乙一 – 暗黒童話

彼にとっては最初の長編だそう。もうタイトルからぞくぞくっとくるような感じで期待してページを繰る。やはり乙一さんらしく、冒頭からいきなり彼独特の世界があふれ、予告もなくその住人にさせられてしまう。鴉、目の見えない少女・・・・

作品全体に漂う雰囲気、なにか明るくてもすこし昏い感じなのも、普通絶対ありえないような設定がでてきても、それが自然に存在しているかのような描写、トーンが見事で、どんな変なことが書かれていても、うん、と頷いてしまえる文章の力強さというか押しの強さというか、決して押し付けがましくはないのだが、静かに強く断定されてる感じなんかがたまらない。

作品自体もすごく複雑に入り組んで章立てになってて、絵本の部分と物語の部分が表裏になってたり、世界がクロスしてたり、どろどろと現実と仮想が溶け合ってしまってるのも見事。だらだらと書いて長くなったのとは全然ちがって、最後までペースも変えずにゆるりとどろりとまとまっていくのがいい。しずかに「え?」て結末になるのも。

見事。

集英社文庫 2004

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