江國香織 – 赤い長靴

冒頭の一行目から江國さん。なんでこのひとの文章はこうも彼女っぽいの?

結婚12年目を迎えるある夫婦の日常を14の短編で描いた作品。妻・日和子の視点で描かれたものが多いが、同じ事柄を夫・逍三の視点で描いたものもあり、両側面からの気持ちが見えてなるほどとおもったり、どうなんだろうとおもったり。

夫の愛想なさにどうしようもないいとおしさや淋しさを感じ、くつくつ笑う妻・日和子。通常会話のなりゆきや内容によって物がたりは構成されていくのに、このお話は大半の会話が成り立ってない。返事がなかったり、ずれたり。お互いに発してる言葉と聞いてる言葉が違っていたり。物語としてはおかしな感じだけれど、実際こういうことって多いんじゃないか?そんななかにこそ夫婦のなんでもない日常があり、危うさがあり、それを乗り越えていく力がある、っていうことを描きたかったのかな?

不気味さや怖さを感じてしまうかもしれないけれど、一段と江國さんの素晴らしさを感じてしまう一冊でした。

文春文庫 2008

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