マイスティース レコーディング

20150509-1
今回の足元。アルトが綺麗でしょ?w

 

復活後初のワンマンを2月に行った際に発表した「Greeting CD」につづき、THE MICETEETHでまたミニアルバムの制作をしています。ベーシックは4月中旬に録ったのですが、そこからしばらくあいて、GW明けにホーンセクションのレコーディングを行いました。

前回はホーンアレンジのほとんどをやったのですが、今回はTb前田くんと半分こしてみました。そのほうがサウンドやアレンジのカラーも幅が出るし面白いなーと思ったからもあります。で、実際出来上がってきたアレンジはぼくのはやはりぼくっぽく、前田くんのは前田くんぽい感じで違いがあっていい感じです。前田くんががっつり作ったアレンジ吹くのもPANDEMIK以来かも、なので、なんだか懐かしい感じがしました。

2日間に亘ってホーンのためだけにスタジオを使ったのですが、今回は前作で歌どりやミックス・マスタリングをしたスタジオ、そしてエンジニアのOさんでの録りでした。Oさんに録ってもらうのはもう随分前に同じマイスティースでクリスマスのコンピを作った時以来でとても嬉しかったです。というのも、あの時とても音がよかったので(まあ先日の時もつくづくいいなーと思っていましたが)今回の録りもとても楽しみだったのでした。で、実際録ってもらっているとやっぱりいい音。スタジオそのものやセッティングや機材(とくにマイクね。今回は結構古いノイマンのu87だった。これがいい)もですけれど、やはりこれはOさんの腕によるところが大きいです。録った音そのものもですけど、録っているときにストレスなく気持ちいい音でできるのもとても重要なことですし。

この録りの前の日が愛知の蒲郡でのイベント出演だったので、その日は泊まって、早朝に起きてみんなで大阪まで戻ってのレコーディングだったので、結構体力的にきつかったのですが(移動もしんどいし、前の日飲みすぎたし < これが一番の原因かw)、初日のレコーディングは実にスムーズで、予定していた以上のことができました。まあ事前の準備がうまくいっていたというのもあるし、Oさんのエンジニアリングがよかったのいうのもあるし、何より今回ゲストで来てくれたTpの長山くんがとてもいい音をだしてくれたというのがありました。4管以上を重ねて作ったりはしているけど、同時にリアルに4人でハーモニーを作るというのはそれはとてもとても楽しいことなのです。

2日目はまた3人でのセクションでしたが、最後の曲に結構時間がかかってしまい(アレンジがいろいろ決まるのに時間が必要だった)なかなかスムーズにいかなくて一瞬暗雲立ち込めそうでしたが、ほんとこのバンドのいいところなのですが、そういう場合にみんなで頑張ってというのじゃなくて前向きに乗り越えようという文化があって、それによって結局はいい感じに、しかもあとで迷えるぐらいいろんなアイデアを盛り込んだものができました。いやーすごかった。それにささっと応えられるセクションというのもやってて楽しいですし。

あと、今回は普段そういうことまずしないのですが、自分がアレンジしたもので、自分が吹く音のイメージがどうしても普段出している音よりもっと違う感じにしたかったので、楽器を借りてみました。新しいタイプの楽器はコントロールもしやすいし、何より音が艶やか。ちょっと違う感じに聴こえると思いますが、そんなこと思って一人でニマニマしてるのはぼくだけかな?

今回も5曲。また5曲ともいろいろ色の違う曲が生まれてきています。どんな出来上がりになるのか、いまから楽しみです。乞うご期待!

