よしもとばなな – イルカ

これはフィクションなのかそれとも結構事実なのか、そのへんの事情はよくわからないけれれど、主語もなく冒頭から一気に一人称で描き出される物語のスピー ドと展開にすぐに引き込まれて一気に読んでしまった。章立てもなにもなく、まるで親しい友人が目の前で最近起こったことを矢継ぎ早にしゃべっているよう。

女 性の視点で描かれているから、実はところどころに見え隠れするこまかい感情についてはわかりきれないところもあるけれど、主人公キミコの一生懸命生きてい る様子、落胆する様子、とまどう様子なんかが、恥ずかしげもなくというか赤裸々にというか、はっきりいって痛々しいほど生々しい感情の吐露として描かれ、 読んでいて息苦しくなってしまうほど。こんなにストレートに全部正直に言葉を飾らずに感情を出されたら、こちらはただただうろたえるだけ。堪えられそうに ない。

でもそのほんとにほんとなストレート感は嫌なものではなく、素直に(いい意味で)きれいに、潔く生きようとするひとにはとてもうらやましい姿なんじゃないだろうか?自分にはきっとできないけれど。だからこそ読んでいて自分との差に愕然とし息苦しくなるのかもしれない。

ぜひ女性に読んでもらいたい本。

いままでよんだばなな氏の本で一番好き。衝撃的だった。あまりにも直球すぎて怖い。でも好き。

イルカ
イルカ

中島らも – 砂をつかんで立ち上がれ

らもさんの、とくに書物にかんして書かれた短編やあとがき、そのほかをまとめたもの(だと思う)。同時期に書かれたものもあるのか、話の内容が重なったりしてるけれど、そんなことはちっとも気にならない。らもさんの語り口なら同じ話を何度聞いても平気。

とくに「一冊の本」に書いていたシリーズで紹介される本がどれも読んでみたくなるものばかり。またそういう気にさせる書き方してるもんだからたまったもんじゃない。東海林さだおと町田康がとくに気になるなぁ。

またいろんな本のあとがきをつづったものも、やっぱりらもさんらしくなにかひねってあって、面白くもない作家をほめたり、その足跡だけをたらたら描いたようなものではなく、なにかしら「いっちょやったろかー」的な文体がいちいち楽しい。好きやわ。

ああ、もっとこの人の生み出すものを見続けたかった。

砂をつかんで立ち上がれ
砂をつかんで立ち上がれ

村上春樹、大橋歩 – 村上ラジオ

久しぶりに読む村上さん。ananに連載していたという50編からなる短編集。一編が3ページほどなので、すすっと読めてしまうのだけれど、どの話も村上さんらしくて、味わいというか人柄でてて楽しい。まるでテーブルでお茶をしながらしゃべっているような錯覚さえ起こる。

ほんとこういうタッチ上手いよなぁ。

ちょっとした食べ物のはなしやら音楽の話やら。どれも楽しいし、気になるモノやら本やら音楽やらがちらちらでてくるあたりがニクイ。それらを知りたくなるもん。

大橋さんの版画もすごく素敵。微笑んでしまう。

村上ラヂオ
村上ラヂオ

酒とつまみ編集部 – 酔客万来

飲んべえのバイブル?その名もずばり「酒とつまみ」という雑誌の人気コラム(?)から単行本化したもの。著名人に集団で押し掛けて呑みながらインタビュー するという記事で、その雑誌の第1~5号の分だそう。中島らも、井崎脩五郎、蝶野正洋、みうらじゅん、高田渡という錚々たる面子。みなさん酒豪なわけで、 インタビューする編集部員も受ける側もどんどん酔っぱらっていく様子が手に取るようにわかってめちゃくちゃ面白い。

受け手の話す内容も酒 にまつわるものから、人の噂話やらしょうもない話、もちろんお決まりの失敗談まで様々でどれも非常に面白い。けれどもやっぱり一番はその人となりがよくわ かる偶然にしてはよくできたインタビューの流れというか、時間の経過が分かる様子の進み方。まるで自分もその場にいてその飲みの輪の中に入って呑んでいる かのような錯覚をおこしてしまう。

お酒を飲むのは好きだけれど、いやー、ほんとこんな人たちと呑めたら幸せ、いい酒だろうなと思う。読んでるだけで、なんだか幸せになってしまうもん。残念なのは呑んでみたかったけれども、もうできなくなってしまった人がいること。らもさん、会ってみたかった。

酔客万来―集団的押し掛けインタビュー
酔客万来―集団的押し掛けインタビュー

栗本薫 – ミロクの巡礼(グイン・サーガ124)

124巻。イシュトバーンの実質上の長男スーティーの存在がいよいよイシュトも知るところとなり、スーティー親子が物語の鍵を握るようになっていく。その 親子はミロクの聖都であるヤガに向かった。それを捜しにゴーラが、パロが動く。パロの密命をうけた元参謀長のヨナはミロクの巡礼に混じってヤガに下るが、 いよいよ草原地帯にはいったとき・・・・。

物語が南の方へくだっていく。しばらくつづいたサイロンのどろどろから視点がかわってちょっと一息。景色もかわってよかった。懐かしい人も再び現れ、また物語はひとつへとまとまっていくのか?さてどーなるかなー。

