江國香織 – ぬるい眠り

江國さんの本はいつもそうだが、この本は特にそうで、それぞれの短編にでてくる人物たちの生き方の感覚というか、”感じ”というかがとてもある意味ストレート、すごく感覚的で、共感できるような気もするし、恐ろしいような気もする。不思議な感覚。でも嫌じゃない。

普 段自分が社会やその他自分以外のものと接している部分というのは、何らかの見てくれやら殻やらそういうものをまとっているのが普通なのだけれど、そういう ものをとっぱらってしまって、すごくベーシックな素直な、ストレートな感覚で、今一度見直してみると、ずっとシンプルに、それがわがままと簡単に片付けら れてしまうかもしれないけれど、より自分で生きていけるのかもしれない、ということを行間で読んでしまうのだけれど、実際そうするのって難しい、でも憧れ てしまう、でも無理かも、と、へんな感覚が頭をどうどうめぐりしてしまう。

でもすてき。こういう人たちは好きだ。

新潮社 2007

ぬるい眠り
ぬるい眠り – Amazon

山田宗樹 – 嫌われ松子の一生

教師として働きはじめた良家の子女が、ほんのちいさなことから転落の人生をおくっていってしまい、最後には殺されてしまうという、どうしようもないお話(笑)。

主 人公松子のその融通の利かないというか、まっすぐすぎてどじくさすぎる、しかも運のない性格に、読み進むにつれ「きーーーっ!」となってしまうのだが、そ れでも読んでしまうのは、そんなツイてない人生なのに、どこかに希望をさがしてしまうからなのか、同情からなのか、はたまたそれにもまして話の語り口やら 展開がおもしろいからなのか。よくわからない。でも最後まで楽しく(というと不謹慎?)読めた。

人生何が転んでるかわからないし、それ がいつどんな形で現れ、どうその後に影響していくかなんて、”今”しかわからない我々には、知ること、気づくことさえできない。だからこそその瞬間瞬間を 最良の選択で生きていきたいと誰しもが考えるのだろうけれど、そう考えていても、どうしようもなく歪んでいって修正きかなくなったり、思わぬ方向へ転んだ り、人生は進めば進むほど裾野がひろくなって、動けるけれど、戻れなくなる。そういうことが年を食うと実感として理解できるようになる。

物 語の主人公松子と、突然その死を知るまでまったく松子をしらなかった甥である笙。現在形でその人生を語っていく松子の視点と、それを客観的に過去の話とし て見ていく笙の視点。松子が生きてきた人生をひも解きながら、笙が感じる人生とはどいうことか、という感覚こそ、作者が表現したかったことなんじゃないか な?

嫌われ松子の一生 (上)
嫌われ松子の一生 (上) – Amazon
嫌われ松子の一生 (下)
嫌われ松子の一生 (下) – Amazon

ダン・ブラウン – デセプション・ポイント

「ダ・ヴィンチ・コード」で有名なダン・ブラウン氏のミステリー。今回は大統領選とそれにからむNASAの話。

しかしこの人の本は、扉 にも書いてあるように、出てくるものとかが実際あるものである場合が多い。この小説にもいろんな驚愕の兵器とかでてくんねんけれど、あるんかな?ほんま実 際に。マッハ6の戦闘機とか、蚊ぐらいの大きさの偵察ロボットとか、音のしないヘリとか(これありそう)、諸々もろもろ。こんなん実際あるんかと思うと、 ほんま怖い。無知であることが幸せ。

話も大きくどんでんがえしがあったりして、上下巻と長編だけれど一気に読める、おもしろかった。

デセプション・ポイント(上)
デセプション・ポイント(上) – Amazon
デセプション・ポイント〈下〉
デセプション・ポイント〈下〉 – Amazon

柴田よしき – 淑女の休日

シティーホテルでの幽霊事件とその裏にひそむ殺人事件・・・連載されていたものをまとめたもので、かなり長編。謎もこんがらがってて、謎解きするのもタイヘンそうな話なのだが、結局はひとつに見えた事件に便乗した複数の事件のからみあいという、複雑なミステリーだった。最後には祖父の代までさかのぼる愛憎劇だった、というのは大掛かりすぎるよーなきも(^^ゞ

しかし、作者もそうしたように、シティーホテルでの短期リゾートを味わうというのは、どうやら気持ちのいいことかもしれない。男性にはわかりにくいかもしれないけれど。非日常を簡単に手に入れるにはいい方法なのかもしれないし、そういうことが必要なときなのかも。でもあまりにも非日常と日常の境目が近すぎると、うまく気持ちが切り替えられないような気もするのは、男だからか?

