井上夢人 – あわせ鏡に飛び込んで

初めましての井上さん。実は岡嶋二人の片方だったのか、知らなかった。人間味あふれるじわっとくるホラー10編。どれもいい感じに怖い。

最初の「あなたをはなさない」を読んだときからもう夢中。怖い話は得意ではないのだけれど、オカルトものではなく(そういうのも入ってるけど)人間がやることの怖さ、の怖さ、がとても面白く、ずんずん読んでしまった。特に気に入ったのは「あなたをはなさない」、「書かれなかった手紙」かな。表題「あわせ鏡に飛び込んで」はちょっと推理モノっぽくなっているのだけれど、情景描写が読み取りにくくてもったいないなあと思ってしまった(じっくり読んでないからか?)。

この短編集は書き下ろしってわけではなく、井上さんがいろんな時期にいろんな理由で(それは各短編の冒頭ページにどういう理由でこの短編が書かれたか、という説明があり、これもおもしろい)書いたものを集めたもので、どれも面白いのだけれど、時期が違っているからというのもあってか話のパターンが似ているものがいくつかあるので、最初読んだインパクトのまま連続して読み進んでいくと、別の話のときに先がちょっと読めそうになったりしたのが残念かな。もしかしたらちょっとずつ間を開けて、忘れたころに読むのがいいかも。

浅田次郎 – 姫椿

相変わらずいい感じの味を楽しませてくれる浅田さん。短編が8つ、どれも素敵なお話ばかり。「?(シエ)」「姫椿」「再会」「マダムの咽仏」「トラブル・メーカー」「オリンポスの聖女」「零下の災厄」「永遠の緑」。どの話も似ていなくてテーマやシチュエーション、テイストが違うので飽きずに最後まですっと読めた。

可愛がっていた猫を亡くし悲しみにくれるOLの元にやってきた謎の生物「?(シエ)」、行き詰って自殺を考えた男がふと立ち寄った街でたどり着く銭湯「姫椿」、友人から妙な話を打ち明けられ自らもそれを体験してしまう「再会」、オカマたちが尊敬する大ママの見事な引き際「マダムの咽仏」、会社の窓際たちが追いやられた小さな部署の同僚は問題児だった「トラブル・メーカー」、数十年前の恋人が忘れられない男の前に現れる聖女「オリンポスの聖女」、事実は小説より奇なり「零下の災厄」、堅物の大学教授とその娘が通う思い出の競馬場「永遠の緑」。どれもいいなぁ。

とくに好きなのは「マダムの咽仏」と「オリンポスの聖女」そして「永遠の緑」かな。人と人とのつながり、人をいとおしくおもう気持ち、そういったものが行間にさらっと描かれているのがいい。ドラマチックでなくても、じわりと心を動かされる、ささやかだけれど強い想い。どういう生を歩んでいたとしても、人間て素敵だな、生きていることは素敵だなと思えるときがある、と教えてもらえるような気がしました。

乃南アサ – 凍える牙

白バイ出身の女性捜査官が主人公のサスペンスもの。レストランで突然炎上して焼死する男。そして人気のない場所で大型の獣に噛まれて殺された男・・・・。一見なんの脈絡もない事件がおぼろげに結びつきはじめる。そのライン上にいる人物とは、獣とは・・・

さすが乃南さんというか謎の多い事件、細やかな描写、スピーディーな展開、普通によめておもしろい。女性刑事がでてくるものは少なくないけれど、ここまで男性社会っぽい感じをリアルに描いているのも少ないかも。なので女性の立場から見たら非常に嫌な感じがする警察内部の描写になっている。まぁ実際この社会は男性に寄ってるところは多いのは事実とおもうし、まだまだ女性の入りにくい世界ってのもあるんだなと改めて実感させられる。

