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宮部みゆき

宮部みゆき – 東京下町殺人暮色

tokyoshitamachisatsujin

宮部さんのミステリーもの。東京の海辺に近い下町。昔は本当に下町だったけれど最近はウォーターフロントだ再開発だなんだで他所から流入してくる人も少なくない。そんな街にくらす中学生の順。彼の父は刑事でなかなか家には帰ってこない。そんなせいで母親は出て行ったままだ。

そんな下町であるときから町内で殺人が起こっているという噂が流れる。ほどなく川や公園でバラバラ死体が。そして警察には声明文が。そんななか順の家にも声明文が。なぜか。警察の捜査にも関らず犯人は一向に尻尾を掴ませない。順たちは町内で噂の家を訪ねてみることに。そこは画壇では非常に有名なある人物の別宅だった。

猟奇的なのか、それを装っているのか、愉快犯なのかそれを装っているのか、まったく犯人像がつかめないまま物語はすすみ、怪しそうな人物がでてきては消え、複雑な人間関係を見せてきたあたりで、からくりの逆転が始まるような感じ、素直におもしろいミステリーだなと思った。スピード感もあっていいし。時代を超えた因果が絡んでるあたりもうまい設定で描いてるなーと思ったり。

オドロオドロしそうだったけれど、なんだか読後感は爽やかな感じのする作品だった。

光文社文庫 1994

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宮部みゆき – 我らが隣人の犯罪

宮部さんを読むのは久しぶりのような気がする。最近大作が多いので、一度手に取るとなかなか終わらない(それが楽しいのだけれど)ので読むのに気合いるなーというのが主な理由なのだけれど、彼女の作品はどれを読んでも面白いので長さはあんまり関係ないのだけれど、このところはさささっと短いのを読みたい気分なので。

これは割と初期に出版された短編集。解説の北村さんが絶賛しているけれど、たしかにこれは短編だけれど長編なみの(重いという意味ではなく)要素がつまった作品だと思う。ほんと短いお話が5つ、表題作でもある隣に住む女性が飼う犬の鳴き声がうるさくてノイローゼになりそうな一家がその犬を誘拐する計画を立てる「我らが隣人の犯罪」、両親の留守中にそこの父親の子供だという幼子を連れて家に乗り込んでくる若い女「この子誰の子」、ある小学生のクラスが夏の自由研究にサボテンの花の研究を申し出たのだがそのクラス一同の奇怪な行動の理由を描く「サボテンの花」、めでたい席のめでたいはずの電報がその陰に隠された犯罪を暴く「祝・殺人」、そしてある困難で奇怪な理由により完全自殺を望む男「気分は自殺志願」。

どれも短いのにその話のなかにミステリーやトリックがあり、人間模様があり、時間の経過があり、奥行きがどれもあって短編を読んでいるような気にはならずにどっぷりその物語たちにのめり込んでしまえる。

表題作もいいけれど、やっぱり、最初はなんだこれ?とおもうけれど最後にホロリとさせられてしまう「この子誰の子」と、やはりこういうことあったら本当に素敵だろうなあとおもう「サボテンの花」(財津和夫の歌とは関係ないけれど、タイトル同じってだけでちょっと惹かれるw)が良かった。

宮部さんのなかでは軽い目で、洒落てる感じする。ぜひ読んでみてほしい作品。

文集文庫 1993

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宮部みゆき – パーフェクト・ブルー


宮部さんの本を読むのも久しぶり。最近のは長編が多いので読むのに時間がかかってしまう(当たり前か)のでちょっと避け気味になっていたのだけれど、たまには読みたいなーと思って手に取った本。何も考えずに手に取ったが、実は彼女の長編デビュー作だった。設定がおもしろくて元警察犬のマサが主人公。物語は彼の視点から描かれるのだけれど、途中から犬が主人公であることを忘れてしまうぐらい、スムーズに進む(例えば犬だから人との意思疎通が難しく、その説明があったりして話が横道にそれる、というようなことがない)ので楽しく読めた。

マサは出会いあって蓮見探偵事務所の用心棒として飼われている。そこに持ち込まれた少年・進也を連れ戻してくれという依頼に事務所の調査員・加代子と向かうのだが、彼を無事連れ帰る途中で不可解な事件に出くわす。それがすべての始まりだった。彼の兄で高校野球界のスーパースター・克也が焼き殺された。野球部内の確執か、それとも高校野球界の闇か、それとも。。。

