この自粛期間中というのは家にいる方が多いのか、SNSの動きが活発でいつもより投稿なども多くて楽しいのですが、その中にいろいろバトンを渡して行くタイプのものもあり、僕にも一つ回ってきました。それは自分の好きな本を紹介して行くっていうものだったのです。
まあこういうものはチェーン的になりがちなので最初は楽しいけど、どんどん量増えていってしんどくなるので、僕から廻すことはしないですが、その好きな本を考えてて(いっぱいあるというか、本ばっかり読んでるのでどれが一番とか言えない)思いついた本について書いてたら、意外に熱くなってしまい、Facebook上にえらく長い文章を投稿したのですが、読んでみてから自分でも面白いな、と思ったので、こちらに転記しておきます。
SNSってなんでも流れて行っちゃうのがもったいないです。自分の身から出たものの中にも、たまにこうやって留め置きたいものもあります。
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常々、ぼくは読書家というわけではなくて、活字中毒、だと思っています。なんせ字を読むのが好きなのです。でもやっぱり字は紙で読みたい人で、モニターでは長い文章、とくに本のようなものは読みづらいです。そして何より物理的な本だったら、残りの厚みで、ああ、もうすぐ終わっちゃう、どうなるのだろう?読みたいけど読み進みたくないー!とか思えるのも本が楽しい要素の一つでもあります。
いろんな本があって知識や知恵を得られるものもいいのですが、やはり物語(小説)が好きです。本を開いて1行目を読み始めたとたん、リアルの世界から本の中の世界へすっと移ってしまい、読んでる間はその世界の住人になってしまえるから、です。最近大好きないしいしんじさんがある小説で「本は違った世界への扉を開く(中略)。そのかわり、表紙をめくると背後でもう一つの扉が閉まる。本は「外」の世界を一時的にしろ滅ぼしてしまう」と書いてあって、本当にその通り!と思いました。
そして何より活字だと、音も映像もないので、描かれる街や人、景色や空気感は読者の想像の力のみで形作られます。誰かが与えたものじゃなくて、読者それぞれに主人公の顔や声、描かれる世界の景色なんかがバラバラに存在し得るというのがとても楽しいです。僕も読んでいるときはセリフがその人物の声となって聞こえてくるような気がしてます。目で読む字としてではなく。
こういう理屈を書いていると、僕にとって本は、酒や薬物(汗)と同じような立場のものなのかしら、と思えてきました。一時的にでも現実世界を忘れさせてくれ、楽しい気分になり、切れかけ(終わりかけ)たら寂しくなり、また次が欲しくなってやがては中毒、という(笑)もしかしたら本のおかげでそういうものには嗜好が行かずに済んでるのかもしれませんねw
さて、こういうこと書いてるとなんぼでも書けるので戻します。一週間毎日どうのこうのだそうですが、こんなに読書好きなのに、この本!というのがなかなか選べません。なので一冊だけ載せます。
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栗本薫こと中島梓さん(ヒントでピントに出演されてたの覚えてる方もいるかな?)のグイン・サーガ シリーズの第1巻「豹頭の仮面」です。SFです、ヒロイックファンタジー(英雄もの)です。グインという豹頭の仮面のものすごい戦士が活躍する、戦いは剣と魔法(ここでは魔導)で、移動は徒歩や馬、さまざまな国があるけどまだ世界には未開の地がたくさんあるような中世的な世界観の物語です。いままで読んでいろいろ影響うけたり、考えさせられたりした本、また好きな物語なんかもありますが、僕の人生の横にずっとあるのはこの物語かもしれません。
この本を手に取ったのは13歳の時だったと思います。友達が貸してくれて一気に5巻ぐらいまで読んでハマってしまい(その時はもう既刊だったので)古書店でまた一巻から買って、途中で追いついて、そっからずーーーーっと新刊で読んでいます。その間矢継ぎ早に出版されることもあれば、しばらくあくこともあり、その時はまた一から読んだりもして毎回新刊がでるのを楽しみにしていましたが、悲しいことに2009年に栗本さんが亡くなってしまい130巻で未完になってしまいました。しかし、嬉しいことにそのあとも有志の作家さんがこの世界を引き継いで描いていて、現在146巻(こないだ読んだ)。これが正伝で外伝がさらに26巻あります。未完のためギネス認定は却下されましたが、事実上は一人の作家が執筆した世界最長のシリーズ小説だそうです。
中身のことを書くと途方もなくなるのでそれはwikiにでも任せるとして、この物語の面白いところのひとつは、始まったときすでに結末が明かされていたところです。刑事コロンボの手法ですね。でもそこに至らず(100巻で終わるっていうてたのに!)栗本さんは亡き人になってしまいました。いま有志で引き継がれているのは、その結末のさらに後の世界です。
もうここまで30年以上この世界に付き合っていると、この小説の世界がぼくの体験の一つとしてリアルに存在していて、もしかしたら行ったことある外国よりも詳細な経験として体の中にある気がしています。そういう意味ではこの現実世界の次に長い時間を過ごしたこの物語の世界は僕の人生に影響を一番与えてる(具体的に何がどうというわけではなく)と言えるんじゃないかと思っています。絵に描け、音にだしてみろ、と言われてたらできないけれど、この本の扉をめくると、そこにいる人物たちの姿が見え、声を出してしゃべっているのです。
写真はこのために引っ張り出してきた、当時古書で買ったものです。35年以上前のもので何度か読んでるけどブックカバーのおかげで綺麗なままです。そう、ブックカバーはラテン大阪の人間なら一度は行ったことあるんじゃないかという天牛堺書店(天牛書店とは違う、悲しいかな去年倒産した)の当時のブックカバーです(古書なのにつけてくれてた)。中高と学校の帰りとかに毎日のように三国ヶ丘駅そばの店舗にいってました。懐かしいです。何もかもが懐かしい(by 沖田十三) w
ぼくはこのシリーズが大好きなので人にオススメしたいところでありますが、なんせいまのところ全部で172冊もあるので、、、、一年ぐらいコロナ自粛がつづくなら読破できますけどね(苦笑。それは困ります)。さっきも箱にしまってあるこの物語のずらっと並ぶ背表紙のタイトルを見るだけでびびびっとしびれてしまいました。また一から読みたいなあ。でも読み出したら最後、また全部読んじゃうんだろうなあ^^;
おわり。
(追記)
このシリーズ、あとがきを栗本さん本人が書いてるのですが、どの巻も出版されたころの時勢が反映されていて、それを読むだけでも、ああ、そんなことあったなあ、とか、そんな時期やったなあ、とか懐かしさが溢れてきます。これまた楽し、です。
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