安達千夏 – モルヒネ

何のために生きるのか?自分のため?人のため?それとも他の何かのため?こんなことわからない。生まれたときからすべての生き物は死んでいってる。なぜ生まれて生きて死ぬ?この命題は答えなんかきっとない。だから不安。だからもがく。だから苦しい。
自分が自分であるともっとも自覚できる自分のなかのものが病魔に犯されて壊れていったら?生きる意味とは?自分とはなに?自分の価値は?自分というのは何をさしていうのか?

根源的な問いと、悲しいまでの恋愛が交差する小説。その断片的な語り口、飛ぶ思考、まとまらない文章、個と個の境のあいまいさ。それらすべてがその疑問たちをいろんな色で見せてくれる。主人公2人の生きている感じが、なぜかするりとはいってくる。同類か?

祥伝社 2006

安達千夏 - モルヒネ
安達千夏 – モルヒネ

辻仁成 – 青空の休暇

第2次大戦時に青春をすべて戦争に費やし、真珠湾攻撃に参加した主人公を含む元戦闘機機乗り3老人が、50年を経てまた真珠湾を訪れ、まさにそのとき米国艦にのっていた元米兵と交わりをもち・・・という話。でも小説のホントの筋は主人公と3年前になくなった妻との間の愛の物語。

あたいら戦争をまったく知らない人間には戦争を体験した人々の気持ちを本当に共感することはできないけれど、何かの形をもって知りたいとは思う。当時の人たちの言葉やらドキュメントの書物などはたくさんあるだろうけれど、実はわかりにくい。でもこの辻氏の物語はその悲哀などなどの気持ちがじんわり伝わってくる。

老いるとはどういう気持ちなのか?青春ってなに?答えはどこに?本人が経験しないとわからない疑問は、答えがわかるときにはすでにその答えの中にいる。人生というのはほんとうに短いものなんじゃないかな?

幻冬舎 2006

辻仁成 - 青空の休暇
辻仁成 – 青空の休暇

菊地成孔 – 東京大学のアルバート・アイラー―東大ジャズ講義録・歴史編

今まで読んだJazzに関する本で一番おもろかったと言っても過言じゃないな。その演奏とか考えてることも作品もぶち切れてて、ちょっと聞いてたら頭おかしくなりそうな菊池氏だけれど、この本の内容はこれまた飛びぬけておもしろく、わかりやすい。

Jazzの歴史を扱った本なんて星の数ほどあるけれど、ある視点(音楽を記号化という観点から見た、それに則したジャズの歴史)から見たこんなジャズとそれにまつわる周りの社会・文化(とくにアメリカ)の変遷をきちんとまとめてるものってないんちゃうかな。

筆者が音楽家ということもあるし、それ以外にもとくにJazz界の人たちにありがちなJazzに偏ったものではない幅広い音楽観、サブカルチャー、西洋東洋史、人類史などなどなど、いろんな方面、歴史的ムーブメント、それに絡む商業音楽やそのマーケットを取り込みながら、その音楽の記号化というターニングポイントがどう作用したかをわかりやすく(音楽やってない人にはわかりにくいかも)説明してくれてんので、ほんまなるほどーという感じだった。レコード聞く耳がちょっと変わるかも。

しかしこの2004年度に東京大学で行われた講義。見たかったな!

メディア総合研究所 2005

菊地成孔 - 東京大学のアルバート・アイラー―東大ジャズ講義録・歴史編
菊地成孔 – 東京大学のアルバート・アイラー―東大ジャズ講義録・歴史編

辻仁成 – 二十八光年の希望

もともとは「今この瞬間 愛しているということ」という題で発売されていた、フランスの二つ星レストランの総料理長とシェフの間の愛の話。いままでよんだ辻氏の中の本では一番ぐぐっとくる感じだった。すごく悲しい愛の物語だけれど、何かすべてが昇華されていって幸せすら感じるほど。後半すごいスピードで読んでしまったけれど、ゆっくり読んでたら泣いちゃうだろな。彼の作品にしては破滅的でなくて好き。

またレストラン、パリが舞台となってることから、物語にすごくうまく料理が出入りしてきて、それだけでもうれしくなってしまう。ほんとのフランス料理なんて食べる事ないけれど、和や中華とちがってまた全然知らない深いものがあるんだろな。しかしミシュランの星ってのはそんなにすごい、命かけるようなものなのか。料理人がそこまで求める感じってのがどれほどのものなのか、想像もできない。

