稀代のオペラ歌手、マリア・カラス。この映画はフィクションだが、彼女ととても親交のあった映画監督がとった作品だそう。だから、この映画には彼女への愛があふれている。
物語としてはどうしたこともないのだが、声をわるくして、引退のような生活をしている彼女に、さる音楽プロデューサーがカムバックを薦める、というおはなし。結局カムバックはしないのだけれど。
それでも隠遁生活をしていた彼女がふと街角にあらわれたときに、パリ市民たちが示す反応とか、彼女のひとことひとことに騒動が巻き起こる様とか、どれくらいのスターだったのか、というのが、彼女を全く知らない人にもよくわかる。
本 編中にながれる(それが物語上でプロデューサーが仕立てる作品なのだが)、本物の彼女の歌声をつかい、それにミュージカル仕立ての映像をつけた作品(これ が見事に役者が合わせきっている)が素晴らしい。というか、やっぱり歌がものすごい。カルメンとか椿姫とかとか。オペラには全然なじみがないけれど、その 神が宿ったかとおもえるような歌声に打ちのめされてしまう。
ピアフが人生の喜怒哀楽を歌ったのならば、彼女は神の言葉を歌ったのかも。どちらもすばらしい。