乙一 – ZOO 1

いやー、こんな作家がいたなんてびっくりしましたわ、もー!容赦ない文章ってのはこういうやつなんかなぁ。

この本自体は5つの短編からできてるのだけれど、どの短編もなんの前フリもなくいきなり物語の核心からはじまる(というか、事前の環境描写とかがないといったほうが正確か)ので、「え、え、え、えーーっ」といってるうちに話がすすんでしまう。

しかもどれも結構きっついめの話で、妄想力豊かだとかなり心臓がしんどい。でもめちゃくちゃ面白い。こりゃ他の本も読まねば!

集英社 2006

乙一 - ZOO 1
乙一 – ZOO 1

伊集院静 – アフリカの王

実際にあるホテルとそれを建てた男をモチーフにした小説。アフリカの大自然あふれる国立公園のなかのある丘のある岩にホテル(コテージ)を建てる、しかも個人で・・・そんな途方もないほら話のようなことを成し遂げる、骨のある男。そんな男の、でも実はくじけそうになる姿にいろんなものを投影させて読んでしまう。

いくつもの心にずんと響く人々の言葉がよこたわってる。自分もなにか人と一緒に夢をみたり、人に夢を抱いてもらえるような、そんな物事をひとつ確信して、向かって生きたい。そんな気持ちにさせてもらった。

ムパタホテル。行ってみたいな。

PS
主人公の黒田十三という名前がどーもそのキャラからして黒田征太郎と伊丹十三のアイノコのように思えてしかたない。あと設計やるおっさん(藤巻)が関西弁からしてどーも安藤忠雄に思えてならん(笑)

講談社 2003

伊集院静 - アフリカの王(上)
伊集院静 – アフリカの王(上)

アフリカの王(下)
アフリカの王(下)

石田衣良 – LAST

ほんとこの人のかく小説群はどれもリアル。リアルという言葉がリアルさをなくすほど現実的、というか現実的ではなくて、”まさにいまそこにあること”という感覚か。ドキュメントでもない。ほんと今進行してることのように思える。生々しすぎるというか。

LAST、ということでいろんな人間の最後の何か、を描いた短編集。どの話もすごく現実感を伴うので、読んでいて胸がえぐれそう。怖い。きつい。ドキドキする。

なかでもひとつ、ラストホーム、という話。ある男が職を失い(怪我が原因で)、家を失い、ホームレスとなって公園のビニールハウスに居をうつすのだが、そうなる男、そしてそこにいついている人たちの暮らし、それと関係なく佇む現実社会、そんなものが自分のこれからとすこしオーバーラップしてしまう。不安。

講談社 2005

石田衣良 - LAST
石田衣良 – LAST

加賀まりこ – 純情ババァになりました。

女優加賀まりこの自叙伝。今現在の彼女をテレビの画面を通してしか見ることができない世代には結構「へー、実はこういう人なんや」と思える逸話がたくさん。大半が20代のころの彼女の姿や言動のおなはしばかりだけれど、そんなにストレートな人だったのねー、と感心。あくまでも恵まれた環境に生を受けた人だと思うけれど、それに甘んじて居座るでもなく、かといって大きく外れてめちゃくちゃになることもなく、正しく生きてきた人、という印象を受けた。襟を正している、というか。

とくによかったのが途中に挿入される立川談志師匠との対談。ちょっと行き過ぎているようで、本質ははずさす、人情を忘れず、情に流されず、自分のワガママを正しく貫く、なんて感じの対話が、いいなぁと思わされた。

いろんなたくさんの人に出会いたい。

加賀まりこ - 純情ババァになりました。
加賀まりこ – 純情ババァになりました。

岡嶋二人 – 99%の誘拐

子供のころに誘拐された主人公が、最新のテクノロジー(といっても話は87年ごろ)を使ってその誘拐の手口をトレースしたあらたな誘拐事件を起こす・・・というサスペンス。

話もよくできてるので分厚いながら一気に読んでしまえるほどの面白さだったが、やっぱりコンピュータ・・いわゆるパソコンであるとか、パソコン通信(インターネットではない)とかの創成期にあたる時代なだけに、えらく懐かしい響きがするのが、なんかじんわりした。