謎がウエハースのように何層にもなってて、表面的に解決しても(物語上でも焼死事件はたやすく解決する)その裏にまた違う顔を潜めている、という構成がうまくできている。どんでん返しみたいなことにはならないんだけれど、それでも最後まで事件の全体像が見えず、それでも最後まで飽きずに読めるのもさすがという感じ。最後ちょっと説明おおくなっちゃうけどね。でも宮部さん初長編という感じはまったくせずに、すごくこなれた感じで素晴らしいとおもう。

人間の闇的を描くことはあまりなく、もうすこし軽い感じというか、徹底的な悪がなくてちょっとほっとした。そういうドロドロしたところがでてくるとこんな長さでは書けないだろうしなぁ。少年たちが主人公なので、爽やかな感じがするようにしたのかもね。

創元推理文庫 1992

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宮部みゆき – 返事はいらない

6編からなる短編集。宮部さんの作品はいつもすこしクールな中に人の暖かさというかやさしさみたいなものが含まれていて、寒々しいことにならなくていい。それがシリアスな作品であっても。短編集ということでひとつひとつのお話はそう長くはないのだけれど、それも骨がある感じがする。

1994年の作品なので、いろいろ時代背景は古く、表題作である「返事はいらない」のキャッシュカードの話なんかは古いしくみ(でもいまでもそんなとこあるかもだが)だし、バブリーな感じのお店がでてきたり、東京がいまの感じとは違うキラキラさ加減で、その中にいるひとたちきらびやかな生活とそれにより浮き彫りになるさみしさ、などなどちょっと前の感じがするけれど、そこに描かれる人間の感じはかわってない。宮部さんぽいかなと。最後の「私はついてない」ってのはあるあるって感じでおもしろかったな。

「返事はいらない」「ドルネシアにようこそ」「言わずにおいて」「聞こえていますか」「裏切らないで」「私はついてない」って、なんかどれも中島みゆきの曲のタイトルみたい。

新潮文庫 1994

宮部みゆき – 天狗風

以前読んだおなじ宮部さんの「震える岩」の続編。岡っ引きの六蔵の妹お初がその類い稀なる能力で難事件に立ち向かう。

今回は神隠し。若い娘の突然の謎の失踪、お初を襲う謎の風、吹き矢、しゃべる猫、、、、事件を追うと違うものに出会い、なかなか核心に迫っていかない。そこでやきもきしてしまうのだけれど、すべてはある一点に絡んでおり、やがて見えてくる一連の事件の正体は・・・。

どっぷりオカルト的な話になっているけれど、やはりそこも人の裏側というか人間が生み出す魔物として描かれる。あまり時代劇的要素はなくて現代劇のように読めてしまうのは宮部さんの筆だからか。それぞれの六蔵や右京之助などキャラクターもちょっとずつはっきりしてきたし、シリーズ物になっていくのかなぁ(知らない)。

猫としゃべれるという部分に異様に憧れてしまう(笑)

宮部みゆき – ブレイブ・ストーリー

映画にもなったし、話題になっていたので読みたかったのだけれど、なかなかチャンスなく読んでなかったが、ついに手元にやってきたので読んだ。本屋さん(といっても古本専門ですが・・・)にいったりしてもずっと出会えなくても、ふと知人がくれたりする(こういう本好きなんだろうなーと想像して)。本との出会いは不思議。

突然の離婚騒動に巻き込まれ、不幸な自分そして嘆く母をみているうちに、この状況をなんとかしたい、できれば何も無かったときへと時間を巻き戻したいと強く願う。そんな小学生ワタルの前に不思議な扉が開く。それは現世を反映して存在する”幻界”へと続く扉だった。扉は10年に一度しか開かない、そしてその扉の中に飛び込めばひとつだけ願いを叶えることができるらしい・・・・。そしてワタルはその扉に足を踏み入れる。

幻界はまるでワタルが大好きなPRGの世界のように、剣と魔法があり、さまざまな種族が暮らし、モンスターやドラゴンの生息する世界。その世界でワタルは勇者となってその”現世で叶えられるひとつだけの願い”を叶えてもらうために、5つの宝玉を探し、どこかにあるという運命の塔に住む運命の女神に会いに行くという冒険に出る。苦難の旅がつづき何度もくじけそうになるが、水人族のキ・キーマとネ族のミーナと共に冒険を続けていく・・・・。

