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百田尚樹

百田尚樹 – モンスター

久々に百田さんの作品。世間でいろいろ騒ぎを起こしていたりもするけれど、その真意や賛否についてはここではおいておいて、純粋に作品を楽しみたい。

田舎の町にうまれ、悲しくも持って生まれたあまりの醜さにバケモノ扱いされ、それでも強く生きていこうとする主人公・和子。ある日思い悩んだ末に起こした事件をきっかけに彼女は家族からも縁を切られ、町を追われる。その後もひっそりとまじめに暮らす彼女であったが、ある日目の整形をしたことをきっかけに自身の容貌を作り変えることに目覚める。

莫大な金額をかけ完璧な美人に生まれ変わった彼女(名前も未帆にした)はそれまでとは全く違った人生を歩めるようになる。やがて彼女の心によみがえってきたのは、若いときに起こした事件の原因となった男への情熱だった。そこで彼女は長い年月ぶりに生まれ故郷に帰り瀟洒なレストランを開いたのだった。。。。

結構分厚い作品だけれど、これもスピード感あってあっという間に読めた。整形して美人に生まれ変わった女が昔の関係者に復讐する、というパターンの話なら山ほどあるだろうけれど、これはだいぶテイストが違うような。それは最後まで読んでのお楽しみ。モンスターというタイトルはわりとそのまんまだけれど。

面白いなーと思ったのは人の顔に関すること。人の印象というのは最初に見たときに8割ほど決まってしまうという説もあるけれど、顔のパーツがどういう風に配置されているかで随分印象が違うそう。それらが(物語上では)整形の話に付随するように解説されてておもしろい。それに表情や化粧、髪型などなど。男性はあまり頓着しないけれど、女性が自分を魅力的にみせたり、印象的にしたりするには、持って生まれたものもあるけれど、化粧などをつかても随分変えられるよう。怖いような、いいような。

いまは昔のように絶世の美女(もしくは絶対的な美女)というのはなく、個性的な美人が多いらしい。均整のとれた顔よりも、少し偏った、でも魅力的なパーツがあるひとが好まれる傾向にあるとか。ぼくたちにとって随分違うようにみえる顔でも、実は計測すると数ミリも違わないらしい、目が大きいとか、口角とかとか。不思議なもの。

幻冬舎文庫 2012

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百田尚樹 – 輝く夜

クリスマス・イブをひとり寂しく過ごすことになった女性の物語5つ。どれも短編ながらぜんぜん違うシチュエーション、人物像なんかで描いていて、ちっとも飽きずに、でも短いからといって単純な内容でもなく、しっとりと読ませてくれた。さすが物語を生み出すのうまいなぁ。

願い事が3つ叶うという「魔法の万年筆」、偶然拾ったとても見てくれの悪い猫は実は…「猫」、若くして大病を患ってしまいせめて人並みの幸せを感じてみたかったと願う女性「ケーキ」、旅先でのちょっとしたウソが思わぬ遠回りを招く「タクシー」、度重なる不幸の痛手からあてどなく街を歩いた先で立ち寄った教会「サンタクロース」。どの話もおもしろかったけれど、どれかといえば「ケーキ」。主人公のささやかな幸せが走馬灯のようにまぶたのうらをめぐっていく気がする。

どのお話もうまくまとまってて、いい感じ。逆に言うと綺麗にまとまりすぎている気もするけれど。テレビぽいというか。しかし、まあでも今時そんなにクリスマス近辺が昔ほど特別感はないような気がするのだけれど、これは歳のせいかな。でもほっこりした。

講談社文庫 2010

百田尚樹 – ボックス!

ちょっと前に読んだ「永遠の0」がすごく面白かったので百田さんのほかの作品を、と思っていたら目に付いたこの本。評判もよかったので。

高校ボクシングのお話。あんまりボクシングには興味ないけれど、ボクシングの大まかだけれど丁寧な説明や、プロとアマチュアの違いなんかをうまく視点を変えながら(一人称になる登場人物が3人いて、それらの立場からボクシングをみるため、登場人物の目を通して読者がうまく知識を得られるよう配慮してある。この辺は解説の北上さんがうまく説明してくれてた)描いていってるので、ボクシングをまったく知らなくても、物語にすっとはいっていけるし、ストーリーはあくまでもシンプル、ストレートにしている分、感動も素直に湧いてくる。

2人の少年と1人の女性教師の青春期みたいな感じだけれど、天才的な鏑矢少年にはまぶしさを感じるし、努力の人木樽少年には期待と応援を、そしてきっと美しいんだろう耀子先生は少し大人だけれど少女のようで・・・分かりやすすぎるほど明快なのに、でもちっとも飽きもせずに上下巻一気読みしてしまえるのは、うまいキャラの活かせ方と話の運び方、そしてボクシングを知っていける魅力をうまく織り交ぜたからだと思う。なんか木樽少年にあわせて自分も強くなったような気もしちゃうし(笑)