子供のころにいとこに見せてもらったマイコンで描かれた星座図とか、8ビットのゲーム、テープの磁気記録機、カプラ、等々。そのころから比べるといまってパソコンえらいことになってるよねぇ。またこれほどの革命グッズがあらわれるのかなぁ。

教訓:身代金など金目のものを要求する場合はダイヤがよろしいようです。話の中では10億円ぶんのダイヤがマッチ箱ひとつぐらいにおさまる計算になってます(笑)

講談社 2004

岡嶋二人 - 99%の誘拐
岡嶋二人 – 99%の誘拐

田口ランディ – オカルト

久しぶりに読んだ、ランディさんの本。彼女にとってのオカルト=不思議と思う体験をいろいろな文体でつづった短編集。

創作のようなものもあるし、実体験のようなものもあるし、ふつうに物語のようなものもある。飽きずに最後まで一気に引き込まれて読んでしまう。

数字の話、竜神の話、いろいろ興味ある話がいっっぱい。何度でもよみたい。しかしランディさんの本にたびたび登場する超能力者(研究者?)秋山さん、会ってみたいわー。

新潮社 2004

田口ランディ - オカルト
田口ランディ – オカルト

栗本薫 -ふりむかない男(グイン・サーガ外伝20)

グインの外伝20巻。ナリスの探偵ものシリーズの2作目。今回は前回のものとちがい、国王からの弾圧を受けたあとのナリス(つまり寝たきりのナリス)が人からの情報だけで事件を解決するというもの。しっかしこの人頭えぇなぁ。

というか、カラム水ってどんなんやろー?なんとなくレモン水みたいなものを想像してしまうのだけれど、コーヒーに近いんかな?

早川書房 2006

栗本薫 -ふりむかない男(グイン・サーガ外伝20)
栗本薫 -ふりむかない男(グイン・サーガ外伝20)

栗本薫 – 風の騎士(グイン・サーガ 105)

なんだか急展開にまたなってきました。あのひとが出てきて大変なことになったと思ってたら、実はこの謎の仮面の騎士は・・・・・えぇぇーーーー!!!もうはるか昔に忘れてたよ。そんなヒトが幽閉されてたことさえ。

いやー、栗本マジックだわ。

はやくつづき読まんと!

早川書房 2005

栗本薫 - 風の騎士(グイン・サーガ 105)
栗本薫 – 風の騎士(グイン・サーガ 105)

栗本薫 – 湖畔のマリニア(グイン・サーガ104)

最近普通の本屋にいってなかったから、ずらーーっと新刊でてたの知らなかった。久しぶりのグイン、うれしいなぁ。

内容はともかくとしてアレがナニして脱出後のグインとマリウスの新たな冒険にちょっと新しい展開が・・・・あのひとがこんなところに・・・

あーどうなるのかなぁ

早川書房 2005

栗本薫 - 湖畔のマリニア(グイン・サーガ104)
栗本薫 – 湖畔のマリニア(グイン・サーガ104)

宮本輝 – 幻の光

この作品を読むまで宮本輝が神戸出身てしらなかった。

4つの短編からなる本。表題にもなっている「幻の光」という短編は一人称でずっと語られる物語なのだけれど、その大阪弁というか関西弁が見事。自分の叔母とかが暇ついでに昔話をしてくれているかのよう、めっちゃ自然で気持ちいい。なかなかここまで大阪弁を嫌味なく書いた文章も少ないんちゃうかなぁ。灰谷健次郎の小説のほうがちょっと言葉としてはきついし、自然にながれてない気がする(好きなんだけれど)

その表題作の話もとてもいいし、「夜桜」「こうもり」「寝台車」と、どの話も、とても身近な気分にさせてくれて、すっと腑に落ちるというか、小説なのに自分のことを追体験しているかのように錯覚させるほど、どの話も自然。ありふれたシチュエーションとかそういうことではなくて、景色が自分のいままでの生活のどこかに確かにあった、そんな気がする、そんな小説になってるから。

大阪の人間にしかわかんない感覚かもしれないけれどね。大阪というと”コテコテ”というイメージが先行しがちだけれど、この小説は読後に清涼感さえ感じる。

新潮社 1983

宮本輝 - 幻の光
宮本輝 – 幻の光