サスペンスやこんな女性問題もいいんだけれど、やっぱりこの物語で乃南さんが描きたかったのは、(ネタバレになるけど)大型の犬=オオカミ犬のことなんじゃないかな。というか実物はもういないからオオカミのことだったんじゃないかな。物語の後半はこのオオカミ犬の描写であふれているような気がする。物語の筋なんてそっちのけでオオカミ犬の美しさ、強さ、賢さなんかが押し出されているようにおもう。勝手な推測だけれど、どこかで乃南さんが出会って、強烈な印象をうけたのかもしれない。

それほど描写が精密だし、その生物としての能力の高さ、賢さ(人間のものとはちがう生き物としての)そしてそれゆえの美しさ、そんなものが崇拝ともとれるほど。実際それほどの生き物なのかと見てみて触れてみたくなる。ラストのバイクと疾走するシーンは圧巻。

大型で賢い動物というのは話こそできないけれど、それ以上に目で話したりするんだろうな。僕も出会ってみたい、オオカミ犬に。

よしもとばなな – 彼女について

ずっと読んだ本のレビュー(というか自分に対する備忘録)を別のブログに書いていたのですが、今年2012年からこっちにまとめて見ることにしました。もちろんあちらにも転記はしますが。

だいぶ読んで感想書いてないのがたまってきていてあせっています。備忘録書く前に忘れそうで・・・(^^ゞ

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あいかわらずよしもとさんのつむぐ物語は不思議なテイストを持っている。たぶん章立てとかそんなものがなくて、区切りがはっきりしないのと、シーンの移り変わりがスムーズというかあんまりきっちりしてないあたりが要因だとおもうのだけれど。とにかく誰かのお話を聞いているような気分になってくる。

魔女であった母が悲しい最後をとげたときに呪いをかけられた娘由美子、そしてその母の姉(彼女も魔女だ)の息子昇一と出会い、その呪いを解く旅にでる・・・・

ちょっと現実ばなれしているような感じがするけれど、物語自体はいまの社会(世界)と地続きのような世界観。ちょうど「西の魔女が死んだ」と似たような感じかも。でもおなじリアル感があったとしてもこちらのほうが少し白昼夢のような、なにかうすいベールがかかっているかのような印象を受ける。それはそのまま主人公の置かれている状況にも似ているんだけれど。

2人の生い立ちやいまの状況がちょっとずつ明かされながら2人は過去の忌まわしい事件に関わる人や場所を訪ね歩く。そして少しずつ主人公のもつれていた気持ちをほぐしていく。そういう過程を一緒に追っていくことで、生きていること、苦しいこと、楽しいこと、死んでいくこと、そんなだれもが人生で感じること体験することを諭されていく。

ちょっとおとぎ話のような気分にもなってしまうし、結局なんだったんだろう?と思ってしまいそうになるけれど、読み終わったあとにどこか気持ちが軽くなるような、そんなお話。

群ようこ – 働く女

先日読んだ同じく群さんの「でも女」につづくような本なのかな。10人の女の人のそれぞれの面白い、ちょっと哀しい、とほほな短編たち。どれもすごくリアルに存在する感じの女性ばかり。

物語で短編だから多少の脚色はあっていいと思うのだけれど、この本に登場する物語はどれも赤裸々というか飾り気なくそのまんまな感じがして、一喜一憂、どちらかというと「あーあ」と思ってしまうところがあるのだけれど(異性だからそう感じてしまうのかもしれないけれど)、リアルな感じが好感持てる。

個人的には古本屋を手伝うことになる「そして私は番をする」と、ラブホを経営する母子の「いろいろあって、おもしろい?」が好きだなー。

あっさり楽しく読める本だった。

三浦しをん – 風が強く吹いている


たぶんはじめての三浦さん。装丁の絵からもわかるようにランナーのお話。もうちょっとちゃんというと箱根駅伝のお話。才能あったのに怪我であまり走れなくなったさる大学の陸上部の男が才能に恵まれた男と出会い、仲間を集めて箱根駅伝にトライするお話。毎年正月2、3日に開催される箱根駅伝は、関西の人間にとっては遠い場所のことだし、陸上のこともぜんぜん知らないけれど、テレビ放映される姿を毎年見ながら素敵で、いったいどんな世界なのか知りたくもあるし、何よりランナーたちが美しく感動的。だからわくわくしながらページをめくる。

