子どもの頃ちょっとだけ引っ込み思案だったおかげでいじめられ、兄だけが遊び相手だったという巧は父の才能を受け継いだの話を作るのがうまく、やがて演劇にのめりこみ劇作家として劇団を主宰するまでになる。が、ファンが多いとはいえ彼が主催する劇団「シアターフラッグ」は多くの小劇団と同じように貧乏劇団。しかも劇団の方針を変えようとしたことから劇団員が激減、おまけにずっと見えていなかった負債が300万もあることが判明。
そんな危機的状況で巧が泣きついたのは兄・司。会社員として普通に働く司から見れば劇団の経営はずさん極まるものだった。そこで兄が負債を肩代わりするために出した条件、それは「2年間で劇団の収益のみでこの金を返せ」だった。
ふとしたきっかけで見に行った劇団から着想してこの物語を書いたという有川さん。相変わらずアンテナが広いというか、敏感。この物語をいろいろつくりあげる弟・巧の感じって有川さんそのものなんじゃないだろうか。小気味いいテンポで軽すぎず重すぎず、でも内容と背景はしっかりあって、ちょっと薄いけどいつもの恋愛要素もあって、と有川さん得意なパターン。でもぜんぜん劇団のことなんか知らなかった人が3ヶ月でこんな劇団よく知ってる人のような感じで物語を作り出せるもんだろうか?ほとほと感心。
読んでいて、以前劇団に参加させてもらったことをいろいろ思い出した、もうずいぶん前だけれど。練習はほんといくらやっても足りないし、何もないところにお客さんに景色を見せようとするといろいろ道具もいるし、それが大掛りになればなるほどいろんなものが必要になって大変になる。でもそんな苦労をしょってまで(結構肉体的にも精神的にもお財布にも厳しいw)しても芝居をしたい人はたくさんいる。でも「貧乏と芝居は3日やったらやめられない」(だったか?)と言われるように、あれは面白い。独特の世界。非日常にすべてを没頭できるということは、本を読んだり、映画をみたり、ゲームにのめり込んだりすることなどよりもっともっと刺激的でかつ現実から乖離できる(夢の世界で遊んでいられる)楽しさを与えてくれるので、やってみたらわかる、癖になるもの、なんだと思う(そう思った。また芝居やりたい!一度でいいから映画でたい!)。
この「シアター!」まだ続きがあるはずだから、はやく読みたい!
2009 メディアワークス文庫
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