「ホテルカクタス」という名前のアパートに住む3人の住人、それも不思議な住人たち – 帽子ときゅうりと数字の2 – のおはなし。まるで絵本になりそうな感じのおはなしのようだけれど、読み進んで行くと、これはなにかしっかりした人生哲学を説かれているような気にもなっ てくる。
お互いはじめて顔をあわすところから(そのきっかけもちょっとした迷惑騒ぎから)まったく違う性格の3人が、しかも普通ならきっとあまり結びつかないような3人が、仲良くなって、一緒にいろんな経験をしていく。いくつもの夜を語らい、恋をしたり、旅をしたり。
帽 子、きゅうり、数字の2、という、とても彼らが動いたりしゃべったりするのを想像しにくいキャラクターたちが、読み進んでいるうちに気にならなくなって、 しっかりした姿でないにしろ、なにか「こんなかな?」ていう姿ができてきて(でも絵に描けといわれたら、無理(笑))、彼らが生き生き動き出すのが不思 議。これも江國さんのマジックかな。
淡々と話はすすんでいくけれど、なにか大事な事を諭されている気がしてくる。やわらかな文章のなかの強い意志。とても江國さんぽいと思う。
PS 高橋源一郎氏のあとがきがこれまたとてもいい。
集英社 2004