上・中・下と3冊だしちょっと厚いめなので時間かかるかなと思ったけれど、面白かったのもあってあっという間に読み終えてしまった。こういうヒロイックファンタジーものというか冒険ものが好きなので(ゆえにRPGも好き)。ただグインを読みなれたものとしては幻界の描き方とか世界観がもっと欲しかったなあというところ。まぶたを閉じてもあまり映像として浮かんでこない。やはり形こそ冒険ものになっているけれど、宮部さんの描きたかった部分は違うところにあるからかな。

ワタルが出会う苦難の数々、行く先々で出会うヒトたちや街の感じなどからワタルが感じること、得られた経験、そのときは何を意味するかわからなくても、あとになって腑に落ちること。そういったものを通して、自分はどうしたいのか/どうするべきなのか、本当は自分は何を望んでいるのか、のようなことを悩むワタル。それは自分を見つめていくこと。こういうところはすこし「星の王子様」に似ているかも。勇気はそこにある。

どういう対象向けに書いたのかわからないけれど、子ども向けならなるほどなーで大人に向けては少々物足りなさを感じる。それは冒険ものとしてでもあるし、普通にフィクションとしてでも。宮部さんのほかのミステリーなどに比べるとちょっと薄い感じがしてしまう。まぁこの長さだと難しいからかも。でも子供向けなら納得できるかな。でもこういうシリーズも書いていってほしいなぁ。

角川文庫 2006

宮部みゆき – 震える岩

宮部さんの歴史もの。赤穂浪士がネタ。ふつうのひとには見えないものが見え、聴こえるという不思議な力をもつお初が、ふとしたことから関わった「死人憑き」(死んだ人がよみがえる)の事件を発端にそこから数々の謎を呼び寄せる。そしてその先には、赤穂浪士討ち入り事件の陰が・・・・

時代物でちゃんとその時代の空気感をかもし出しているのに古い感じがしないのは、宮部さんさすがという感じか。逆にいうと車とか電気とかそんなもの出てこないのに、現代劇風の感触で読めるので、時代物といってもへんなひっかかりがなくていい。

武士のあるべき姿として日本人が好み、褒め称える、忠臣蔵として描かれる赤穂浪士の討ち入り事件だけれど、あだ討ちのことだけクローズアップするとそうだけれど、あの平和な時代(1703年だそう。江戸幕府がひらかれてから100年後、5代将軍綱吉のころ)にあっては、武士が武士である意味、怖さというものが人々の心から忘れられていきつつあったご時世に、武士側からいえば武士の存在の意義を世に示した事柄、そうでない人間たちには武士の恐ろしさをおもいださせた出来事だったよう。

だから、もしかしたら、純粋に吉良家と浅野家の間でのあだ討ち、ということではなく、武士の世界がそういうことが起こるように仕向けた、また、その立場に立たされた、吉良も大石蔵之助および赤穂浪士たちも、世間に対してそうせざるを得なかったのではないか(そう追い込まれた)、という、すごくおもしろい方向からの見方をしていて、なるほどな、とおもった。悲しい話かもしれないけれど、当時は必要に迫られ起こったことだったのかもしれない。

講談社文庫 1997

宮部みゆき – 理由

かなり分厚いし、描写が事細かなので結構読むのに時間がかかってしまった。途中でへこたれそうになったけれど、半分を超えたらスピードアップしていき、結局終わるのが惜しい感じまでしてしまった。

ある超高層マンションで起きた一家4人殺害事件をルポ形式で描いている。本当にあった事件を、事件の後に追ったように読めるのが新鮮(事件とともに時間的推移するパターンのほうが多いと思う)。なので、その事件の時間軸の中にいるようにも読めるし、すべてが終わった後のレポートのようでもあるし、微妙に視点を変えているので長くても飽きることがない。

ひとつの事件(事柄)にいったいどれぐらい多くの人間が関係しているのか。それを丁寧に紐解くと、ちょっとしたことでも実にたくさんの人間が関わっているものだ。しかも関わっている人たちは近くにいたとしてもぜんぜん知らない関係であったりもする。なので実際のものごとを隅まで調べきるというのは実に難しいことなのだろう。そういう記者になってしまったかのような錯覚まで覚える。

