乙一 – 失はれる物語

すごく久しぶりに乙一さん。今回も短編集だけれどどれもやはり面白い視点というか物語の切り口で面白く読めた。

時空間のずれた相手からかかってくる電話「Calling You」、交通事故で右腕以外の感覚がなくなってしまった男とピアニストである妻の物語「失はれる物語」、他人の傷や痛みを移す能力のある男の子「傷」、魔がさして泥棒しようとした男の顛末「手を握る泥棒の物語」、みえない女性と子猫の物語「しあわせは子猫のかたち」、ほほえましい短編「ボクの賢いパンツくん」、怖い恋「マリアの指」、嘘の彼女「ウソカノ」。

今回の本は怖い話はひとつぐらいで、あとはじんわりくるいいお話ばかり。とくに好きなのは「失はれる物語」と「ボクの賢いパンツくん」かな。ほほえましいし。

このひとのもっと違うタイプの本も読みたいなぁ。

角川文庫 2006

乙一 – 暗黒童話

彼にとっては最初の長編だそう。もうタイトルからぞくぞくっとくるような感じで期待してページを繰る。やはり乙一さんらしく、冒頭からいきなり彼独特の世界があふれ、予告もなくその住人にさせられてしまう。鴉、目の見えない少女・・・・

作品全体に漂う雰囲気、なにか明るくてもすこし昏い感じなのも、普通絶対ありえないような設定がでてきても、それが自然に存在しているかのような描写、トーンが見事で、どんな変なことが書かれていても、うん、と頷いてしまえる文章の力強さというか押しの強さというか、決して押し付けがましくはないのだが、静かに強く断定されてる感じなんかがたまらない。

作品自体もすごく複雑に入り組んで章立てになってて、絵本の部分と物語の部分が表裏になってたり、世界がクロスしてたり、どろどろと現実と仮想が溶け合ってしまってるのも見事。だらだらと書いて長くなったのとは全然ちがって、最後までペースも変えずにゆるりとどろりとまとまっていくのがいい。しずかに「え?」て結末になるのも。

見事。

集英社文庫 2004

乙一 – 平面いぬ。

めちゃ久しぶりに乙一さん。以前読んだのはドロドロして怖くて、なにか次元や時間がずれてしまっているような不思議な話ばっかりだったけれど、この本は表題の「平面いぬ。」を含めて4つのこれまたちょっと不思議で少し切ないお話たち。

目が合ったものは石になってしまうという伝説のある街で幼い頃に失踪した母親を探し不思議な場所に迷い込む「石ノ目」、ちょっとした嘘からうまれた想像上の女の子がやがて意識の上では実在してしまう「はじめ」、不思議な布でつくられ命をもってしまった5体の人形の一つは切れ端で適当に作られた醜いできそこないだったため他の4体にいじめられてしまう「BLUE」、ちょっとしたことから彫ってもらった犬のタトゥーがある日動き、鳴くようになってしまう「平面いぬ。」

どれも短編ですっと読めるというのもあるんだけれど、それだけじゃなくて、ネタであるとか話の展開の仕方であるとか、すごく上手くて面白い。とくに気に入ったのは「BLUE」と「平面いぬ。」。突飛なアイデアと不思議な世界観でぐいぐい引き込まれるし、短編なのになんだか濃い内容だし、少し寂しいような切ない気持ちにさせてくれる物語のまとまりかたとかたまらない。

4つの話がどれも全然違っていていい。どれもすこしお化けぽいかもね。

集英社文庫 2003

乙一 – GOTH 僕の章

「夜の章」の続き(で、ええんかな?)となる作品。短編集。また不思議に怖い話がつづく。やっぱり人間の普通の感覚で、普通に存在している影の部分、そんなものがいってしまえば犯罪という形ででてくる、それを淡々と語る文体が、やっぱり怖い。今回もふつーに人が死ぬ。

しかし本格派(だったか?)ミステリー大賞をとるだけあって、文章中のトリックも見事で、一度読んで「あれ?」と不思議な感じになるやつもある。面白い。でも怖い。

角川書店 2005

乙一 - GOTH 僕の章
乙一 – GOTH 僕の章

乙一 – GOTH 夜の章

久しぶりに乙一。続き物となるように書かれた短編もの。今回ものっけから淡々とヒトが死んだり傷ついたり。あまりの起伏のなさがあまりにも怖い。

現在生きる人たちの、とくに若い人たちの、闇の部分と言うか、普通に隣り合わせに持ってしまっている、ふつうなら子供のときにもっていても失ってしまう、感情のない残酷さが、鋭く描かれてると思う。こわい。

