上橋菜穂子 – 神の守り人

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上橋さんの守り人シリーズ、5、6卷。二冊で上下巻になってる。

女用心棒バルサはひょんなことから人買いから幼い兄妹を助け出す。彼らはロタ王国では虐げられている民だった。一方そのロタ王国では最近奇怪な事件が起きていた。牢獄である人物が磷付になったのと時をおなじくしてその牢獄が全滅していたのだ。しかもそれはまるで人間の手で起こしたことのようには見えない有様だった。

現実の世界とそれに並行して存在する異界ナユグ。この二つは微妙に関連しながら存在しているが、ナユグ側に春が訪れ始めてその影響が現実世界にも及んできている。そんな中バルサが助けた兄妹の妹アスラは異界の恐ろしい神を宿す者になっていたのだ。現実世界の子供達として庇護しようとするバルサと彼らを追うロタ王国の猟犬(カシャル)と呼ばれる者たち、そして王国を影から密かに支えてきた兄妹の民族たち。王国の未来をも左右しかねない彼らの力をあらゆるものが狙ってくる。この窮地をどうするのか。一方薄々としかこの一大事を感じていない当の本人アスラは自分が神を宿すことの意味をわかっていない。

ようやくこの物語ぐらいになってきて、この守り人シリーズが描く物語の世界の広さとか、国々や人々の違いなんかがわかってきて、”読んでいる物語”という感覚から、グインのように”世界のどこかにある世界”という感じになってきた。そうすると俄然物語が面白く感じるようになる。国や時代というおおきな流れと人という小さなものの対比というか、大きな流れに抗おうとする人間の姿というか。頑張れバルサ!とか思ってしまう。

そして物語は進むに従って三すくみのような様相を呈してくる。現実的な解決策がいいのか、個より全体を重んじた方がいいのか、それともやはり個が大事なのか。アスラはその兄は、そしてバルサはどうするのか。

面白くって上下卷一気読みしてしまった。はやくも続きが読みたくなってきて困ってるw

新潮文庫 2009

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田中啓文 – 道頓堀の大ダコ(鍋奉行犯科帳)

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鍋奉行シリーズの二冊目。今回もほんとなにも働かず(?)食ってばっかりいる大坂西町奉行である久右衛門が、その食道楽ゆえの能力を発揮して謎に満ちた事件を解決する。

「風邪うどん」「地獄で豆腐」「蛸芝居」「長崎の敵を大坂で討つ」の4短編。どれも楽しいけど、やっぱり反応してしまうのはうどんなのよねえ。田中さんなので時そば(うどん)のモジりか何かでくるかと思ったけど、そうではなかったw。この事件を解決するために町中のうどん屋にいっぱいずつうどんを提供される下りあたりがおもしろい。たしかに麺って時間によって印象がだいぶかわってしまうのでネタにするには難しいけど、お出汁なら冷えてもわかるかもね。お出汁の取り方も詳しく書いてあって楽しい。個人的にはやっぱり四国のうどんの方が好きだけど、大坂のうどんも好きで、やっぱり大坂はお出汁の食べ物って感じ(四国のは麺の食べ物って感じ)。

豆腐も蛸もお菓子も(西洋のや日本のも)、でてくる食べ物も描写がというより、ほんと美味しそうに(ときには不味そうに)登場人物たちが食べるものだから読んでるほうは字面よりも絵として食べ物ができきて、おもわずよだれが口に溜まってしまったりw。

そして前作でもおもったけれど、この江戸時代の大坂の風俗や町をほんと見事に描写していて、現在の場所として知っているところが昔はどうだったとか、かわってないなーとか想像しながら読めるのも楽しく素晴らしいと思う。昔の町のことなんてこうやって文章で想像させてもらうしかないわけで、夜の町の暗さや、道頓堀の賑やかさなどなど、解説で我孫子さんが少し言及しているように田中さんはすごく深く考証をしているんだろうなーとおもう。なので、へんに引っかからずに数百年まえの大坂に楽々とトリップさせてもらえる。そう、読んでいても時代小説って感じじゃなくて、現在と地続きの昔話を今の話のように話してもらってる感じ。続きも楽しみ。たまには奉行さんが大失敗したりしないんかなw

集英社文庫 2013

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残俠(天切り松 闇がたり 2) – 浅田次郎

天切り松 闇がたりの第2巻。留置されている人間たちにはなぜこの小さな老人が優遇されるのかわからない。そんな謎の老人が同じ留置される人間たちに夜な夜な昔話を語る。今やそれは看守はたまた所長までの愉しみとなっている。

