the longest friday

 

2011.3.11

きっといままでで一番長い金曜日だった。

誰もが忘れ得ない、そんな一日だった。

あれから2年。

それぞれの人にそれぞれの、同じ長さの月日が流れていった。

でも、いまもなお被災地に暮らす人たち、

やむなくそこから離れたひとたち。

僕らとかれらの上に降り積もったものは、どれぐらい差があるだろうか。

差、という言葉で表すべきことではないかもしれないけれど。

 

 

結局何もできなかった。

いや、してこなかった。

僕も含め、そういう思いを持つひとはたくさんいると思う。

時間的なこと、物理的なこと、

その他にも仕方ないことがあって、と、

いいわけしたくなることもあるだろう。

 

でもそれを気に病むことはきっと、ない。

きっと手を差し延べるときがやってくる。

だってあの金曜日は今なお続いているんだから。

 

阪神の震災からも、もう18年。

あの日々は忘れない、忘れられたくない。

何も大きな災害だけじゃない、

遠い国々のことは難しいかもれしれないけれど、

この国で起こった身近なことなら、

きっとそのこと、その渦中にあった/ある人たちのことを想うことはできる。

一番さみしいのは、忘れられること。

 

 

だから黙って今日は心を差し延べる。

言葉にするとうまく伝わらないように感じるから。

思い出す。考える。想像してみる。

ちいさなことだけれど、とても大切なことだと思いませんか?

2013.3.11

to whole the world

清水さんと2011年ごろからFollow Club Recordという私的レーベルを始めてから2年ほどになり、いままでに再発も含めて6タイトル、そして今後も何タイトルか発売の予定があるのですが、これまでは国内だけの流通にとどまっていました。でも、ぼくや清水さんの作品をもっと世界の人に聴いてもらいたくて(とくに清水さんの作品たちはより好まれるのではないかと思っている)ようやく世界に向けて販売できるようになりました。

そしてもちろん物理的なCDアルバム自体もなのですが、iTunes Storeなどのデジタルコンテンツサービス(日本ではメジャーじゃないけれど結構たくさんあるらしい)を通しての配信/ダウンロード販売も行うことになりました。本当は音楽アルバムというものは含まれている曲たちはもちろん、曲の順番や曲の間の隙間、ジャケットを含めたアートワーク、そしてジャケットの手触りに至るまですべてにおいて心を込めて作ったものなので、簡易にバラ売りするということはそれらの大切な部分(音楽にとっては実質的ではないけれど作品としてはとても大切なものもの)をばっさり切り捨ててしまうような気がして、ためらう部分が大きかったのです。しかしやはりもっとたくさんの人に聴いてもらいたいという想いがあり(はたしてこの先どれだけまた新しいものを生み出せるかもわからないし)今回の運びとなったのでした。

今回始めるのは4作品です。新しいものはもう少し間を置いた方がいいのかなーとも思いますし。これによってまたいろんな人に触れられたら、と思います。ぜひよろしくお願いします。これらもレビューとかありますしね。

iTunes Store(Japan)のリンク先
Live at KOZAGAWA / E.D.F.
Takeshi plays Takeshi / Takeshi SHIMIZU
Take Take / Takeshi SHIMIZU & Tsutomu TAKEI
E.D.F. / E.D.F.

It had been about two years since a private label called Follow Club Record was begun around from 2011 with Mr. Shimizu, and 6 titles was built until now also including re-sale. And there continues to be a schedule of several titles.

It remained in domestic circulation until now. But I want the person in the world to hear the work of me or Mr. Shimizu more, and it can sell now towards the world at last (I think that especially Mr. Shimizu’s works will be liked more).

And although it is the physical CD album itself, distribution/download sale which lets digital-contents service of iTunes Store etc. pass will also be made. In all, it used to put and make the heart until a music album results in the turn of music, the time between music, artwork including a jacket, and a feel of a jacket as well as the music contained. Therefore, I felt that selling in separate parts simply omitted those important portions drastically, and I hesitated very much. However, I made our music the thing which it considers, and it excels and is tried this time of wanting more persons to hear it.

It is four works that begin service this time. If it is touched by persons various again by this is considered. I need your help well by all means. Thank you.