知らなかったけど、いま辻氏ってフランスに住んでるのね。

集英社

辻仁成 - 二十八光年の希望
辻仁成 – 二十八光年の希望

奥田英朗 – イン・ザ・プール


精神科の医学博士 伊良部一郎のもとを訪れる一風変わった患者たちのショートストーリー5編。通常の医療では解決困難な病気?を持つ5人が一風変わった(まるでただの子供のような)医者によってなんらかの解決をみていく。もちろんこれらは今の社会に実際にあるであろう病気なんだろうけれど、ほんと奇妙やなぁ。

しかしその精神的な病に冒されている患者たちが、なんだかおかしな伊良部によって、遠回りに見えるけれど、確実な方法をもって(これはわざとなのか、天性なのか?)回復していくのが楽しい。ちょっとおかしくて楽しい。

単なるおもしろいお話としても読めるけれど、今の社会に確実に広がる新たな病魔への明るい対処法の示唆か?

文藝春秋 2006

奥田英朗 - イン・ザ・プール
奥田英朗 – イン・ザ・プール

高野秀行 – ワセダ三畳青春記

早稲田にある(いまもあるんかな?)ある木造アパートに著者が住んでいたときのお話。全部実話なんだそーだけれど、そりゃ昭和の時代にはそんなへんな輩がたくさんいただろうけれど、この本読んでて、まったく平成の世の話とは思えないほどのおかしな住人のオンパレード。時代錯誤も甚だしい。

笑えるけれどもちょっとほろっとしてしまうのは、昭和の人間の心を持つからか?実際こんな生活はとんとできないだろうけれど、もしかすると誰もがちょっとは憧れる世界なのかもしれない。面白い!

集英社 2003

高野秀行 - ワセダ三畳青春記
高野秀行 – ワセダ三畳青春記

桐野夏生 – グロテスク

上下巻だわ、それぞれページがめちゃ多いわーで読むのに時間がかかっちゃった。しかしそれよりも、あまりの内容のしんどさ(こんなに悪意に満ちた主人公(かな?)の一人称的視点が中心の物語)に読みながら、もういやだーとも思っタコとも何度も。しかし面白いから引き込まれて読んでいってしまうのだが・・・・。

この世のものではないような怪物(美貌であったり頭脳であったり、自分がいくら背伸びしてもかなわないようなもの)を身近にもったり、憧れてしまったりすると、人はどうするのか?その陰になるのか?自分の存在理由を見つけられなくなって苦しむひとたち。が、それによってやはり自分のなかに潜む怪物を産み落としてしまうのか。

しかし、すごい本だった。レビューすらうまく書けない。

文藝春秋 2006

桐野夏生 - グロテスク(上)
桐野夏生 – グロテスク(上)
桐野夏生 - グロテスク(下)
桐野夏生 – グロテスク(下)

山本文緒 – プラナリア

誰もが心のどこかにもってる小さいけれどもちょっとへんちくりんだったり、曲がってたり、歪んでたり、そんな気持ちを主人公に書いたんじゃないかなーとおもう、短編集。

プラナリアになりたい、って気分は、もしかすると、誰しもが似たような気分になることがあってわかるんじゃないかな?

文芸春秋 2000

山本文緒 - プラナリア
山本文緒 – プラナリア

栗本薫 – タイスの魔剣士(グイン・サーガ 111)

やはりこういうちょっと魔物ぽい人物が出てきたほうがまたまたグインの世界の醍醐味を感じることができるよねぇ、といっても出てくるの最後の最後だが。。。。はやく次巻を!

物語はややこしいほうへややこしいほうへと流れていきます。享楽の都もその装飾を少しはずせば怖い世界。さてどうなるのやら。

早川書房

栗本薫 - タイスの魔剣士(グイン・サーガ 111)
栗本薫 – タイスの魔剣士(グイン・サーガ 111)

栗本薫 – 快楽の都(グイン・サーガ 110)

タイス、タイス、憧れの都~~♪一度行ってみたい、が、いけるわけないな。物語の中やし。作者曰く「吉原と新宿二丁目と雄琴と渋谷と歌舞伎町と祇園を合わせたような街」らしいので、そりゃいってみたくなるよねー(笑)

物語はやはり主人公グイン、ただではオモロイ話ばかりは続きません。ひょんなことからちょっと怪しげな雰囲気を醸し出しつつ、まだその謎はカーテンの向こう側というような感じ。どうなっていくのかねぇ。

しかしタイス、いってみたーい(^o^)

早川書房

栗本薫 - 快楽の都(グイン・サーガ 110)
栗本薫 – 快楽の都(グイン・サーガ 110)