泣く大人 – 江国香織

江國さんの本。なにかに連載していた短編集。

4つのカテゴリーについていろいろ書いているのだけれど、中でもとくに”男友達”(男の友 達でも恋人でもなく)について書いた「男友達の部屋」という短編たちと、欲しいものをどんどこならべた「ほしいもののこと」という短編たちが好き。男友達 については、男の立場から、なるほどなー、とか、へー、とか、わからんのー、とか、わかるなーといろいろ思う事があるし、すきなものについては、 へーーー、と思う事ばかり。

この人はぼーっとしてると自分では言ってるけれど、実はかなりはっきりしてるひとなんちゃうかなーと思う。 自分がはっきりしてるし、自分の好きなもの嫌いなものなんかについてもすごくはっきりしてる。そしてそれらのものについて、すごく的確に適切に自分の立ち 位置、見方をもっていて、その感覚たちがすごくよく伝わる文章だし、こういう考え方(生き方というのかも)はすごく好きだ。

あまりこだわったりすることが少ないけれど、こういう風に生きられるのは、楽しそうでうらやましい。余裕のないところではなかなか難しい事だけれど。いつかこんな風になってみたい。そう思わせる短編たちだ。

角川書店 2004

泣く大人
泣く大人 – Amazon

小川洋子 – 博士の愛した数式

映画になって、そのタイトルから気になっていたおはなし。映画見るよりやっぱり原作が読みたくて。

記憶が80分しか保持できない、過去に不幸な事故にあってしまって数学者と、その世話をするため派遣された家政婦母子、そして数学者の兄の家内であった老婦人。この4人の、微妙な、哀しささえ感じさせる美しい情愛をかわす姿が描かれた、とても心温まるおはなし。

数々 のいいシーンはあるけれど、やはりそれよりも、理系出身だからか、数字、数式などにぐっと惹かれてしまう。もう長い間わすれていた数字たちの美しさ。数学 者たちが編み出した美しすぎる公式たち。知れば知るほど不可思議な数字の世界。そこには人智をこえた神の智慧を感じずにはいられない。

そ ういった数字・数学の美しさを愛するように、かつて愛した恋人、そして新たに現れた家政婦たちを、その短い時間でしか知り合えない、そんなハンデを持ちな がらも、素直に心をかわす、そんな老数学者の姿に、いま自分たちが見落としてしまっている、手のひらにそっと包んでいなければならないような人の息吹、感 情、生き方を感じずにはいられない。

新潮社 2005

博士の愛した数式
博士の愛した数式 – Amazon

たかのてるこ – ダライ・ラマに恋して

たかのてるこのOL旅シリーズ第5段(だっけ?)

思わぬ大失恋から心にとびこんできたのが、ダライラマ14世の笑顔。それにひきつけら れ、「会いたい」の一心で、チベットを旅行し、そして現在ダライラマが亡命してるインドのラダックを訪れるお話。ちゅうかそんな願って会えるようなひとで はないのに、会えてしまうあたりが、このたかのてるこのすごさ、行動力、人間味あふれるパワーか。

読んでいるとこのひとの人柄がほんといいんだなー、正直で明るいひとなんだなーというのがすごく伝わってくる。おかげで読んでいるほうにもパワーや明るさを与えてくれてる気がする。流れ込んでくる、というか。

チベットやこのラダック、行ってみたいなーとおもうよりももっと、ここに住むひとたちと会って、その時間を体感したいなーと心底おもわせてくれる、楽しい旅行記。

ダライラマ、会ってみたいなー。
でも会っても、きっとなにも話せないやろな笑

幻冬舎 2004

ダライ・ラマに恋して
ダライ・ラマに恋して – Amazon

江國香織 – 雨はコーラがのめない


久しぶりに江國さん。

雨というのは愛犬。雨と音楽をききながら暮らす日常が描かれた31編からなる短編集。雨の無邪気な姿もさることな がら、一遍にひとつずつ紹介されるアルバム(アーティスト)がどれもすばらしい。もちろんほとんど聴いた事ない人たちばかりなのだが、その描写を読んでい ると、ほかのどんなレコード解説よりもよくその音楽の本質が伝わってくるようで、すぐにその音たちを聴きたくなってしまう。ほんとすばらしい描写だと思 う。

雨も音楽も愛していないとこんな文章はうまれてこないだろうな。

新潮社 2007

栗本薫 – ランドックの刻印 (グイン・サーガ 119)

119巻。クリスタルへはいったグイン一行の日々。一向に記憶のもどらないグインだが、やっぱりアレに出会うとあんなことになってしまうのね・・・・。
だ いぶ以前は謎めいてぼやけていた部分ってもの(ランドックのことなど)がはっきり描かれるようになってきて、謎がとけて楽しい感じもするのだが、おとぎ話 の世界なのに、いやに超化学的な相反するものがでてきて、あってもいいものなのだが、ちょっといかつすぎる印象があるのだが、どうなんだろうな?いままで の外伝なんかでも結構謎の高位のものがでてきたりしたけれど、一体どんな風にオチがつくのか?っていうてもまだまだ先だろうけれど。