絵に描いたようなボロ下宿とそこに住まう個性豊かな男たち。彼らはみなこの下宿に長く住む灰二が連れてきたものたちなのだが、満室まであと1人。それで10人。ある日銭湯帰りの彼の前を万引きして駆け去る一人の姿。その見事な走りっぷりに見惚れて着いて行った、それが走(かける)との出会いだった・・・。

駅伝といえばシード権を与えられた10校(前年10位以内に入った)と、そして予選で勝ちあがった10校の限られた20校しか出られない激戦であり、その予選もすごく厳しく、選ばれた20チームだけがああやって駅伝を走っているわけであり、そのチームも10人だけ。きっと常連校と呼ばれる大学のチームならばチーム内での競争も熾烈だろう。だからより選ばれた人間だけがあそこを走ってる。そんな中素人同然の人間(でも灰二が見込んだ人間たち)たちの寄せ集めチームが予選を勝ち抜き、本戦で襷をつなぎ続けられるのか?駅伝を毎年楽しみに見てるだけに、その知らない場所からはじまる物語はわくわくして仕方ない。

個人的にはやはり往路の5区が大好き。何よりも厳しい上り坂でこの数年繰り広げられるデッドヒートとゴールの芦ノ湖の美しさ、そこに死力を尽くしてたどり着くランナーたち。ぬくぬくこたつで見てる分にはすごく楽しいけれど、もしかすると彼らはもっと美しい世界を体験しているのかも。走っているものだけが感じられる世界。そんなものを垣間見させてくれるこの物語はとてもいい。

梶尾真治 – 黄泉がえり

初めて読む梶尾さん。タイトルから勝手に想像して怖そうな話なんかなぁと思ったり、先日浅田さんの「椿山課長の7日間」を読んだのもあってまた誰かが黄泉の国から帰ってくる話かなぁ、なんて思いながらページをめくる。ある日亡くなったはずの人が帰ってくる。それが一人や二人ではなく無数に・・・・。

いきなり文頭でSFチックな表現ではじまるので「???」と思ってしまったけれど、これが伏線として要所要所に挟まれて次第に意味が明らかになっていく。そして拡大していく黄泉がえりの現象。一度亡くなった人が復活する(一般にはありえないこと)ということで巻き起こる騒動や悲喜こもごも(やっぱり亡くなった人がある日突然帰ってきても、すんなり受け入れられてしまうものなのか?)があったりしてこのあたりの描写が面白い。そしてこれらの現象を「なぜ?」と考えるところから謎解きがはじまる。

作者の地元だという熊本というローカル地が舞台なのも好感。最近伊坂さんが好きで仙台が舞台っていうことが気に入ってるからかも。なんでも話が東京やら大阪みたいな大都会だとおもしろくないし、あまりなじみのない土地が舞台となってそんな街が紹介されていくのも旅をしているようで楽しいもの(テレビドラマでよくある湯けむりうんぬんみたいに観光地紹介見て喜んでるようなものかもしれないけどー)。

よみがえる人は全員ではなくて限られた人。その人たちが何故選ばれてよみがえったのか?彼らが生きている人たちに与えるものとは?そしてところどころに挟まれる謎の描写は?物語がうまく構成されててじわりじわりと進むのがいい感じ。よみがえった人たち語ること、宿る力、遺していくもの、どれもが奇蹟的で美しい。

梶尾さんの他の本も読んでみたいなー。

石田衣良 – ドラゴン・ティアーズ-龍涙(池袋ウエストゲートパーク IX)


もうこのシリーズも9作目。すごいなぁ。相変わらず時事ネタをうまく取り入れて作品に生かしている。今回はリーマンショックなどの経済不況が原因のひとつとなった貧困、社会の底辺のまだ下の世界のお話が4つ。