大正ロマンあふれるある日、寺の境内でみた見事な剣さばきの老人。その人が目安一家の客人となった。話をきくと彼はかの清水次郎長の子分・小政だという。そんな昔話の人物、、、と皆思うが、実は大正はさほど江戸時代からは離れていなかったのだ。だから江戸の任侠を引きずる人間がこの文明開化の華咲く大東京にもまだ残っているのだ。

そんな昔かたぎの人物の話から、目安の親分の切れ味いい中抜きの話、松蔵の初恋の話、そして松蔵と姉を捨てた父親との話などなど、人情味篤い話が8編。どれも読んでワクワクすると同時に、すこし哀しくなって空を見上げてみたり。ほんとこのシリーズいいな。時代劇でもなく現代劇でもなく。でも間違いなく今の人に向けて浅田さんは書いてるよね、きっと。

集英社文庫 2002

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浅田次郎 – 闇の花道

大正ロマンあふれる時代。明治の維新は遠い昔になり、まだ東京を大震災が襲うすこし前。街や人々は新しい時代に心躍らせていたが、まだまだ江戸の昔を大切にしていた者たちもいた。それは盗人稼業においても。

時は変わっていまの時代。留置所の隅にうずくまる老人。彼は夜な夜な同部屋の留置人たちに昔話をする。それも昔の盗人が使ったという声音・闇がたりという方法で。知る人ぞ知るこの御仁こそ、その大正の時代に名を馳せた目安一家の小僧で、天切りという大技を継いだ盗人・松蔵だった。彼ら一家が狙うのは盗られても誰も困らない天下のお宝。そして貧しい人には手を差し伸べる。義理と人情、そして何より粋であることを大切にした、そんな人々の物語。

とかく、いまの若い者は、なんて言葉がよく出るけれど、いまも昔もそれはさほど変わっていない。しかしその中でもすこしずつ変化はしていっている。今のご時世に義理や人情、はたまた粋、なんてことを信条にしている人間がどれほどいるものか。昔は本当にそういうものを大事にしている人たちがいて(と信じたい)、彼らの話を聞き、自分のいまを見つめ直す。話は昔話だから古いけれど、そこに含まれる真理や人の情は色褪せるものじゃない。

何巻か続くシリーズ物。「天切り松 闇がたり」シリーズ。一巻目となるこの作品では天切り松こと松蔵が目安の親分に拾われるところから、小僧時代のお話が主。博打好きの父親が借金のかたにと姉を置屋に、そして弟・松蔵を奉公にだすところから始まる。一家の姉御おこんが意地から同じ人物から同じものを盗り、それが人生の中での大きな恋になるお話「槍の小輔」がかなり素敵な話。そして生き別れた姉が吉原の花魁になって再開、そして別れる話などなど。義理人情なんていま流行らないというか二の次にされるようなことだけに、こう話にしてじっくり聞かされると、今はなんなんだろうとか思ってしまう。ロマンとか今ないもんね。そして粋。ほんといまは無粋な事ばかり、嫌になる。

こんな話をみせてくれる浅田さん、いいなあ。続きも楽しみ。

集英社文庫 2002

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田中啓文 – UMAハンター馬子 完全版

 

UMA – 未確認生物、それらを追っている訳でもないのだが、いく先々(あることを探し求めている)でUMAらしきものやそうでないものに出会う、ただひとり”おんびき祭文”の伝承者を名乗る、蘇我屋馬子とその弟子イルカ。彼女たちのいく先々で出会うものは、ネッシー、ツチノコ、雪男、クラーケンなどなど、UMAとしてその正体も存在も謎だとされる生き物たち(なかには魔界のモノも混じってくるけど)。それらをなぜかやたらと湧き出す知識によって暴いていく馬子。そしてそこにつきまとう謎の男。彼らはなにを探し求めているのか。そしてそれはどういう結果を招くのか?

怪獣やら異形のものやら呪いやらジャズやらなんやら、サックスを吹いていてもまるで叫びか呪術かのような音を追い求めている、そんな田中さんはきっとオドロオドロしいものに興味を惹かれるんだと思う。そして同時に未知なるモノへのロマン。ネットやらなんやらで地上のことはいろいろ明るみにされていってるけれど、いやいや実は我々が見知ってることなんて宇宙のほんのちょっと。でも、そういうことさえ忘れ去られて、なんでも指先一つで調べられてしまうと思い込まされているこのご時世に、ああ、こんな世界がたしかにあった、いや、あるんだ、ということを再認識させてくれるのがこの馬子たちなのかも(大げさ?)