それより著者の体調が気になります。栗本センセー、無理しないで下さいね。

早川書房 2008

ランドックの刻印―グイン・サーガ〈119〉
ランドックの刻印―グイン・サーガ〈119〉 – Amazon

奥田英朗 – サウスバウンド

 

上下巻。一気に読んだ。おもしろかった。
なんか血がさわぐ物語だった。

主人公の小学六年生二郎の父母は実は元過激派。東京の 小学校での仲間との生活、不良中学生からのいじめ、そんな日常に、ちょっとしたことから起こる父がからんだ事件。そのせいで慣れ親しんだ東京を、そのとき 初めてしった父母以外の身内がいるという事実、そんなものを捨てて、家族で西表島へ移住する。しかし移り住んだその土地での島民たちとのあたたかい交流も つかのまのこと、実は住んだ土地はさる開発業者の土地で、また父母がそれとやりあい・・・・

ほんとに豊かな生活とは何が必要でなにがいらないのか?どうしていまの社会はこんな形になっているのか?沖縄(琉球)や八重山はどういった歴史をたどってきたのか?国と民、権力、金、世間、そんなものはいったい何なのか?必要なのかどうなのか?
そんなことを考えさせてくれる物語。安穏とした生活を送っていると忘れてしまっているというよりも気づきさえしない社会という名のゆがみを痛切に教えられる。

自分は何かと戦っているか?戦うのか?

角川書店 2007

サウスバウンド 上
サウスバウンド 上 – Amazon
サウスバウンド 下
サウスバウンド 下 – Amazon

 

栗本薫 – クリスタルの再会(グイン・サーガ 118)

118巻。グインサーガも来年2009年で30周年になるそうな。1982年ごろから読んでるから、もう25年ぐらい読んでるのだなー、感慨深い。でも物 語はまだまだ収束するようには微塵も思えないし、著者もどーなるかわからん、といってるので、いったい読み終えるってことがあるのかどーか、終わるまで生 きてるのかどーか、ほんと不安である(笑)

物語は一気に進んでパロ、そしてクリスタルへ。いったいいつ振りなんだ?というグインとリンダの再会。イシュトの子スーティとリンダ。グイン。物語の最初にでてきた人物たちがまた一同に揃う。どうなるんだー!早く続き読みたい!

早川書房 2007

クリスタルの再会
クリスタルの再会 – Amazon

たかの てるこ – モンキームーンの輝く夜に

たかのさんの本、第4段。いってみたい国、ラオスを旅するお話。読んでいるだけで、その国のゆたかさ(心の)、人の生き生きとした感じがつたわってくる。

そしてこの本は読んでて恥ずかしくなるくらい、たかの氏本人の恋愛話(ラオス人の恋人ができる!!)が半分くらいを占めているので、にやっとしたり、恥ずかしくなったり、こんな赤裸裸でいいのか?!笑

ほんと、楽しい本。旅したくなる。

幻冬舎 2003

モンキームーンの輝く夜に
モンキームーンの輝く夜に – Amazon

たかのてるこ – モロッコで断食(ラマダーン)

たかのてるこ氏の本2冊目。旅の本としては単行本化してるものでは3冊目なので、一冊サハラ編をとばしてるけれど、まぁいいか。

何も考 えずに訪れたイスラム圏の国モロッコ(だいたいこの国がどこにあるのかちゃんとしらなかったし、イスラムということもしらなかった)での相変わらずの珍道 中。運命とも言える出会いもあり、最後は壮大な愛の巨編になってしまうのだけれど、ほんまこれノンフィクションか?というぐらいジェットコースター的展開 するので、ほんとこのたかの氏ってのは自分自身が思っている以上のバイタリティーとエネルギー、キャラクターを兼ね備えてるんだとおもう。

こ の本を読んでモロッコという国よりも、イスラムの教えやその文化、断食(ラマダーン)なんかにいろいろ興味をもった。西側(いわゆるキリスト教圏やそれに 影響をうける国々)から見たイスラムというのは、とくに最近はとても悪い印象ばかり(植え付けられてる、ある意味情報操作だ!!)あるのだけれど、教えや その文化は同じユダヤ教から分派したものであるから、すごくうなずけるし、ある意味昔の日本人が普通にもっていたような感覚のものもあるよう。なのに宗教 やら国やら金がからむといまの世界情勢のていたらく、全く残念。

ま、そんなことはさておき、先進国に、都会に、住んでいると忘れてしまっているもの、こと、時間、そんなことを思い出させてくれる、そんなお話の詰まった、いい旅の本です。

幻冬舎 2004

モロッコで断食(ラマダーン)
モロッコで断食(ラマダーン) – Amazon

辻仁成 – 彼女は宇宙服を着て眠る

久しぶりの辻さん。

ちょっとだけ長い「愛の工面」(これはこれで別で読んだことあった)を除いては、短編ばかりの全7編。

な んでこの人の文章はこうも刹那というか、死や消失のような影がちらつきつづけるのだろうか。が、そういったものが気持ち悪いわけではなく、人生哲学のよう に、自然の成り行きのように、天体の運行のように、運められたもの、というふうに感じられる、受け入れられてしまう。

幸せというのはそういったなくなったり失ったりするものがあるから故の幻想なのかも。

幻冬舎 2002

彼女は宇宙服を着て眠る
彼女は宇宙服を着て眠る – Amazon