有川さんのあぶない小説かとおもって手に取ったけれど、ある意味キケンな(?)お話。ある大学の理系サークルである機械制御研究部、略して「機研(キケン)」のドタバタな日々を描く。2回生で部長であり何事にも突っ走りがちな上野、そして副部長でありもの静かで、存在感だけで威圧的な大神。ひょんなことからこのサークルに入ることになった”お店の子”元山とその友人池谷。2回生2人に率いられたキケンの面々が引き起こす犯罪すれすれな出来事から、体育会系も真っ青な学祭への取り組みなどなど、面白い話いっぱい。
ほんと大学といえばサークル、サークルといえば大学というぐらい大学生活におけるサークルが占める割合は大きい(と、僕は思う、僕はそうだったから)。下手をするとクラスやゼミの仲間よりもこのサークルの仲間や先輩/後輩のほうがその後の人生の友達や影響を与えられ/およぼす人脈であることが多いと思う。そんな多感な時期に面白いサークルに出会えるというのは本当に幸せなことだとおもう。社会に出た責任ある大人でもないけれど、大人と同じくらい行動できて遊べる、そんな大学の時期というのは無駄なことも全力で出来るいい時間。
そしてここでは有川さん得意の理系のお話。なんか理系男子好きなんやろなー、こういう集団をうらやましいーと思って見てたんちゃうかなーとおもわせるくらい、この物語にでてくる男の子たちを可愛がってる。そう、この物語はいままで読んだ有川さんのものとはちょっと違って、ほんと天真爛漫な男の子たちがたんにむちゃくちゃするだけの話(笑)。シリアスなテーマもなければ、メカもでてこない(ちょっとでてくるけど)し、甘アマなロマンスもない(ちょっとでてくるけど)。ホント理系男子たちのアホ話、例えば卒業して10年経って久しぶりに集まって呑みながら思い出して笑う類いの昔のおもしろ話、そんなものを聞いてる感じ。
部室とか懐かしいな。僕の場合大学ははっきりとそういう場所がなかったので、懐かしさを感じるのは高校の部室。学校の中庭にあって、おんぼろなプレハブで、年がら年中そこにいた。授業がなかったときや昼休み、放課後なんかはそこにいくと誰かがいて、練習したり、だらだら遊んだり、夜遅くまで話あったりテープ聴いたりした。いまでもその時の仲間とはずっと繋がっている。やっぱりそんな時間を過ごせた人間たちとはそこで積み重ねた時間の分濃い関係になるのかも。体験の共有というか。
ほんと有川さんはこれらのことを(たとえ作ったお話であっても)すごくうらやましく思ってるんだろうなーと。女子はこういう世界には入りにくい(あとがきでも書いているけれど、こういう理系男子の集団って女の子が一人でも入ると普段の姿ではなくなってしまう)から、それを外から思いっきり応援して、うらやましがる、そんな感じがひしひしと伝わってくる。そういう意味ではまたまた甘アマな感じだなーw
あー、おもしろかった、んで、甘酸っぱかった!
新潮文庫 2013