テレビで流行り華やかなエステの世界の裏の顔を描く「キャッチャー・オン・ザ・目白通り」、街の片隅をねぐらにしている底辺労働者の実態「家なき者のパレード」、借金が生む悲劇「出会い系サンタクロース」、じわりじわりと広がる中国系社会の表と裏「ドラゴン・ティアーズ – 龍涙」、どれも実際にある話(だろうな)で、大きな視野から描かれがちだけれど、石田さんはあくまでマコトの目と耳、そして池袋という街を通して語る。だから目線が低い。なので大きすぎて実感できない社会の波が、実感できる大きさの出来事として入ってくる。

実際コンビニや最近はやりの安売り店、百均ショップなどなどモノやサービスそんなものたちがどんどんどんどん安くなっていっている。表面的にはうれしい話のように思えるが、ちょっと考えたら恐ろしい話じゃないだろうか?たとえば300円を切るような値段でつくられるお弁当。どう考えても自分じゃ作れない。たくさんつくって販売したっていったいどこに利益が?と思ってしまう。食べ物だけじゃない、さまざまなモノが(きっとどこかで誰かが作ったはず)安くなってる。ということは原価が異常に安いということだ。以前は”安かろう悪かろう”といって安さは品質の悪さ、というのが当たり前な考え方だったが、いまは悪くないものでもなんでも安い、安すぎる。サービスや労働についても同じだ。

ということは僕たちが想像する以上に社会には底辺のさらに下に底辺があり、そこでまたうごめく人々がいるということ。そんな人たちの上にぼくたちは暮らしているが、彼らの姿はまったく見えない。実際にいるはずなのに。そしてそこに巣食う魔物たち。それらも含めてぼくたちは立っている。そんなことを無視していたわけでも忘れていたわけでもなく、知らずにいままですごしてきていた。いや、考えたり知ろうとすればわかることだったのかもしれないが、それを怠ってきたのかもしれない。

安ければいい、楽だったらいい、それは魅力的な言葉だけれど、なにか形や得るものがあるのならば、それを生み出したひとがいる、ということを考え、それを通して透けて見える、そばにあるのに知らない世界のことをもっと考えたほうがいいんだろうな。

文集文庫 2011

有川浩 – 空の中

有川さんの自衛隊3部作と呼ばれる作品の1作目。ずいぶん前にこのシリーズの「塩の街」を読んで、そのアイデアというか、本人曰く「自衛隊ラブコメ」という新ジャンル(笑)に非常に興味を覚えて一気に読んでとても面白かったのだけれど、それからずいぶん経ってから、やっと手に取った。

タイトルから想像できるように、今回は航空自衛隊のお話。あるときようやくたどり着いた”純国産ジェット機”の試験飛行中に期待が爆発。そしてそれを調査していた自衛隊機も謎の爆発・・・・。純国産ジェット機の命運は?(これ想像上のお話じゃなくて、結構リアルに今後どうなるのか気になる、というかなんとかなってほしい話題)事故の原因は?と真相究明に乗り出す大手重工メーカーの下っ端設計社員と、男勝りなのにずいぶんかわいい(らしい)女性パイロット – ああ、この時点でもうメロメロ(笑)。

同時並行して、高知の海で謎の生物?を拾う少年。その少年を見守る同級生の少女。このクラゲのような、そして乾かしてみたら円盤のような謎の生物が物語の鍵を握る・・・

で、ネタばれになっていくけれど、この事故の原因が人類創生よりずっと以前からこの星にいた(あった?)すごく巨大な円盤型の生物(といっていいのかわからないような、カテゴライズ不可能なUMA)なのだけれど、物語が社員とパイロットそして少年少女の恋や葛藤などのドラマがメカメカしい物語の合間にさわやかに流れていく中で、なぜかこの不思議な生物にえらく興味が湧いてしまって、読み進むにつれて気付いたらこの謎の生物に感情移入してしまっていたという(笑)普通主人公たちの誰かになりそうなのに、どうしてかなぁ(笑)。物語上でさえなかなか表現困難な未知の生物の描写や設定やそのコンタクトの仕方の工夫なんかを読んでいるうちに実際こんなものがいたらどうなるのかなぁなんてぼんやり考えていたら、夢中になっていた、というような。