20150509-2
珍しい(というか初めての)4人セクション

 

宮部みゆき – パーフェクト・ブルー


宮部さんの本を読むのも久しぶり。最近のは長編が多いので読むのに時間がかかってしまう(当たり前か)のでちょっと避け気味になっていたのだけれど、たまには読みたいなーと思って手に取った本。何も考えずに手に取ったが、実は彼女の長編デビュー作だった。設定がおもしろくて元警察犬のマサが主人公。物語は彼の視点から描かれるのだけれど、途中から犬が主人公であることを忘れてしまうぐらい、スムーズに進む(例えば犬だから人との意思疎通が難しく、その説明があったりして話が横道にそれる、というようなことがない)ので楽しく読めた。

マサは出会いあって蓮見探偵事務所の用心棒として飼われている。そこに持ち込まれた少年・進也を連れ戻してくれという依頼に事務所の調査員・加代子と向かうのだが、彼を無事連れ帰る途中で不可解な事件に出くわす。それがすべての始まりだった。彼の兄で高校野球界のスーパースター・克也が焼き殺された。野球部内の確執か、それとも高校野球界の闇か、それとも。。。

謎がウエハースのように何層にもなってて、表面的に解決しても(物語上でも焼死事件はたやすく解決する)その裏にまた違う顔を潜めている、という構成がうまくできている。どんでん返しみたいなことにはならないんだけれど、それでも最後まで事件の全体像が見えず、それでも最後まで飽きずに読めるのもさすがという感じ。最後ちょっと説明おおくなっちゃうけどね。でも宮部さん初長編という感じはまったくせずに、すごくこなれた感じで素晴らしいとおもう。

人間の闇的を描くことはあまりなく、もうすこし軽い感じというか、徹底的な悪がなくてちょっとほっとした。そういうドロドロしたところがでてくるとこんな長さでは書けないだろうしなぁ。少年たちが主人公なので、爽やかな感じがするようにしたのかもね。

創元推理文庫 1992

Amazonで詳細を見る
楽天ブックスで詳細を見る

三浦しをん – まほろ駅前 多田便利軒


三浦さん本を読むのは久しぶりだけれど、今まで読んだのとはまた違うテイストの本。のんびりした感じというか。

郊外のまあまあ大きな街の駅前で便利屋を営む多田。あるとき得意先に出かけそこで高校時代の同級生に出会う。一言もしゃべらない変わったやつだった、行天。多田は実はこの行天に後ろめたいことがあったからもあり、彼に居つかれてしまう。そこから始まる奇妙な同居生活。お互いやもめの二人はなんとなくウマがあっているのかいないのか(笑)。勝手気儘に、でも仕事を適当に手伝ったり、たまに気の利いたことを言ったり、下手なことをするとどこかえ消えてしまいそうな行天を多田は追い出すことができない。

便利屋にはいろんな仕事が舞い込み、それをこの凸凹というか、ぐだぐだ中年コンビが奔走し片付けていく。日々は流れ、彼らはその中でも役立つことや人との関わりに小さな幸せを見出す。しかし、彼らは根本的にぱっとすることがない。というのは実は彼らは理由は全然違うにせよ、妻子と別れており、妻はまだしも、子供と会うことができないという理由があった。さらにその影には複雑な事情が。

行天というのが読めば読むほどどうしようもないやつなので、多田が抱える後ろめたさがなければ「さっさと追い出せばいいのに」とか思ってしまうのだけれど、読み進むうちになにか憎めないようになってしまう。やせ細ったブチのある捨て犬のような感じ。彼らの関係を見ていると、取り返しのつかないことはつかないし、それを取り戻すことはきっとできないけれど、そこをスタートにまた新しい関係を産むことはできるんじゃないか?と問われているような感じ。

物語のテーマは幸せはとり戻せるか?というようなことなんじゃないかな。壊れたもの、壊してしまったものを同じ様に同じところにもどすことはできないけれど、違う方法で代替(というとおかしいか)したり構築して別だけどまた違う幸せを産むことは可能なんじゃないか、ということ。物語は軽妙に日常が過ぎていくけれど、彼らの会話や行動の端々にときどき陰がさし、そういうことを示唆するような言動がうまれる。それらの発端は行天と多田の高校時代の話、つまり多田のうしろめたさ(これを告白はしない)。

でも、そういう幸せを取り戻すことが明らかにできてなくとも、そこへ向かっていることが少しでも感じることができれば、やるせない気持ちを抱かえつつも日々を生きていくことはできるよね、と三浦さんに諭されているような気分になる。いい物語。

