有川浩 – キャロリング

caroling

久々に有川さん。タイトル通りクリスマスが関わってくるお話だけれど、それが主題というわけじゃない。各章の扉にクリスマスソングの歌詞が書いてあるんだけれど、やっぱりいいなあ、クリスマス曲。

頑張っていたけれどクリスマスに畳むことになった子供服メーカーに務める俊介。同僚には元恋人の柊子もいるが、それはとても不幸な別れだったのでいろいろ気になっている。そしてこの会社は別に子供シッターの事業もしていてそこに子供たちが集まるわけだが、会社を畳むことになっても最後まで残った小学生の航平。俊介と柊子の別れの原因は俊介の親の問題だった。そして航平の両親も問題を抱えている。触れられたくない見たくない言えない過去の問題、今目の前にある自分の両親の危機、そんな男二人の悩みと波乱に柊子も巻き込まれていく。

両親をなんとかつなぎとめたい航平に協力する柊子とそれに付き合う俊介。それにやっかいな借金の問題まで。そこででてくる物語上では悪役扱いになる赤木やその手下。普通ならそんなこと書かないだろうに、彼らの過去や人となりなんかも出てくるものだから、単に憎めなくなってくる。どの人にも人生や物語、そこに至った経緯がある。このあたり有川さんにくいなあ、と思う。

さて登場するひとたちはどんなクリスマスを迎えられるのか。はらはらとまでは言わないけれど、ドキドキする(それは事件も恋愛も、ゴタゴタも)展開。そこに有川さん特有の、いってしまえば元祖オタク的心情表現が加わるのでほんと面白い。わりと厚いけどすぐに読んじゃった。トラウマを抱え真面目で正義感つよいけどすこし拗ねてる俊介と、生意気だけどやはり子供だなーとおもわせる航平が幸せになってほしい、と願い読む物語だった。

幻冬舎文庫 2017

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