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伊坂幸太郎 – ガソリン生活

gasoline

コロナウイルスによるキャンセルの投稿ばっかりになって、めげてしまいそうなので、サボっていたレビューを。この作品、実はだいぶ前に読んでいたのだけれど、レビュー書かずに置いたままになってて、時間も経ったのでもう一回読んでみた。いやーーー、最初に読んだ時も面白いと思ったけれど、もっと面白く感じられた。やっぱり伊坂さんの作品は、緻密で、ユーモアに溢れている。そのおかげで実はかなり怖いこと書いてあっても(実際に現代社会のそこかしこにある闇)、そこまで怖く感じられないのがいい。

さて、この話はタイトルにあるように、ガソリンで生活するものが主人公。それは緑のデミオ。つまり車。でも例えばアニメのカーズのように車が自分で行動して大冒険!みたいなメルヘンチックなものじゃなくて、車は所詮車で、人間に運転してもらわないと動けないし(もちろん自分の意思で行きたいところに行くってこともない)、人間とコミュニケーションできるわけでもない。でも車はみんな人格(車格とでもいうのか?w)を持っていて、車同士はその排気ガスが届く範囲では会話ができる。自家用車はたいがい自分の所有者のことが好きで、働く車は一目置かれやすく、タクシーはおしゃべりが多い。そして車輪が多い方が偉いと思われてて車はみんな貨物列車に畏怖の念を抱いている。そして彼らが一番恐れるのは廃車w。車検が近づくと落ち着かない気分になるそうw また同じタイヤを持つものでも、バイクや自転車のような2輪は少しバカなのか(車が言うところによると)会話は成り立たない(「※★Φ!」とか言うw)。でもデミオはいつか会話できるかもといつも声をかけたりする。

というような、設定がほんとに面白い。本当に驚いたら「思わずワイパーが動くような」気持ちになったり、憎いやつは「ボンネットで挟んでやりたく」なったり、悲しくなったら「マフラーから水滴が落ちる」ような気分になる、などなど、きっと伊坂さん車になりきって思いっきり想像したんだろうなー的な描写がたくさんで、これまた楽しい。

その緑のデミオの所有者は望月さんで、夫に先立たれた妻と子供3人の家庭。名前そのまんまの弟言うところのベリーグッドマンである長男・良夫。思春期に入って何かと反抗がちな長女・まどか。そして望月家でいちばん聡明で子供とは思えない10歳の次男・亨。ある日良夫と亨が車で出かけていた先で停車していると、乗り込んできた女性がいた。それは誰もが知る元女優・荒木翠だった。彼女は追われているらしい。ある人と合流するのだという彼女の言われるがまま送り届けて別れるが、次の日彼女が事故死したというニュースが。荒木を車に載せたことや、そのあとの急死を巡って新聞記者などと繋がるうちに、望月家はやっかいなものごとに巻き込まれて行く。。。

結局は傍観しかできない車たちが(物語は彼らを通して語られる)どう感じ、何を話し、そして望月家のみんなはどうなるのか?ハラハラドキドキするし、ものすごい怖い話もさらっと語られるけれど、伊坂さんのユーモアとめくるめく展開にすべては見事に昇華される。ああ、素敵、面白い!そして物語のエピローグが素敵すぎる。もし本当に車たちがこうやって会話してたらと想像するだけで本当に楽しいし、愛おしくなる。運転はきちんと、アクセルとブレーキは優しく。

しかしほんと読めば読むほど、伊坂さんの作品はちょっとしたことも無駄なく繋がって一つの物語を紡ぐように書かれている。ほんのちらっとでたことが後に大きなポイントになったり、ほんとに緻密だなーと思う。もしかしたら伊坂さんが作曲家になってても、すごく緻密な曲かけるんじゃないかーと思ってしまう。仙台でうろうろしてるときに、ふっと出会ったりしないかなあ、密かにいつかそういう機会ないかなーと楽しみにしてるのです。

p.s.
緑のデミオの所有者望月さんちの隣の細見さんちには古いカローラ、通称ザッパがいる(細見さんがフランクザッパが大好きだからw)。伊坂さんの作品は必ずといっていいほど音楽ネタがでてくるけど、今回はこのザッパの語るフランクザッパの名言たち。

「人間のやることの99パーセントは失敗なんだ。だから、何も恥ずかしがることはない。失敗するのが普通なんだからな。」

「一部の科学者は宇宙を構成する基礎単位は水素だと主張するが、それには賛成できない。水素はあちこちに存在しているから、というのなら、水素より数多く転がっているものは愚かさだ。愚かさが、宇宙の基礎単位だ」

他にもいくつか出てくるけれど、ほぼ聞いたことないフランクザッパに急に興味が湧いてきた。

p.s.2
ちなみにこの文庫本版には、気づきにくいけど、カバーの裏に「掌編小説」と銘打って短いエピソードが描かれている。これがまた素敵で、こんなことやってみても楽しいだろうなーって思ったりも。ほんと伊坂さんありがとう。

朝日文庫 2016

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