文藝春秋 2006

柴田よしき - 淑女の休日
柴田よしき – 淑女の休日

秦建日子 – 推理小説

テレビドラマ、および映画にもなる、「アンフェア」の原作。テレビドラマをみてから読んだので、主人公が篠原涼子の姿がだぶってしまって、それはそれで読みにくかった(笑。だって小説ではもっとスゴいから・・・笑)

推理小説の中で推理小説へのアンチテーゼというか、推理小説にはない推理小説をなりたたせようとする物語を書くというのが非常におもしろいアイデアだとおもうし、描写もかなりこっているというか、話の語り口が視点やらなんやらかんやら、いろいろ凝ったつくりになってて、でも難解になってしまわないようにうまく調合されてるのがすばらしい。

あとがきによると、この秦さんはドラマとかの脚本のキャリアがすごいらしい。なるほどなぁ。そんな描写にも思える。

話をしっていても最後まで飽きずに一気読みできた。これはよくできた小説だ。全体の配分もとてもいい。

河出書房新社 2005

秦建日子 - 推理小説
秦建日子 – 推理小説

江國香織 – 東京タワー

このひとの本はどうしても読むのに時間がかかってしまう。物語の流れがリアルな時間を支配してしまう。それほど内容が濃いというのか、物語が強いというのか。

19の少年2人と30代の大人の女2人の恋物語。単に恋の話が静かに熱く流れていく。日常のその部分だけを切り取ると、なんと印象深くなるのか。

ほんとこの少年たちの息づかいが、気持ちの揺れが、香りが伝わってくるようで息苦しい。なのになんでもなく日常はすぎていく、多少の山谷とともに。

不思議。

新潮社 2006

江國香織 - 東京タワー
江國香織 – 東京タワー

石持浅海 – 月の扉

ハイジャックというハードボイルドな題材に、密室殺人、オカルトをもちこみ融合させたミステリー、って買いてもイメージわかんな(笑)。細切れにすすむ場面展開と登場人物像や事件の絡みが徐々にわかっていくあたりが物語の推進力・求心力になって読み進みやすい。

しかーし、物語中で結果的に探偵役(謎解き役)になる人物が賢すぎるー、そんなにスムーズにいったらいやだよー(涙)。あと、オカルト方向の深みがもーちょいほしかったなー。謎解きよりもそっちのほうが気になったもん。

光文社 2006

石持浅海 - 月の扉
石持浅海 – 月の扉

島田洋七 – 佐賀のがばいばあちゃん

なんやしらんうちに幸せになるのにはお金がないと、あれがないと、それがないと・・・・なんて思ってしまってる、というか信じてしまってる。ほんとはそんなことはない、幸せは心の持ちようや、そういうことをすごく新鮮味をもって教えてくれる、佐賀のがばいばあちゃん、こと、島田洋七氏のおばあちゃん。

しょうもない啓蒙ものやら豆知識もの、はては宗教じみたものまで、「幸せ」を追い求める著書はたくさんあるけれど、これほど明快に幸せってなんだったか?ってことを思い出させてくれる本はないんちゃうかな?こねくりまわした考えではなく、一人の貧乏なおばあちゃんが、その身をもって見せてくれる言動の数々はどれも心を打ち、そんな人がいたという事実そのものにまで涙してしまう。

いま、こんな時代に、こんなひとが一番必要だ。

滅多に本を人には薦めないが、これはぜひとも読んでもらいたい一冊です。

徳間書店 2004

島田洋七 - 佐賀のがばいばあちゃん
島田洋七 – 佐賀のがばいばあちゃん

栗本薫 – 闘王(グイン・サーガ 112)

いよいよタイスでややこしいことになってきております。脱走もうまくいかず・・・・いよいよにっちもさっちも・・・。しかしスイランがそういう素性だったとは!

あー、はやく続き読みたい!

早川書房

栗本薫 - 闘王(グイン・サーガ 112)
栗本薫 – 闘王(グイン・サーガ 112)

菊地成孔 – 東京大学のアルバート・アイラー―東大ジャズ講義録 (キーワード編)

菊池氏2冊目。同タイトル(歴史編)のつづき。前期にJazzを音楽的なターニングポイントを踏まえて解説したのにつづき、後期はブルース、ダンス、即興、カウンター/ポストバークリー、という4つのお題に対し、講義&ゲストによる講義という形式で行われた講義録。めちゃめちゃ面白い。

音楽に関する話にはまったく詳しくないけれど、この本を読んでいくだけでそれらへの興味がわけもなく湧いてくる。ほんとにこの菊池氏は面白い人なんやろな、と思う。また音楽やら歴史やら考え方やらなにやら、今まで自分が当たり前と思っていたことやら何も考えずに受け入れていたことを斜めや裏から、違う視点をもって見ることができるということを気づかせてくれる。なるほど。

しかし前期のものに比べて、ゲスト講師陣の話が面白すぎるのもあるけれど、内容もかなり複雑で理解しづらいところ(というか、読み取れない、というか、いまの自分では理解できない)も多々あって、読みにくいかもしれないけれど、それを差し引いても余りあるおもしろさ。世界はひろいな。

メディア総合研究所 2006

菊地成孔 - 東京大学のアルバート・アイラー―東大ジャズ講義録 (キーワード編)
菊地成孔 – 東京大学のアルバート・アイラー―東大ジャズ講義録 (キーワード編)