伊坂幸太郎 – グラスホッパー


やっぱり伊坂さんの作品はいい。読んでいて落ち着く。この落ち着く感じはなんなのかと考えるんだけれど、きっと「同年代だから」という単純な理由もあるんじゃないかと思っている。同じ言葉を使っていたとしても近い年齢だと言外に伝わることってある、あんな感じかな、と。

このグラスホッパー。今まで読んだ伊坂作品の中でも極めて静か、というか、不穏な空気感、というか、いつものようなほっとさせる優しさのようなものを極力排して、厳しい感じ、切羽詰まった感じが漂っている。解説の杉江さんの言葉を借りれば「ハードボイルド」ということらしい。主人公となるのが3人の殺し屋(押し屋、自殺屋、そしてナイフを使う男)たちのお話なので、ひともたくさん死ぬし、それが結構残虐。なのに悲しい感じにならないのは、徹底的に文章が第三者的映像的な切り取り方をしているからかもしれない。本の中の人物たちにとっては主観的なのだが、読者にはすごく第三者的に見えるので、ダイレクトな恐怖はないけれど、あとからじんわりくるものはある。

断片的なシーンが時間的なマジックも手伝って徐々にピースがはまっていく感じ(といってもこの本は割と時系列に並んでいるので、同時並行的な感じだけれど)も気持ちいい。相変わらずうまいなぁと思う。3人とも魅力的だけれど個人的に好きなのは鯨かなぁ。そしてだれもが哲学的なことを口にするのも面白い。その中でも鯨はほんとストレートな感じに読めるんだけれど、どうだろうか。

また全体に重苦しい割には読後感がすっきりしているのも、不思議な感じ。

「グラスホッパー」はいわゆるバッタ。押し屋の言葉「どんな動物でも密集して暮らしていけば、種類が変わっていく。黒くなり、慌ただしくなり、凶暴になる。気づけば飛びバッタ、だ」「群集相は大移動をして、あちこちのものを食い散らかす。仲間の死骸だって食う。同じトノサマバッタでも緑のやつとは大違いだ。人間もそうだ」。まさにずっと思っていること、怖いなと思っていること、そのままだった。

2004 角川文庫

E.D.F.@徳島ジャズストリート

明石大橋

2/10に徳島ジャズストリートにいってきました。今回で実に50回目。ほんとうにすごいイベントだと思います。地元密着で地元の店が結束して運営し、お店も出演者も、アマチュアもプロも、僕たちのように呼んでもらえた人もみんなハッピーな素晴らしいイベントです。やはり夏に阿波踊りで県内総出で一致団結するという県民性によるのでしょうかねぇ。

ぼくは結構ずっと行かせてもらっていたのですが、ここ数年は共演していたピアノのK氏が倒れたりして行けてませんでした。なので久しぶりの徳島ジャズスト、とても楽しみにして訪れました。しかもE.D.F.だし。午前中に集合していい天気のもとをゆったり走り、鳴門でうどんをちゅるっと食べて徳島入りしました。

いつもと変わらない笑顔で迎えてくれるスウィングのママとマスターにご挨拶して、ちょっとリハさせてもらって、出番まで店のまえでうだうだしたり。久しぶりの人にもたくさんあえてうれしかったです。

E.D.F.はP-パラダイスとスウィングに出演しました。どちらももちろん初めて聴いてもらう方も多い中での演奏で、しかも普段は不得意な(笑)時間がきっちりきまった中での演奏でしたが、清水さんのMCもすごく冴えて、演奏もいい感じでした。というか、お客さんたちが熱いし、素直に聴いてくださるのがとてもうれしかったです。

ライブの様子(photo by kottaさん)

イベントが終わってからの時間は毎回おなじみのセッションです。こうやってあちこちのミュージシャンが集まってセッションできる機会もそうないので、みんな疲れていてもやりたい放題で、毎度楽しいです。地元のミュージシャンをはじめ、今や売れに売れてるENCOUNTERのメンバーや森下トリオのみなさん、そしてもちろんE.D.F.の面々などなど入り乱れてのセッションは、3時ぐらいに終わるはずだったのに、うだうだやってたら5時ぐらいになってしまいました。でも普段会えない人たちとわいわい呑んでやるのは本当に楽しいことです。

で、次の日はいつものごとく香川へ。清水さんと今回ベースを務めてもらった福呂さんと3人で。

ま、昔のように無茶はしないので、ゆっくりドライブしながら美馬から峠を越えていくコースでいきました。例年ならただの月曜日でどこも行きたい放題(笑)なのですが、あいにく今回は祝日だったのでどこもたくさんの人ひとヒト。まだうどんブームって続いてるのですねぇ。