ラストがいわゆるハリウッド映画みたいに単純じゃなくていいし、それだけじゃなくてエピローグまでつけて読後に爽快感まで味わわせてくれて、憎いなーという感じ。素敵な青春小節でした。

ひとつ残念なのは章立てになっていて、事前にその章ごとのタイトルをみちゃうと(もちろん目次になってるけど)だいたいのストーリーが読めちゃうことかな。でも全然かまわないけれど。予想通りの進み方でもそれを上回って内容楽しいから。

太田出版 2010

百田尚樹 – 永遠の0

初めて読む百田さん。プロフィールを読むと2006年にこの本を出版して作家デビューしたそうだが、関西老舗番組「探偵!ナイトスクープ」の放送作家をされてたとかで勝手な好感を抱いたりして。帯をみると、最高に面白い本大賞(文庫・文芸部門)で1位をとったり、児玉清氏が号泣したとか書いたりしてる。たしかにものすごく面白いし、とても感動する物語だけれど、僕には面白さや感動よりももっと哀しさや怒り、憤り、そして敬意、感謝の念を抱く物語だった。

主人公健太郎はライター志望の姉の依頼と興味もあって自身の祖父の過去を調べることになる。祖父は60年前の太平洋戦争で特攻隊にいて、そしてそこで戦死したらしい・・・・。同じ隊にいたひとや戦地にいたひとを訪ね歩く彼ら。彼らの口から語られる祖父は臆病者であったり、天才だと言われたり、さまざまな姿。しかし共通して言われるのは祖父が「死にたくない」「生きて帰りたい」と言っていたこと。なのに彼は特攻にいった。それは何故だったか?

祖父の姿を紐解いていくのと同時に、太平洋戦争が時系列に語られていく。日中戦からいよいよ対米開戦となり、いかに日本軍(ここでは主に海軍について語られる)が戦っていったのか。戦場はどんなところだったのか。真珠湾攻撃、ミッドウェー海戦、ガダルカナル攻防、レイテ海戦、沖縄戦、と言葉だけでは知っている戦争を祖父の同僚であったパイロット(や、整備員、訓練生)たちの視点から語られるとき、この戦争が教科書的なものではなく、人と人とが生身で戦っていたこと、それらがいかに大本営の思惑や作戦によって左右されたかということ、そんなことが肌に感じられるような気がする。理屈としては分かっていてもこんな風に感じたことはなかった。

開戦当初の日本軍パイロットたちは優秀で、戦いの中でもおおらかに生きていたこと。開戦時にあまりにも優秀すぎた零戦ゆえの悲劇。敗戦色が濃くなっていく中で戦うことの意味を模索する彼ら。そして特攻へと向かう彼らの心境・・・・彼らのいろんな姿を通して僕たちの先祖がどんな気持ちでいたのか、想像を絶するけれど、その入り口は見せてくれる。

戦争が終わってだいぶたってから生まれた僕たちは歴史の中のものとしてしかこの戦争をしらない。でもたかだか60数年前のことだ。この本に描いてある世界を想像してみると、いまからは全く考えられない世界だ。でもこれらは事実であり、もっともっと知っておかねばならないこと。なぜなら、この戦争の犠牲の上に僕たちは生きているからだ。この物語で描かれるようなパイロットひとりひとりの屍の上に立っているのだ。それをもっともっと感じないといけないんじゃないかな。戦争の善し悪し/結果とは関係なく。

そして物語のなかで描かれる海軍士官たちのとった行動/作戦の数々が目が点になることばかり。少なくない数の作戦が失敗したそうだが、その要因が見切りのあまさ、弱腰、そして昇進競争のための点数制度などにあったらしい。自分たちは遠い場所で現実をみない作戦をつくり、兵は消耗品と考える、現場でも実際の作戦の成果よりも、点数を稼ぐためだけの指令、そして有利な状態からの撤退等々。読んでいるといまの社会と同じような構図になっているような気がしてならない。利権や派閥、出世欲のための争いばかりで、本当に必要な戦いをなにもできない行政や官僚や富めるものたち、そして彼らの陰で飢える民。戦争が終わって変わったはずなのに何も変わってないように見えるのはなぜだろう。

ほんとに太平洋戦争についてあまりにも知らなさすぎるのに愕然とする。学校教育も古い時代のことはともかくとして19世紀以降の近代史をもっと教えるべきなんじゃないかな(いまってどうなんだろ)。この本を読んでたくさんのことに興味をもった。自分がいまこうやって生きていることを噛み締めるためにも少し前にあったことをもっと知りたいと思う。

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