各エビソードはさておき、煮しめたような、皆が想像する最大公倍数的な典型的な大阪のおばはん、馬子のキャラが強烈で、それを読んでるだけでおもしろい。でもこれ面白いって思えるの関西や大阪の人間だけなのかなあ。こなもんやの馬子はもうちょいおとなしいというか、小学校の近くにあった駄菓子屋のおばちゃんぽい感じやったけど、ここでの馬子はもう怪獣のよう。実は小学校のときにお世話になった先生に被るのよねえw

各UMAに対する憧れも、それを現実的にみた正体らしきものも、いろんな夢やロマンを馬子の口を借りて田中さんが語っていくのが楽しい。そして最後にアレがでてきて、ウルトラQだかなんだかのような展開になるのがもう笑うしかなくてー。やっぱり大阪城や高いビルは破壊されなきゃならないですよねえ。完全に最後の方は脳内映像再生になってました。

各章の間に挟まれる解説というか私見もおもしろく読ませてくれるし、このUMA愛に溢れた作品とてもいいです。この完全版ができるまでに紆余曲折しまくったようだけど、よくぞ最後までいってくれたって感じ。なんかうれしい。馬子はそして幸せになれるのかな、石切あたりで商売やってたりするんかなあ、なんて思いながら街をいきかうおばはんを眺める日々なのでした。

ハヤカワ文庫 2005

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有川浩 – 旅猫リポート

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有川さん×猫、こんな本あったなんて。読まずにはいられない。

以前飼っていた猫をやむない理由で手放したことがある主人公サトル。あるとき彼の車のボンネットでくつろぐ猫と出会う。ひょんなことから彼に飼われることになったその猫はナナ。しっぽが鉤型に曲がって7みたいだから。サトルとナナはすごく仲良く暮らしていたが、5年後、またサトルはナナを手放さなければならなくなる。そこでサトルはナナとの出会いの車・銀色のワゴンに乗って知人の家を回り、ナナをもらってくれないかと旅をするのだった。

ああ、これだけ書いただけでも泣けてくる。犬は飼ったことないからわからないけれど、飼っている猫をだれかにもらってもらわなきゃならないなんて、なんて寂しい状況か。あの、勝手気儘に暮らしているように見える猫も、一緒にいるとお互いの気持ちがよくわかる。そして時間が重なるにつれ明に暗に深く繋がっていく感じがする。お互い何かを共有して分け合ってるような。そういう猫のいる空間といない空間は全然ちがう雰囲気がしてしまう。

もちろん主人公はサトルなので、サトル周りで話は進むのだけれど、たまにナナの一人称で描かれるシーンがある。猫の目線で。この猫目線がよくできてるというか、有川さん猫なんじゃない?と思うぐらい猫の気持ち、生態なんかがよく描かれてる、うれしくなるぐらい。猫の好きなこと・嫌いなこと、子猫はまだバカであまり人語を解さないこと(というのと同時に猫は人語を解するということ、でもそれを人間はわかってないということw)、犬とも会話できること(もちろん犬もしゃべること)、外国の猫とはあまり通じないこと(人間も同じね)などなど。柴田よしきさんの猫のシリーズもよく生態見てるなーと思ったけれど、有川さんはより人間にちかく感じているような。

猫と旅をする。憧れることの一つ。残念ながら今まで飼った猫はみんな外が怖い子だったので、連れ出そうものならえらいことになったけれど、いつかそういことしてみたい。運転する車の中で猫が自由にうごきまわって、窓の外眺めたり、椅子で寝てたり。たまにリードをつけてどこか散歩したり。きっと旅好きな猫もいると思う。出会うかどうかはわかんないけど。いつかそんなことができたら、、、、楽しいだろうなあ。どこ連れてってやろうかな。デザイナーの平松さんが飼ってるノロが羨ましかったもんな(平松夫妻とノロは旅好き、ヨーロッパにも行った)。

かまはいなくなってしまったけれど、最近はPがやたらと甘えてくるので嬉しい。慰めてくれてるのか、単に寂しいのか、それとも単に暖かい腹がすきなのかw。でもくっついて来てくるということは、ぼくはまだ不吉な匂いがしないということだろうな、と猫に乗られながら安心する。猫は不吉なものには近寄らないから。ナナはそれがわかってもサトルと居ようとするのがたまらない気持ちにさせる。ぼくが猫と別れるときもいずれくるだろうけど。

