守り人シリーズの短編集。主にバルサとタンダの子供時代の話が絵が描かれる。彼らが出会った頃。
大好きだが村のはみ出者である叔父の死とそれにまつわる噂について悩む幼いタンダ「浮き籾」、しばらく定住したある街の宿にいた賭事師の老婆から人生について学ぶ「ラフラ」、商人の隊列に護衛として父子ともに雇われるジグロとバルサ、しかしその隊商の護衛が裏切る「流れ行く者」の3編。いずれもバルサは子供だが、守り人シリーズにつながっていく素質が垣間見えるように描かれている。
もしかしたらこの短編集から読んで本編にいっても大丈夫かも。本編を読み終えてからしばらく空いたけれど、すっかりこのバルサの世界も僕の体のどこかに出来上がってしまっているようで、すぐにこの世界に戻ってこれるようになった。解説で幸村さんが書いているように、それは上橋さんがこの世界を構築するにあたって、なんでもない日常のことをすごくきちんと描いているから。だからこそ世界がしっかりした土台の上に自由に作り上げられている。それはやはり人類学の研究者としての面をもつ上橋さんならではの視点なのかも。
2013 新潮文庫