回想(これが物語になってる)していく視点で描かれる、ある夫婦・カップルの愛の物語。
話の筋書きとしても、映画の進み方としても、言ってしまえば特に特別なこともないような、ちょっと頑固な男とまっすぐな性格の女の話。そのカップルが一夏の恋に落ちて・・・別れて・・そして出会って、と何ということもないストーリーなのだが。話の昇華の仕方も見ているうちにわかってくるのだが。
この映画が普通にやっぱり2人は結ばれてハッピーエンド!とかだったらぜんぜん面白くないのだが、いや、しかし。映画のラスト5分ぐらいが、すごくすごくよかった。ほんまよかった。最後の最後で涙がちょちょぎれてしまった。
認知症の妻に記憶を取り戻させたくて、何度も読み聞かせるその回想録。ある瞬間、妻は記憶を取り戻し、夫を思い出すが、すぐに戻っていってしまう。その悲哀、諦め、でも消せない小さな希望、そういうものが画面に、俳優の顔にあふれてくる。以前ならひとつの物語としてしか捉えられなかったような話だけど、実際の年老いた両親のことを思い、また自分の遠いのか遠くないのか、そんな将来を思いやるとき、このあまりのせつなさが心を突き破ってきてしまう。「この映画のこのシーンのような場面に出くわしたら、自分は何を思うのだろう」そんな気持ちばかりになってしまう。
そして、ある意味、究極の幸せな死に方、かもしれない。思い出すだけで、泣いてしまうな・・・