いくつかハッとする言葉がでてくる。少し挙げると「不幸だけど満足ってことはあっても、後悔しながら幸福だとういうことはない」(行天)、「愛情というのは与えるものではなく、愛したい感じる気持ちを、相手からもらうことをいうのだと」(行天の元妻・凪子)。その他にもいろいろ。噛みしめてしまう。

第135回直木賞受賞作。

文集文庫 2009

Amazonで詳細を見る
楽天ブックスで詳細を見る

小路幸也 – シー・ラブズ・ユー(東京バンドワゴン)


小路さんの東京バンドワゴンシリーズの2冊目。今回も懐かしいホームドラマの匂いがぷんぷん。

東京のどこかの下町にある古書店「東京バンドワゴン」。そこは大所帯家族・堀田家がやっている。三代目の勘一、その息子で伝説のロッカーだという我南人、その息子たち、その嫁たち、そして孫たち、、、いつも食卓は賑やかで、読んでいるこっちも微笑んでしまう。いまは失われつつあるのか、それともどこかにまだまだあるのか、日本的懐かしい長屋家庭の風景。ご近所さんも賑やかでいつも書店と併設されているカフェには人がいて、世間話に花が咲く。そしてときどき街や人の周りでおこるトラブルや不思議なことが持ち込まれる。。。。

今回も冬からはじまって、春夏秋と4つのお話が。前作では家族のそれぞれに焦点が当たるような感じだったけれど、今回はこれから増えるであろう家族のことやら、恋の話やら。前作と同じ設定で亡くなった勘一の奥さんサチが見えない姿で家族を見守る、俯瞰するテレビカメラのよう。彼女の説明で話は進んでいく。ほんとテレビドラマを想定したような物語と脚本の間のような感じ。

どのお話も少しずつミステリーぽくて楽しいけれど、信頼おける人のつながりでしか生まれない逸話「恋の沙汰も神頼み」と、どうしようもなくやるせない気分にさせられる表題作「SHE LOVES YOU」がいいなぁ。勘一の黙って動く感じ(昔の親父って感じ)もいいし、ときどきに我南人がいう「LOVEだねぇ」が効いている。簡単な言葉だけれど、たしかにそれですべて表せてしまうのもたしか。さすが伝説のロッカー、というか、音楽ってそういうところある。ぼくにはまだまだだけど(できたらいいけど)。

なんせ今回も楽しかった。ほっこり。

集英社文庫 2009

Amazonで詳細を見る
楽天ブックスで詳細を見る

2015.5月のスケジュール

2015.4 2015.6 >

201505※先の予定は随時変更されることがあります。

line
5/2(Sat) 津上会
神戸 三宮 Big Apple 078-251-7049
19:30~ 前2,300 / 当2,500
[メ] 津上研太(sax)、津上信子(fl)、武井努(sax)、萬恭隆(b) ゲスト:山内詩子(vo)

20150502
line
5/4(Mon) 松田一志
兵庫 西宮北口 えるえる 0798-65-0571
19:00~ 前\2,500 当\3,000 1drink付
[メ]松田一志(Vo)、城野淳(Gt)、武井努(Sax)
line
5/6(Wed) 武井・馬田DUO
兵庫 西宮 Three Codes 0798-55-5184
19:30~ \1,500 (つきだし\500)
[メ]武井努(Sax)、馬田諭(Gt)
line
5/8(Fri) THE MICETEETH
森、道、市場 - モリハイヅコヘ 前夜祭
line
5/11(Mon) 永田充康クインテット
大阪 梅田 ニューサントリー5 06-6312-8912
Start 19:30 \1,800
[メ]永田充康(Ds)、TAKU(Gt)、加納新吾(Pf)、武井努(Sax)、時安吉宏(B)