角川書店 2005

乙一 - GOTH 夜の章
乙一 – GOTH 夜の章

乙一 – 死にぞこないの青

またまたまた乙一。クラスで何故かいじめられるというか、暗黙のうちに最低身分にされてしまう主人公に、自身の精神的な分身として現れる猟奇的・残忍なアオ。

ほかのものに比べて、長いからか、それとも作者が小学5年生の視点というか思考レベルというか人格になりきって書いた(ように読める)からか、全体的にもちゃもちゃした感じがするんだけれど、それ自体、狙った表現なんじゃないかな、と思う。ここにも実際誰しもが少し感じるような、自分と世間とのギャップ、人の目、評価、常識等々、普段は空気のように存在してるものが、やたらと重圧と感じるタイプの人間が描かれている。自分も実際こんなとこあるから。

うまくかけないけれど、その「なんだかもーーっとした感じ」が見事にもーーーっと描かれてるように思えるし、そっから子供だからこそのおかしな、猟奇的な、一発逆転な(うまい言葉を思いつかない)解決法に至ってしまうあたりが、ほんと子供っぽい、リアルさ、を感じる。

ぞーっとする感じじゃないけれど、じめっと、いやな感じだ。

幻冬舎 2001

乙一 - 死にぞこないの青
乙一 – 死にぞこないの青

乙一 – 夏と花火と私の死体

はまってます、乙一。表題ともう一遍からなる本。

ミステリーというかホラーというかという感じなのだけれど、結構ホラーは不得手なのだが、コノ人のものはすんなり入ってくる。というのも、グロさがない、というか、グロさを表立って現していないということだからか?じぃっと考えると結構グロかったりエグかったりするのだが、それが何かにつつまれたようにまろやかな語り口になっている。

両編とも想像すると絵的にはかなりきついものなのだが、その語り口と登場人物のキャラによって中和されているというか、そのへんのバランスが、また意識的なものを感じないくらい自然でいい。もともとこうであったかのよう。

うーむ。16歳のときに書いたんだと。いったい何者。会ってみたい。

集英社 2000

乙一 - 夏と花火と私の死体
乙一 – 夏と花火と私の死体

乙一 – さみしさの周波数

また乙一。いろんなタイミングで書かれた短編集4編。相変わらず設定がおもしろくていいな。表紙から見ても想像できるように、ちょっと青春ぽい。

最後の一遍「失はれた物語」、ネタとしてはよくあるタイプなんかもしれないけれど、なかなか描写もおもしろい、んで、切ない。で、そんな幕切れはやだ!(T_T)

今まで読んだものに比べると、比較的読みやすいように書かれたものなんちゃうかなーと勝手に想像。

角川書店 2002

乙一 - さみしさの周波数
乙一 – さみしさの周波数

乙一 – 暗いところで待ち合わせ

いやー、はまってます、乙一。

これは長編。目の不自由な女性のおうちにある男がひっそり潜む、という内容なのだけれど、想像すると結構怖い状況だったりもするし、男の置かれてる状況、その女性の置かれてる状況、その他もろもろ、めちゃくちゃな偶然が折り重ならないとそんなこと起こりえないのに、それがさも普通のように描かれてる(しかもおかしく感じない)のが凄いとおもう。

あと、それらの物事がやがて思わぬどんでん返しから変わり行く様がおもしろい。しかも、なんか切なくなってしまう。ミステリなのか、恋愛(ちょっと違うけど)ものなのか、何にもいい意味でカテゴライズできない、そんな物語。

なんの説明もなしに、視点をもつ主人公がかわっていくのもおもしろい。

しかし、すごく特異な物語なのに、それに作為さや無理な感じ、そんなんがまったく感じられない。すごいわ。

幻冬舎 2002

乙一 - 暗いところで待ち合わせ
乙一 – 暗いところで待ち合わせ

乙一 – ZOO 2

いやー、これも凄いわー。6編の短編集が収まっているけれど、どれもぜんぜん違うテイストで、どれもが面白い。まったく同じパターンとか道筋になることなく、読んでいて「いったいコノ作者は何考えてるんだろ?」と思わせるぐらい。おもしろい。

まだよく掴めてない。もっと読みたい。

集英社 2006

乙一 - ZOO 2
乙一 – ZOO 2