山本幸久 – 床屋さんへちょっと

tokoyasan

山本さんを読むのは若い女の子の漫才コンビを扱った「笑う招き猫」以来かな。なんか文章から伝わってくる優しい波動が似ている。なので安心して読める感じ。なんだろう、悪いことがあったとしてもきっと救いがある、とか思える感じ。

この物語はある一家のお話。若い頃に先代が起こした菓子メーカーを継いだものの10年ほどで潰してしまった2代目、その妻、父に似て短気な娘、そしてしっかりしたその息子。彼らが「床屋」をキーワードにいろんな物語を紡いで行く。よくできてるなーとおもうのは、各短編が時系列的に遡る形になってること(最後の一つだけ違う)。なので一家の辿ってきたことが昔話を思い出すように繋がって行く。終活のために墓地を見に行く2代目、ふと帰り道に昔通った床屋を見つける。そこは会社の跡地の近くだった「桜」、娘が突然結婚すると言い出した彼となぜか二人で旅する羽目に「梳き鋏」、再就職した会社から海外視察にいった先で紹介された床屋は普通の店ではなく「マスターと呼ばれた男」とかとか、どれもいいお話ばかり。不運もあったけれ真面目に働いてきた男と、実は天然で面白い妻、思い通りにいかなくてもめげない娘、しっかりした孫、彼らがほんと微笑ましくて羨ましくなる、あったかい物語。

山本さんいいな。ほっこりする。重松さんも好きだけど、そこまで懐古的でなくて等身大な清々しさというか。他の本も読みたい。

集英社文庫 2012

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