20150511
line
5/15(Fri) 荒崎英一郎Big Band
伊丹 Stage 072-777-3818
[メ]荒崎英一郎(Ts)、武井努(Ts)、浅井良将(As)、落合智子(Bs)、ジェームズ・バレット、横尾昌二郎(Tp)、幸明男、太田健介(Tb)、 藤山龍一(Gt)、金丸精志(Pf)、中嶋明彦(B)、岡野正典(Ds)
line
5/16(Sat) たけタケ
東大阪 俊徳道 Crossroad 06-6736-8870
20:00~ \2,000
[メ]清水武志(p)、武井努(Sax)
line
5/17(Sun) Words Of Forest
明石 POCHI 078-911-3100
19:30~ \2,600-
[メ]森本太郎(Ds)、清野拓巳(Gt)、三原脩(B)、武井努(Sax)、今西祐介(tb)
line
5/19(Tue) 中島教秀・武井DUO
兵庫 尼崎 JAMMER 06-7177-7501
20:00〜 カンパ制
[メ]中島教秀(B)、武井努(Sax)
line
5/20(Wed) MITCH
大阪 梅田 ニューサントリー5 06-6312-8912
Start 19:30 \1,800
[メ]MITCH(Tp,Vo)、武井努(Sax)、時安吉宏(B)、永田充康(Ds) ほか
line
5/21(Thu) 清水勇博(Ds)3
岡本 Born Free 078-441-7890
19:30~ \2,500
[メ]清水勇博(Ds)、萬恭隆(B)、武井努(Sax)
line
5/22(Fri) Shu
大阪 梅田 Azul 06-6373-0220
19:00- \1,500
[メ] Shu(Vo)、清水武志(Pf)、西川サトシ(B)、武井努(Sax)
line
5/25(Mon) 武井・馬田DUO
寝屋川 萱島 OTO屋 080-6126-1529
20:00~ 2,500
[メ] 武井努(Sax)、馬田諭(Gt)
line
5/27(Wed) tenor sax emsamble
神戸 三宮 Big Apple 078-251-7049
19:30~ 前\2,500 / 当\2,800
[メ]荒崎英一郎、登敬三、辻田宣弘、篠崎雅史、内藤大輔、東川靖雄、古山晶子、當村邦明、武井努 ほか (以上全員ts)
line
5/29(Fri) E.D.F.
大阪 桃谷 M’s Hall 06-6771-2541
20:00~ 1,800
[メ]清水武志(p)、武井努(Sax)、田中洋一(Tp)、西川サトシ(B)、光田じん(Ds)
line
5/30(Sat) THE MICETEETH / ANATAKIKOU UNIT
■ KYOTO MUSE 25th Anniversary “25SOULS”
『アナタとマイスティースをキコウ 10years』
京都 四条 KYOTO MUSE 075-223-0389
Open 19:00 / Start 19:30
前\3,500 / 当\4,000(D代\600が別途必要です)
[チケット]■e+ ■ローソンチケット(L:53312) ■チケットぴあ(P:260-720)、KYOTO MUSE
発売日:3月28日(土)
line
5/31(Sun) 中島教秀3
豊中 我巣灯 06-6848-3608
19:00- \2,000
[メ]中島教秀(B)、武井努(Sax)
line

上橋菜穂子 – 闇の守り人

上橋さんの「守り人」シリーズの2作目。短槍ひとつで女用心棒として生きているバルサ。彼女を育ててくれたのは、ある陰謀により人生のすべてを投げ捨て逃亡生活に身を落としてまで彼女を守ってくれたジグロだった。彼女はジグロの汚名を晴らすべく25年ぶりに生まれ故郷に戻る。が、そこへと抜ける洞窟の中でであった2人の子供がきっかけで彼女が故郷に戻っていることが発覚し、故郷カンバル王国は彼女を捕らえようと躍起になる。

やっぱりファンタジーが好き。でもこのシリーズはグインほど突飛ではない(いまのリアル社会とそう遠くない感じがする、時代や場所が違うだけ、みたいな)ので、入り込みやすくていいんじゃないかと思う。でてくる人たちもわりと普通だし。でも今回のカンバル王国には、地底に住まうという山の民と山の王、小さな牧童の人々なんかもでてくるので、少し西洋的な感じがするかも。そういう意味ではまだ一作目(精霊の守り人)は東洋的だったように思う。

