加藤実秋 – モップガール

初めてよむ加藤さん。わけあり清掃会社にひょんなことから勤めることになる主人公桃子。この清掃会社はおかしな人たちの巣窟だった。しかし彼女はがんばって仕事に勤める。一方、彼女には以前から原因不明の難聴の持病があったのだが、難聴が起こっているとき清掃現場でフラッシュバックに襲われ、たびたびおかしなことになる。鼻が利かなくなったり、幻聴が聴こえたり・・・。

じじいキャラの社長、体力バカ、カッコいい若者、なんているへんな清掃局っていったら、中津賢也氏のまんが「ふぁいてぃんぐスイーパー」を思い出してしまうのだが(ほんとバカみたいなマンガで好き。中津さん好きなのだが、まったく売れないので悲しい)、それとは違って、これはミステリー。主人公の身に起こる超常現象は清掃現場(大概人が死んだ現場だ)のある一種のダイイングメッセージになっている。その現象から清掃現場の裏にひそんだ謎に挑んでいく仲間の翔と主人公桃子。それぞれの事件が解決しないとこの妙な現象は治らないのだ。

軽快なテンポで読めるので短編といえど少し長いのだが、すっと読めてしまう。こういうおかしなキャラたちがでてくる物語は好きだし、怖くないミステリーも好きだし、やたらと謎が謎を呼ぶようなものでもないので、気持ちいい。

世の中に実際にこういう清掃業者はいる。人が死んだ現場やごみ屋敷の片付け、消臭など誰も引き受けたがらないこんな仕事をやっている人たちの動機は「われわれがいないと世の中がたちゆかない」という使命からだそうだ。現代社会は利便性・快適さの裏にそれを支える人たちが必ずいるのだ、ということをこの物語は暗に語ってくれている。とくに死の現場というのは普通の生活者からは程遠いところに追いやり、意識の外へ置いてしまっている。しかしそれは誰にもやってくるものなのに。

このシリーズ、もっと続けて欲しいなー。

小学館文庫 2009

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