しかし、栗本さん、手術無事終えて無事一年たってよかった。でもまだまだわかんないし、本人ももしかしたら最後までは無理かな、と思ってるようにも思える。どうなるんだろか。

ミロクの巡礼 グイン・サーガ124
ミロクの巡礼 グイン・サーガ124

中山可穂 – 天使の骨

初めて読む中山さん。古本屋さんでなんとなく手にとった一冊。タイトルがなんとなく気に入って。

一応このお話の前のお話が別の作品として あるので、つづきということになるのだけれど、この作品単体でも読めるようにとつくってあるそう。自分が主宰していた劇団を失い、作家である事もやめ、人 生そのものにも希望をなくしてしまったミチル。彼女の心が生きる欲からはなれていくに従って、彼女には他の人には見えない羽が傷ついた天使たちが見えるよ うになる・・・さらに彼らは増えていくのだ。

世界を放浪し、さまざまな人に出会い、別れ、傷つき、優しさにふれ、そんななかで少しずつ変化してく彼女のこころ、そして明かされていく過去の出来事たち。彼女のなかでそれらのピースがうまくはまって行くに従い、天使たちは姿を消していく。

ミチルのせつなさが突き刺さってくるかのようなスピードのある文章と、展開がはやいけれど十分に描かれている彼女の日々がどんどん流れ込んでくる。彼女がどうなってしまうのか心配で一気に読んでしまった。決してオーバーでなく、彼女の後姿を追っているような気分になる。

世間に、世界に翻弄されて、自分が希求していたものを見失ってしまう。それを運命というのかもしれないけれど、その翻弄のなかにあるちいさな希望を掬うことができたら、またあらたに天に舞い上がれるのかもしれない。

天使の骨
天使の骨

宮部みゆき – 淋しい狩人

東京の下町、荒川土手下にある小さな古本屋田辺書店の店主イワさんとその孫稔の周りで起こる小さな事件たちを描いた短編集。それらはすべて何かしか「本」にかかわる事件なのだ。

本というものを介してつながる人や場所や時間。そういう連作ってのもなかなかいいアイデアだなーと思う。さらにそれに加えて一話完結の形をとりながら、主人公であるイワさんと稔の人間関係の変化を短編をまたがった時間軸で描いていってるのもすばらしい。

短編なのでするっと読めるけれど、やっぱりどこか人間の哀しさをじんわり感じてしまう、そんな物語ばかり。

淋しい狩人
淋しい狩人

宮部みゆき – かまいたち

宮部さんが時代物書いてたってしらなかった。それで驚いて手にした一冊。デビュー当時に書かれたものをまとめた短編集。

時代小説にしては あまりいわゆる時代物のように読みにくさとか複雑な時代背景をしらないと理解しにくいような物語ではなく、すごく読みやすいなという第一印象。解説におい て笹川氏が書いているように、宮部さんは現代ものと時代物との書き方の区別をいい意味でしていないよう。たまたま素材が時代的だったから時代物だというよ うなトーン。なるほどねぇ。

いわゆる謎解きものではなくて、コロンボのように(ふるい?)犯人やら結果が読者にわかっている上で、人間の 物語を描いていくのが宮部さんらしい。あまりおどろおどろしくもなく、えぐくもなく、かといってあっさりもしてないので読み進むごとに楽しい。よくできて るなぁ。デビュー当時からこれか、すごいなぁ。

かまいたち
かまいたち

栗本薫 – 風雲への序章(グインサーガ123)

123巻。122巻から連続して読んだ。

グインの家庭内のごたごたを結局は皇帝アキレウスが預かる事となり、新年の祝賀会で、彼自身の口 からグインへの世代交代その他諸々が熱く語られる。これでついにグインがケイロニアのトップに立った。ケイロニアにグインが立ち、パロはリンダが、そして ゴーラを復活させたイシュトバーン。この壮大なサーガの最初に出会った3人が時間を経て、いまや3国の施政者。あとがきで著者も書いてるけれど、まさに三 国志のはじまりのよう。123巻にして「序章」って!!まだ始まりですか(笑)

イシュトバーンの野望再び。中原にまた嵐が吹き荒れる、か。彼の恨みはそんなに深いのか。哀しい。

風雲への序章―グイン・サーガ〈123〉
風雲への序章―グイン・サーガ〈123〉

栗本薫 – 豹頭王の苦悩(グインサーガ122)

122巻。ケイロニアに戻ってきてようやく落ち着くかに見えたグイン王であったけれど、前巻からの懸念事項は王妃シルヴィアのこと。ひきこもり、妊娠騒ぎ・・・・さていったい?

錯 乱してしまったかに見えるシルヴィア。グインはなすすべなくすべてを宰相にまかせるが、結局はグインとシルヴィアが対面することとなる。そのときのシル ヴィアの独白が鮮烈。いままでは一方的にダメな面しか描かれていなかったシルヴィアの真意が描かれる。なるほど、いままでほんま嫌なやつとしか見えなかっ たシルヴィアもそういう風に解釈することもできるのか、と。しかし知るには遅すぎた、か。哀しいほうへほうへと話は流れる・・・・

ああ、どうなるの!

豹頭王の苦悩―グイン・サーガ〈122〉
豹頭王の苦悩―グイン・サーガ〈122〉