あとがきで上橋さん本人が書いているように、この作品は大人が読んでも楽しめる(もっとも”大人に支持されている”という書き方だったけど)作品だとおもう。ファンタジーというとどうしても夢の世界、想像の世界、現実離れしてとっつきにくい世界観というイメージで大人は読みにくい子供のものみたいなイメージだけれど、この作品は人間のドラマのようなところがあって(陰謀などのどろどろした部分も多く描かれるし)、そういう風に言われているんじゃないかと思う。実際読んでみて、もちろんファンタジックな部分はふんだんにありつつも、そういうドラマ的な部分もしっかりあって、物語としての骨組みがずっしりしてる感じがする。へんな例えだけど、一作目は明らかに子供向けだった映画ハリーポッターシリーズが2作目以降大人も楽しめるものになった、そんな感じ?(もっともこの本は大人ぽいけど)

話の進め方がうまいのか、章立てが細かいので、区切りよく読めるためか、とても読みやすくて一気読みしてしまった(前の本もそうだった)、400ページほどあるけど。単純に面白くてわくわくする。読後に爽やかさって感じはないけれど、なにかちょっとした達成感とほどよい疲労感があるのもいい。

このお話でもやはり現実と併行して存在する別世界がでてくる。実際こういうことがある(別次元とか、死後の世界とか、そんな言葉で語られるところ)と考えると現実に起こってること感じられることっていうのが、そういう世界からの干渉であったり、たまたまうっすら現れたりしたものだと思えなくもない。だいたい見えてることなんて、ほんとに狭い世界でしかないのだし。

シリーズ次作も早く読もう。

PS
あとがきで知ったけど(書いてるのがアニメ化した神山監督だった)、アニメ化されてるらしい。見るべきか見ざるべきか。。。。

新潮文庫 2007

Amazonで詳細を見る
楽天ブックスで詳細を見る

加藤実秋 – インディゴの夜

加藤さんはまだ2作目。前の「モップガール」が面白かったので名前覚えてて、この本を手に取った。装丁もすっとした感じだったので、きっとするっと読めるだろうなーと思ったのもある。ガッツリ読み込むもの、すっと読めるもの、いろいろ変えて読まないとしんどいし。ちなみに加藤さん、実秋はさねあき、じゃなくて、みあき、です。女性。

「クラブみたいなハコで、いかにもという感じではなくて、DJやダンサーのような男の子が接客してくれるホストクラブ」をコンセプトにオープンした渋谷のはずれにあるclub indigo。フリーライターの晶、そして同じくライターの塩谷がオーナーだが、実際に店を仕切るのは”伝説の男”憂夜。毎夜若い女の子でにぎわうインディゴだが、ある熱心な女性客が殺される。店のNo.1が絡んでいる?謎を解くため警察をよそに晶たち、そしてホストたちが渋谷の街を走る。。。。

この本には晶たち、そしてホストたちが活躍する短編が4つ。どれもすこしひねりがあって引きつけられて面白い。それとホストクラブなのにホストたちがいわゆるじゃなくてその辺にいる感じの賑やかな男の子たちという設定もいいと思う。名前も変だし。ジョン太とか犬マン、TKOにBINGO、山田ハンサムとかとかw。彼らがそれぞれキャラがたってて面白いのもあるし、もちろんもとヤンという晶も、そしてちょくちょく現れるオカマバーのなぎさママ、そして店をとりしきる憂夜が格好良すぎたり。下手をするとかっこいい男たちが格好良く颯爽と活躍してミステリーを解いて回る、みたいな展開になりがちなのに、こういうキャラたちでそうはさせず、でも退屈にもならないようにする(渋谷とかこういう文化圏のことをよく知ってるんだとおもう、加藤さんが)のはなかなか難しいんじゃないかなーと思う。で、軽く読めるのもいい。ま、だいぶ軽いけれど。でもチャラチャラはしてない。いい塩梅。

せっかくだからもう一話一話説明の部分は省けばよかったのになあと、本でまとめて読むと思う。続きもあるようだから、それらもきっと読むだろうなー。まだキャラクターたちの奥、深そうだし。憂夜あたりはたくさんエピソードありそう。