結局、三嶋〜やましょう〜山の家と3軒だけまわりました。昔に比べたらなんて食べなくなったことか。でも、いつまでたってもおいしいです、香川のうどん。でも、ドライブしながらいろいろ話していたのですが、昨今ジャズ喫茶やライブハウスもなくなっていったりするご時世、もともと年配の方々がやってるお店が多いぼくらがなじみにしているうどん屋さんも、そのうちなくなったりするんだろうか、と。考えるだけで寂しい話です。

なにはともあれ、今回もとても楽しませてもらいました。いらしてくださったみなさん、ミュージシャン各氏、そしてイベントを作り上げてくれた徳島の方々に感謝したいと思います。ありがとう。

三嶋のつめたいのん

畑さんと

昨年10月にやって楽しかったのでギターの畑さんと再びDUOをやりました。昔はDUOでのライブというのはほんとに珍しいものでしたけれど、最近は気軽なのもあるし、どんな場所でもできるというのもあって小編成でのライブが数多くなってきていますが、サックスとDUOとなると一番相性もいいし機動力のあるギターが多くなるのじゃないでしょうか。

畑さんとはずいぶん前からいろいろご一緒させてもらってますが、こうやってDUOでやるのは実は今日でまだ2度目。まぁ大先輩ですしなかなかない機会です。今日も一緒にやりながら繰り出される華麗なフレーズにため息がでてしまいそうでした。本当に楽しいです。なのに、うろ覚えで曲やってしまったりしてほんとすいません汗

そして2度目となるこのお店、パイルドライバーもほんと居心地よくて(壁が緑なのもいいんですよね)、この雑多とした大阪駅前ビルの地下街の中のオアシスのようです。マスター、ママ、ありがとうございます。

しかしなんと言っても今日のトピックはその畑さんのギターでした。真っ赤!ほんとに真っ赤。もう少し暗い赤や茶色がかったものは(僕レスポールの赤好きだし)よく見るけれど、ここまで真っ赤なものは見たことないです。畑さんにギターを作ってくれる職人さんがいるそうで、その人が赤にしたい!と言ったそうなんですが、ここまで赤いとは畑さんも思ってなかったとかw

このDUO、またここパイルドライバーでやります。次回は6/22の予定です。ぜひ!

柴田錬三郎 – 江戸八百八町物語

「江戸っ子」の由来や、吉宗の御落胤、辻斬りやら赤穂浪士、はたまた大奥から花魁まで、江戸時代の町、人々、そして武士たちを描いた物語が14。どれもありがちな時代物とちょっと違う逸話ばかりで楽しい。おおらかな人々の息づかいが聞こえるよう。

講談社文庫 1993

田口ランディ – 馬鹿な男ほど愛おしい

田口さんの赤裸々なエッセイ集。彼女の(たぶん)実体験に基づく恋のエピソードがたくさん。彼女が振り返るととても恥ずかしいけれど、その分とても楽しく、素敵だった恋の話ばかり。どれも面白い。

ほんと自分に対しても人に対してもまっすぐな彼女のすがたが目に浮かぶ。まるでテーブル差し向かいでお茶でもしながらしゃべっているような錯覚を覚える。

素敵だなぁと思いつつも、羨ましくもあり、そして少し寂しい。

新潮文庫 2005

satokoレコーディング

メンバーそしてエンジニアさんたちと
メンバーそしてエンジニアさんたちと

先月末の30、31とボーカリストsatokoさんのレコーディングがありました。これはFollow Club Recordの8作品目になる予定で、完全に一から自分たちの作品以外のものを手がけるのは初めてだったので(溝口恵美子さんのものはライブレコーディングされていたものだったから)、まぁ演奏はともかくとして、期待と不安のないまぜで臨みました。

satokoさん自体もこんなレコーディングははじめてだし、最近はライブも結構詰めてやっていたので曲に対してはバンドも(そう、このレコーディングのバンドはE.D.F.のリズム隊:清水さん、西川さん、光田さん)慣れてきていましたが、でもやはりライブと録音作品は全然違うので、果たしてちゃんとできるかなーと内心不安でした。レコーディングって時間が限られるので、クリエイティブな部分を追いかけすぎると時間がいくらあっても足りなくなるし、初レコーディングとなるとやってみたけど歌えなかった、なんてこともなきにしもあらずなので。でもsatokoさんの歌は心配ないだろうなとは思っていました。ただ楽曲やアレンジが難しいので、イメージ通りになるか、が心配事でしたが。

