去年だかいつだったか映画化されて話題になった(チャン・ツィーが主演だったっけ?)作品。外国人が書いた花柳小説として話題にもなった。
な によりも昭和初期から終戦後にわたる時代の舞妓さん・芸妓さんたちの日常が事細かに描かれていて、それだけでも読んでいておもしろい。もちろんこれは「さ ゆり」なる芸名の芸妓の半生をつづったフィクションの小説なのだけれど、かなり詳細に下調べしたようで、その時代時代の人間模様が手に取るようにわかる。 また小川さんの訳がとても適していて、京ことばのうつくしさがよくわかる。
どうしても芸者やら花魁やら、とかその世界こととなると、確 かな知識なんてなく、誤解やら(外国人にも日本人さえも)へんな認識ばかりが先行してしまいがちなのだが、アーサー・ゴールデンのこの文章からはそんなこ とはみじんも感じられず、こういう世界に対する愛情さえ感じる。こういう文化を生み育んだ国の人間としては、ほんと頭の下がる思いだ。
し かしこれが祇園の花街の世界どす、というわけではなく、100人いれば100通りの世界があるわけで、これをよめば花街やらお茶屋さんのことがわかるわけ ではない。でも思っていたのとは全然違う、人間くささやらおかしさ、そしてそのすばらしい文化、芸の世界についてもっと知りたいという気持ちをかきたてて くれる。上下巻一気読みした。すばらしい。
文芸春秋 2004
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