有川さんも書いていたけれど、出版や編集者とのすり合わせの中で一応少年少女向けという趣向で物語は少年少女が主人公になるように描かれているけれど、いやいや大人のあまりにもツンデレな恋もなかなか面白く、そこだけ抜き出したら本当にただのラブコメ。でもこれに自衛隊というメカメカしいものや、細かな専門的な描写が割り込んでくるもんだから、このギャップ感がたまならく、「塩の街」やら「クジラの彼」で感じたあのわくわくぞわぞわした感じをまた体感できてとても楽しい。

文庫版には後日談として「仁淀の神様」という短編が描かれている。その後の主人公たちがどうなっていったかを知ることができて、なんか後味がいい。自然、繋がっていく命、のびのびした空気。そんなものがやはりありがたい。SFの世界でも自然は自然なのだ。

角川文庫 2008

伊坂幸太郎 – オーデュポンの祈り


ちょっと時間がかかってしまったけれど読了。これまでに何冊か伊坂さんの作品を読んできて、その作品たちに前の作品の人物なんかが出てくるのを読むにつれ、「やっぱり一冊目から読むべきかな」と思って手にとった一冊目「オーデュポンの祈り」。「ゴールデンスランバー」から読み始めたので、このオーデュポン~の文体がちょっと今とは違う(今のほうがより構造が明確でいろいろはっきりしていると思う)ために、最初だいぶ戸惑ったのだが、我慢して読み進んでいくうちになれて、また違う感じの伊坂ワールドを楽しむことができた。

つい出来心でコンビニ強盗を働き捕まってしまう主人公伊藤。ちょっとしたきっかけで逃走するのだが、気づいてみると見知らぬ土地にいる。そこは誰も知らない島。現在社会から切り離された場所。変わった人間ばかりがいて、さらにはしゃべるカカシまでがいる・・・・。

ぼーっと読んでいると、ただただ主人公がよくわからない島でよくわからない人たちに会い、よくわからない会話を繰り返すだけの、焦点のちょっとだけずれたへんな物語にしか読めないのだけれど、ある事件をきっかけにそれまでのちょっとした会話、人のつながり、そんなものから歯車がかみ合っていって・・・すべてのことに因果があってつながっている、という見事に伊坂さんらしく物語をまとめあげていくところが、おおー、という感じなのだが、そのタイミングがすごく最後のほうなので、いったいどうなるのかわかんないと読みながら不安になる。表から見てる分にはちんぷんかんぷんな紋様が、裏から見たら見事に均整を取れて美しい紋様になっていた、のような。

解説で吉野仁さんが書いているようにこの作品で描かれるありえない世界に引き込まれる感覚=シュール(超現実的)な感覚がこの作品の最初の醍醐味であり、そして次々に謎が出てくるミステリー、最後までわからない「この島に欠けているもの」などなどがこの作品の魅力となっている。名探偵に関する考察もおもしろい。「名探偵は事件を解き明かすために存在する。しかし誰も救わない。名探偵がいるから事件は起こるのではないか」・・・これとカカシ優午がリンクしていく。今の社会への風刺だともとれる。

「この島に欠けているものはなにか」がわかったとき、思わず感嘆の声を上げそうになった。そう!そう、本では描けない(こともないか)けれど、いつもそこにあるはずのもの。そして伊坂さんがすごく大事にしているもの。そう!

この作品を皮切りにして、今まで読んだ物語やそれ以外の物語が生まれていったのか、伊坂さんと同じ時間に同じ空気吸って生きているんだ、まだこの人から生まれていない作品にまた出会うことができるのだと思うと、うれしくなってしまう。

新潮文庫 2003