でも今回は場所こそ初めての(僕は何度か来てる)新大阪のKOKO PLAZAでしたが、信頼おけるエンジニアの猪狩さんにわざわざ来てもらって(from 横浜)、調律も成ちゃんにわざわざ来てもらって(from 和歌山)、準備は万端、終始和やかムードでできたのでよかったです。バンドも気心知れているし。楽しい現場は自ずと結果もついてくるというもので。

結構(1枚のアルバムに含めようとする曲数にしては)多めの選曲でレコーディングに臨んだのですが(全部は収録しないですけどね)、スタンダードなんかはもうほんと見事に1テイクか2テイクぐらいでOKみたいな感じの素晴らしい滑り出しだったのですが、彼女のオリジナル曲のイメージが今ひとつ具体化せずに途中から停滞感が出たりしました。それでも一日目で全曲一応やってしまうというところまで行きました。でも、まぁ全部がOKというところにはほど遠い感じでした。

ということで、1日目に録ったものを整理していると、OKというものは少なくあと1日でできるかなぁと不安でしたが、エンジニアの猪狩さん曰く「E.D.F.は2日目だからねー」。その言葉通り、いろいろ揉めたりした部分もすっきりイメージ通りに落ち着き、当初の予定より早くバンドの録りは終わり、あとは歌の細かな修正や確認作業(歌もほぼ同時録音していた。ブース分けして受けられる恩恵をあんまり使ってないw)を入念にやって(これ大事、でも大変)、2日間の予定を無事終えることができました。いやー、あんなたくさんできるとは思ってなかったなぁ。

まだここからの作業のほうが実際は多いのですが、いいスタートできたので、いいアルバムにきっとなると思います。よかった。みなさん本当にお疲れさまでした!

でも自分たち以外のアルバム制作に携わるってのはとても大変な作業であることが身にしみました。一応役立たずプロデューサー役になっているので、演奏より全体をまとめるほうにすごい神経が必要なんですねぇ。自分の演奏はまぁうーんいけたかな?という感じですが、やっぱりフルートは下手過ぎ(苦笑)ライブとは違いますね、やっぱり。

メンバーやエンジニアの方々との晩ご飯(という名の接待?)を3日間もやったので、きっと太りました。やだなぁ。

 

柴田トヨさん

日曜日に訃報をきく。101歳だったそう。

先日実家に帰ったときに柴田さんの詩集「くじけないで」がおいてあり、母に「どうしたの?」と聞くと、知人からもらった(借りた、だったか)そうで、何気なくめくってみたページに綴られていた暖かなことばたちに「これはぜひともじっくり読んでみたい」とその帰り道に本屋さんによったのがほんの2週間ほど前。まだその「くじけないで」も読み終わらないうちに知らされた他界の知らせに「ああ」としずかに納得し、彼女がその生涯の最後までわたしたちに生きる勇気を与えてくれたことに感謝しました。

柴田さんを知ったのはそう前でもないのだけれど、たしか新聞か何かだったかと思う。その「くじけないで」という詩集を出されたときの記事かなにかだったと思うのだけれど、「98歳になってね、へー」というぐらいしか思っていなかったのだけれど、そのときすぐにその詩集を手にしなかったのがほんとに悔やまれる。シンプルな言葉で綴られる詩たちはどれも素直に心に響く。やさしく、時には厳しく叱咤するように、寄り添うように・・・生きていくことを、人生のすばらしさを教えてくれる。人生の達人、といったらいいのか、柴田から流れでてくることばの数々は重々しいことであっても苦しくなく澄んでいて、懐かしい匂いや音、景色、いろんなことが目に心に浮かんでくる。あまりにもやさしく、うれしく、さみしくなるので一日に1編くらいしか読めない。

こんな方に一度くらい会って話してみたかったとは思うけれど、それはもう無理になってしまった。けれど彼女の残したことばがあるかぎり、いつでも出会えると思えたら、それでいいよね。

柴田さん、本当におつかれさまでした。安らかに。そしてこれからも(ちょっと)お世話になります。

 

最後にひとつ、とても気に入っている詩を転記します。

 

「風呂場にて」

風呂場に
初日が射し込み
窓辺の水滴が
まぶしく光る朝
六十二歳の倅に
朽ち木のような体を
洗ってもらう

ヘルパーさんより
上手くはないけれど
私は うっとり
目をつぶる

年の始めのためしとて−−−
背後で 口遊む(くちずさむ)歌が聞こえる
それは昔 私が
お前にうたってあげた歌

柴田トヨ「くじけないで」より