずに、原因はわかんないけど、死んじゃった、と思える方が、複雑怪奇な治療をしたりするよりトータルで楽なのかなとかおもったりもする。やっぱりニガテだ。
この浦賀さんの他の物語も読んでみたいな。
幻冬舎文庫 2013