この物語では一家に見えた人間たちが実は他人同士であり、その家の住人ではない人間たちであり、なぜ彼らが死ななければならなかったのか、一体どうやって死んだのか、ということが物語の入り口のわかり良さ(というか単純に見える加減)から想像できないぐらい根が深く横に広がっていて、それが物語を複雑に、よりリアルに見せている。結局この事件で何か得た人はいたのか?長い長い物語をたどっていくと、その「理由」が少し垣間見える。でも大きな事件なのにその中心点はあいまいで、少しずつの動機が集まって重なって出来上がっている。

家族とは何か、暮らしていくとは何か、ずんと鈍い空気が読後を覆う。

朝日文庫 2002

宮部みゆき – 地下街の雨

7つの短編集。このところ短編集ばっかり読んでるな。やっぱりさすが宮部さんというか、どの話も短い中で「おっ」と思うような展開と「へええ」と思えるような素敵なオチまできっちりまとまっていて、短編とは思えない読み応えがある。

地下には雨は降らない、でもそんなタイトルの矛盾を人間関係のどんでん返しでうまく描いた表題作「地下街の雨」。いかにもありそうな怖いお話「決して見えない」。仲のよかった家族の心中、見ている人は見ている「不文律」。こわーい電話の精「混線」。死んだ姉の誰も知らなかった秘密「勝ち逃げ」。伝染する不意の殺人「ムクロバラ」。謎の宇宙人?「さよなら、キリハラさん」。いやー、どれもおもしろいなぁ。

やはり「地下街の雨」がドキドキするし素敵だし、なんか怖いけれどちょっと笑える「混線」、そしてなんだかほろりとする「さよなら、キリハラさん」が好きかな。こうやってみると7つのお話もうまい順番に起承転結じゃないけれど、山あり谷あり右行って左行ってと飽きないように並んでるなぁと感心。

素直に面白い。

集英社文庫 1998

宮部みゆき – 火車

結婚を目前にあるちょっとしたことから失踪してしまう女性を探していくうちに、彼女のもつ様々な謎が浮き上がってくる。それは彼女が本当は違う人物であって、戸籍からなにからその人物になりかわっているの可能性がある、という仮定に基づく推理だった。彼女はなぜそんなことが必要だったのか?

結構大作で読むのが大変かな?ともおもったけれど、構成とネタがしっかりしているので、前半の謎が謎をよんでいく展開から、後半徐々に謎があきらかになり、その背景にある社会の暗い一面が浮き彫りになっていくにつれ、読むスピードもはやくなり、そんなにタフだとは感じなかった。

この本では宮部さんはわりと人間の暗い部分やら、人の悲しい部分を描くというよりは、どちらかというと、カード社会、金のシステム、についての警鐘を発したかったのだろうか。まんがの「なにわ金融道」を読んでてもでてくるのだが、ほんのちょっとした借金が雪だるま式に大きくなってその人の人生を破壊してしまう、という例は枚挙にいとまがない。それでも昔は貸し借りがはっきりしていたし(人対人で行われていた)、返済能力のないものには金は貸さなかった。でも現代のカード社会は、クレジットやキャッシングが氾濫し、利用している者はそれが単なる借金であることを忘れ、貸す方も無尽蔵にまわすものだから、ふとしたきっかけで借金地獄におち、あとは絵に描いたように「カタにはめられてしまう」。そんな入り口があちこちにあるのに、人はあまり気づいていない。しかしこのカード社会ももうすでにこの国の一大産業になってしまっており、いまさら後戻りすることは不可能なのもまた事実。

借金をつくって自ら破産するような人間は、所詮その人間がわるいのだ。。。普通ならそう思ってしまうけれど、果たしてそうなのか?それは弱い人間だからなのか?それとももっと他の理由があるのか?などなどいろいろ考えさせられる題材。さすが宮部さん。

謎解きのときにやたらとたくさんのヒントを与える人物がでてくるあたりはちょっと辟易したりもしたけれど、ま、実際の話だったとすると、警察やらその他事件を解決していくような過程においてはいろんな人/物から少しずつヒントを得て、それをパズルのように組み合わせていくんだろうから、そんなもんなんだろな、と。

新潮文庫 2008

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