浅田次郎 – プリズンホテル【1】夏

たまに読みたくなる浅田さんの本。いままで読んだものもいろんな方向で、まだ浅田さんの感じというのが掴めてないのだけれど、今回目にとまったのは4冊シリーズになっているこの「プリズンホテル」。監獄ホテル?なんだろうとおもって見た裏面の紹介みて、これはおもしろそうだぞと4冊とも入手。その1冊目。

本人はそんな意志がなかったのに極道小説で売れっ子になってしまった、かなり性格に難がある(一応物語全体での主人公というか、狂言回し的立場の)小説家・木戸孝之介。メリヤス衣料の職人だった父の七回忌に現れたたった一人の叔父であり、関東桜会という組織の五人衆のひとり、ヤクザである仲蔵。その叔父が実は温泉リゾートホテルを経営しているという。最初はうさん臭がる孝之介であったが、高齢な叔父のことを考えるとそのままそっくり相続してしまえるな、など浅はかに考えホテルを訪れたことから騒動は始まる。叔父が経営するその「奥湯元あじさいホテル」、実は別名「プリズンホテル」と呼ばれ、その筋の方々(つまり任侠団体)専用のホテルだったのだ(普通の人も来るにはくるのだが)。

ホテルの支配人はホテルマンを絵に描いたような男だが、番頭以下従業員は強面の男ばかりで、仲居は外国人ばかり。先代から居続ける頑固な板前がいるとおもえば、名門ホテルが喉から手が出るほどほしがる腕利きのシェフもいる。

そんなホテルに迷い込むようにやってきた訳ありの子連れの夫婦。定年退職してその足でやってきた老夫婦。謎の旅の男。そして作家・孝之介とその連れ清子。さて、どんな騒動が巻き起こるのか?

とにかくでてくる登場人物(どちらかといえばホテルのひとたち)がどの人も、クセがあるけれどかっこいい。見てくれの姿ということではなくて、その生き方が。きっと普通の世界では苦労してしまうだろうけれど、こういうある意味狭い特殊な世界(あとがきで浅田さんは’マイナーな世界’と表現してる)では真っ当にチカラが発揮されて、不器用だけれどまっすぐな心意気が伝わってくる。暴力団とかヤクザとか書くとどうしても荒っぽいイメージしかできないけれど、任侠はちょっと違うよう。もっと筋が通っていて、男気あって、情が深い感じ。そんなところがちゃんと描かれていて(というかそこがメインなのかもだが)、まるで、子供の頃に近所に一人はいた口うるさかったり、すぐゲンコをくれるような怖いおっちゃんが、実はちゃんと見ていて、どうしようもなくなったら優しく助けてくれる、あんな感じ。

さて訳ありの子供連れ夫婦、老夫婦、かれらがこのホテルでの2泊3日、そして仲蔵という人物によりどうなっていくのか。孝之介と仲蔵はどうなるのか。それは読んでのお楽しみ。わりとこまかく章わけされていて、そこについてるタイトル(本文の中から抜粋してる)も粋でいい。

こんなホテルがあったら行ってみたいかと聞かれれば迷うけど、覗いては、みたいかも。。。

集英社文庫 2001

“浅田次郎 – プリズンホテル【1】夏” への2件の返信

  1. お久しぶりです~。
    ずっとお渡ししようと思っておいてたんですが、あらら。やっぱり読む本がかぶってしまうー。
    登場人物が濃くて、ドタバタしてる感じやけど、ほろっとくる。
    シリーズが夏から始まるのもいいね。

    1. ご無沙汰ですー。お変わりなく?うん、これは面白そうだとおもって手に取ってしまったよー。重なるねーw またいろいろ紹介してくださいな。なるほど夏から始まるの、いいですな。いま4巻読んでますわー

よよ へ返信するコメントをキャンセル