荻原浩さんが書いてる解説がとてもいい感じ。その通りよねぇ。そんな風にはぼくはかけないから、面白かった!とだけ書く。

創元推理文庫 2008

Amazonで詳細を見る
楽天ブックスで詳細を見る

奥田英朗 – 町長選挙

奥田さんもだいぶ久しぶり。この本はシリーズにもなってるヘンテコ精神科医の伊良部一郎の第三弾。今回もヘンテコぶりを発揮して周囲を困らせているけれど、この人分かってやってんだかどうなんだか。

大手新聞会社のワンマンで人気野球チームのオーナーでもある男が恐れる闇「オーナー」、ITにより時代の寵児となった男が物忘れに頓着しない「アンポンマン」、歳をとっても若い姿でいようと努力しすぎる女優「カリスマ稼業」、そして表題作でもある孤島を二分する選挙に引き裂かれる男「町長選挙」の4つの短編。

伊良部の何を考えてるのか分からないところ、計算で動いてるのでもなさそうなのにたまにすごく的確な指摘をするところなんかが相変わらずとても面白い。4編のうち最初の2編についてはもう、あの人のことよね、とはっきりわかるモデルが現実にいる。実際描かれているように世間から(もっとも僕たちはメディアを通してしか知り得ないけど)見られてる/見えているけれど、それを本人視点から描いてるのが面白いし、もしかしたらこのお話したちのように悩んでるかもしれないし、話そのものも面白さもあるけれど、彼らはどう思ってるんだろうとか考えさせられて、奥田さんそこが狙いなのか?と深読みしてしまう。

表題作でもある「町長選挙」、ぱっと読むと非常に異常な感じを受ける(前時代的というか、関西の昔のあかん感じ)のだけれど、結局はそこに見える表面的なことではなくて、住民たちがほんとに思ってること、それをうまく描いてるなーと思う。そんなバカな!的な展開をするけれど、そこにはもう僕たちが忘れてしまったことや体験することなく過ぎ去ってしまった、村的ないいところ、そういうところを思い出したりかいま見せてくれたりする。

どの話もそうだけれど、話の主人公たちそのものよりも、人と人との関係によって社会は成り立ってるし、そういうのがないのは寂しいよ、と言われてるような気がする。

面白かった!

文集文庫 2009

Amazonで詳細を見る
楽天ブックスで詳細を見る

萩原浩 – さよなら、そしてこんにちは

久しぶりに読む萩原さん。裏表紙のあらすじを読んで面白そうだなーと思ったので手に取った本。7つの短編からなる。

もうすぐ子供が産まれる葬儀社に勤める中堅社員「さよなら、そしてこんにちは」、父親の長年の願いだった田舎暮らしを実現した家族だったが「ビューティフルライフ」、日々のテレビ番組に振り回されるスーパーの売れない売り場の責任者「スーパーマンの憂鬱」、子供番組のヒーローに恋してしまった母親「美獣戦隊ナイトレンジャー」、頑固な寿司屋にやってきた謎の男「寿し辰のいちばん長い日」、ひょんなことから売れっ子になってしまったイタリア料理好きの主婦「スローライフ」、坊主が娘の仏の間に板挟み「長福寺のメリークリスマス」。

どの話も主人公がちょっと変わっているというか、頑固というか、融通が利かないというか、どじくさいというか、普通の人々でまじめに生きているのに、そのまっすぐさ加減が滑稽に映ってしまう、面白い人たちを描く。その滑稽さに笑みがこぼれてしまうのだけれど、ふと考えると自分もきっとこういう部分があるんだろうな、人から滑稽に見えるほど必死になってるところとかあるんだろうな、と恥ずかしかったり、でも嫌でもなかったり、不思議な感情が浮かぶ。

で、どの話も思い切りハッピーでもバッドでもなく、うん、そんなもんよねぇ、的な終わり方をするので、物足りない感じもするのだけれど、それがまたいいところなのかも。昔話を思い出して、ふっ、と笑うような。

すすっと読めてよかった。でももう少しぎゅっとしててもよかったかも。

光文社文庫 2010

Amazonで詳細を見る
楽天ブックスで詳細を見る