おくりびと

ある意味この映画(というかこんなストーリー)で涙流さないわけない、というような設定・話はこびに、ちょっと「ずるいなー」と思ってしまったり。だれしも自分の親や身近なひとたち、自分やパートナーの死というものを前にしたときのことを想像したら、泣いちゃうもんね。

実 際納棺師という仕事があるのはしらなかった。すごく日本人的な感覚のうつくしさ、静かさのある仕事だと思う。でも映画の中でも少し描かれてるけれど、人の 死は十人いれば十通りの死に方や死に模様があるわけで、決して静かで綺麗だったりするばかりではない。そして、やはり”死”に関する物事はこの国この文化 圏ではタブー視されるものだ。忌み嫌われてるのは事実。でもそういう世界に先入観やら感情を越えて美しさを感じさせられたのはこの映画よくやった、と思え るところ。

でも、実際はこの仕事ってもっともっと忌み嫌われたり、どうしようもない場面に遭遇したり、と、もっとエグいはずだ。こんな仕 事をもつ旦那をうけいれるのも、そんな環境に自分をおくのも相当な覚悟がいるはず。なのに、納棺師という仕事とその人間模様を描く作品のはずなのに、その へんがさらっとしすぎていると思う。たんに美しい部分しか描いてない気がする。

一番残念だったのは主役の2人。本木雅広はまだしも広末涼 子という配役はどうだったんかなーと。広末本人が悪いわけでも演技が下手だーとか思った訳でもなく(でも下手かも)、適役じゃなかったんじゃないかなと。 なんか健康的すぎる、広末っぽすぎる。すごく微妙な陰影の映画なのに、画面に広末がでてくると「あ、広末」というふうに見えてしまい、納棺師の妻の美香と いう女性には見えない。同じく本木くんもちょっと健康的すぎる気がする。でもがんばってたと思う。

もっともっとタブーとかこの仕事の暗 さ、そして美しさなんてものをだしてほしかった気がする。夫婦間の愛のエピソードが出過ぎなような。映画の各所にちりばめられるトピックが次の展開の布石 になりすぎてて、ストーリーの自由さというか、自然さがすくなかった気がする。”石文”って素敵なエピソードだけれど、そんなうまいこと転ぶかぁ?とラス トシーンはおもっちゃった。

でも脇役たちがめちゃくちゃよかった。社長の山崎努の渋さが素晴らしいし(年食ってもひょうひょうとしててい い)、風呂屋のおばちゃん吉行和子とその息子杉本哲太(彼女が亡くなって、焼き場のおっちゃん高野笹史と嘆くシーンが一番よかった!!!)がものすごいよ かった。だからキャスティングをもうちょい考えたらもっとええ映画になった気がするのになぁ。もったいないなぁ。

そうそう、本木くんは最 初チェロ弾きの仕事をしていたので、チェロを弾くシーンが描かれているのだが、すごく頑張って練習したんだろうなーと感心させられた。ああいう弦楽器を普 段見ない人ならちゃんと弾いてるように見えただろうなー。でも弾いてないのが分かるくらいだった。これにくらべると外国映画で俳優さんたちが音楽家の配役 をやるときの徹底度はほんとすごいなと思う。「Shine」でのジェフリー・ラッシュとか「戦場のピアニスト」でのエイドリアン・ブロディなんてピアノ弾 きを普段よく見てるひとから見ても弾いてるようにしか見えなかったもんな。この辺てやっぱり「外国映画だからすごいんだー」という単なる思い込みや外国人 へのへんな劣等感からそう見えるのか、はたまたやはりほんまにすごいのか、その辺が気になるなぁ。

あとみた映画館がそうだったのかどうか わかんないけれど、音楽がやたらと音量でかかった。静かなストーリーで最低限の音楽でいいのに、これでもかーってぐらいあったので、食傷気味。久石さんの 曲は好きだけれど、ありゃ邪魔になってると思う。しょうもない横やりでもはいってんのかなと勘ぐってしまう。

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