重松清 – Long, Long ago

longlongago
相変わらず重松さんの物語はいつ読んでも心がキュンとする。そんなにいろいろ変わったものや変化球を出してくることもなく、安定して普通の物語ばかりなのに、なぜかいつも切なくなってしまう。たんに世代的なものがもつ共通項が多いから、ということなのだろうか。

少し厚い目の文庫本に短編が6編。地方の小さな街の老舗百貨店の興亡とその家の娘「いいものあげる」、無茶苦茶なのに子供心に名瀬か憎めずいつまでも気になる叔父さん「ホラ吹きおじさん」、子供のころに一緒に冒険したともだちにもう一度逢いたい「永遠」、学年が上がるごとに目立たず普通の子であると自覚する自分に自問と諦めを繰り返す「チャーリー」、オブラディオブラダの合いの手は何を言ってる?「人生はブラの上を」、舞い戻った街で初恋の人の痕跡をたどる「再会」。

どれも子供の時代を振り返るお話。誰にもあった輝いていたり、暗かったり、思い出したくなかったり、でも懐かしかったりする小学生時代。永遠とも思えた6年間に刻まれた記憶や友情はずっと続くものと思っていたけれど、大人になるにつれそれらはどこかへ片付けられ、忘れられ、何かに置き換わって行ってしまう。また会おうといった人は会えないし、書くといった手紙は届いたことがない。

でもそんな中でもきっと奇跡が起こる。そう信じる人には。

新潮文庫 2012

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