きっとまだ近所に住んでいるであろう有川さんにもし会う機会ができたら、どの作品も素晴らしくて好きです、ってことを伝えるとともに、よくぞこの作品を
書いてくれたという感謝を伝えたいな。ありがとう、有川さん。

講談社文庫 2017

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宮部みゆき – 東京下町殺人暮色

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宮部さんのミステリーもの。東京の海辺に近い下町。昔は本当に下町だったけれど最近はウォーターフロントだ再開発だなんだで他所から流入してくる人も少なくない。そんな街にくらす中学生の順。彼の父は刑事でなかなか家には帰ってこない。そんなせいで母親は出て行ったままだ。

そんな下町であるときから町内で殺人が起こっているという噂が流れる。ほどなく川や公園でバラバラ死体が。そして警察には声明文が。そんななか順の家にも声明文が。なぜか。警察の捜査にも関らず犯人は一向に尻尾を掴ませない。順たちは町内で噂の家を訪ねてみることに。そこは画壇では非常に有名なある人物の別宅だった。

猟奇的なのか、それを装っているのか、愉快犯なのかそれを装っているのか、まったく犯人像がつかめないまま物語はすすみ、怪しそうな人物がでてきては消え、複雑な人間関係を見せてきたあたりで、からくりの逆転が始まるような感じ、素直におもしろいミステリーだなと思った。スピード感もあっていいし。時代を超えた因果が絡んでるあたりもうまい設定で描いてるなーと思ったり。

オドロオドロしそうだったけれど、なんだか読後感は爽やかな感じのする作品だった。

光文社文庫 1994

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阿刀田高 – 猫を数えて

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備忘録的に。猫っていう字がタイトルにあるので手に取った本。「独り者学校」「同音異義語」「恋の確率」などなど短編10編。どれも男女の恋愛について。肝心の表題「猫を数えて」は飼っていた猫を順番に思い出しながらそれに紐づく男を思い出すというもの。どの短編も大人の男女の物語。でも昔というか昭和的な感じがして、少し懐かしいような、今はこんなことないなーと思うような。でも、時代を超えて共通する部分もあるな、とか。

講談社文庫 1993

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誉田哲也 – インビジブルレイン

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背が高く優秀だが周りにあまり好かれてない姫川玲子警部。彼女の直感を大事にする捜査は時に絶大な効果を発揮するが、組織としては邪魔になる場合もある。彼女の班があるチンピラの惨殺事件に関わるが、調べていくに従って、昔あった事件が見え隠れする。その事件では警察の失態があったのだが、実はその陰にもっと大きな失態があったのではないか?そう気付き始めたとき、常総部からその件に触れるなとの指示が。

捜査が進むにつれ、その昔の事件との因果関係が見え隠れするなか、上層部や組織との軋轢に板挟みになる姫川と彼女の所属する班。事件はどう解決されていくのか?

心に大きなトラウマを持ちつつ刑事の仕事をつづける玲子がかっこいい。これは以前読んだ「ストロベリーナイト」からつづく作品だが、今回はもっと玲子が女性的な面を見せる。結構な厚みのある作品だけれど、テンポもよくてすぐ読み終えてしまった。

実際どうなんでしょうね、こういう組織って。たしかに大きくなった組織は自己保身を目的にした選択をしたがったりもする。警察や検察ってなかなか非を認めないってイメージあるもんな。大きな組織の前に市井の人間などどうでもいい、と、組織が組織であるために考えがち(それが個人ではなく組織としてそう結論づけてしまう)なのかもだけれど、その組織もやはり個人のあつまりなのだ。良心をもっと信じたいし、信じれるような世になってほしい。

光文社文庫 2012

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宵野ゆめ – ヤーンの虜(グイン・サーガ140)

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グイン・サーガ140巻。138巻ぐらいから一気読みしてしまった。いくつか読みたい本がある場合は、なるべくいろんな作家さん(シリーズとか)を順番にするようにしてるんだけど、このグインのシリーズだけは続けて読みたくなってしまう。まあ読むペースが速いってのもあるのだけれど。

ロンザニアで起こった不穏な空気はそのままアンテーヌへ。謎の使者はここでも陰謀の種をふりまくのか。そして無事シリウスを助け出したグインは彼をどうするのか?一方失踪をつづけるシルヴィアは、、、ケイロニアの災難は続きつづける。そしてあの闇の司祭がグインの前に。。。グインが縦横無尽に活躍日が来ると思うとまた読んでいてワクワクしてしまう。もっとたくさん出して欲しいなあ。

ハヤカワ文庫 2016

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