牧野修 – リアード武侠傳奇・伝(グイン・サーガ外伝24)

今度は牧野さんによる外伝。グインの外伝シリーズではいろんな人が主人公になるけれど、今回は本当にひさしぶりにノスフェラスが舞台で、セム族が主人公。

本編などの物語の後半ではもうリンダに付き添っていったセムの少女スニぐらいしかた出てこなくなってしまったので、彼らがこうやってたくさんでてくるのは久しぶり。ほんと30年ぐらい昔にグインやイシュト、そしてリンダとレムスがさまよった広大な砂漠の物語が思い出される。あのとき大口とかイドとか魑魅魍魎溢れるこの不毛の大地はとても不気味で怖かった。そしてそこで最初は人間の敵として現れるセムやラゴン。半獣半人のようなl彼らは不気味に映るが、彼らは間違いなくノスフェラスの民であり、彼らの文化・歴史を持っている。ああ、グインがラゴンを伴って現れたときの話、しびれたなあ。

その独自の文化をもつ彼らがグイン去りし後、それを武勇伝として、神の物語として語り継ぐセムの旅の一座のお話。彼らはリアード(つまりグイン)が見せた数々の冒険や戦いを語りと芝居をもって表現し、砂漠のあちこちの村を回っている。ある村で出会ったキタイの物売りがもたらした情報から彼らの禁忌が侵されようとしていることが分かる。勇気をもって立ち上がる彼ら旅の一座。しかしそれは大きな罠だった。

ほんとずーっと楽しみにして読んでいたこのシリーズだけれど、栗本さん亡くなっていったん終わってすごく悲しかったけれど、こうやって天狼プロダクションの作品として蘇ってくれるのとてもうれしい。そして、このセムの話のように昔すごく興奮して読んだ大いなる物語の記憶を呼び覚ましてくれるのがさらに嬉しい。なんか懐かしくていろんな気持ちが戻ってくるよう。

最初は栗本さんのではないグインシリーズに、当たり前だけれど、テイストも違うその感じにちょっと不満じゃないけれど、歯がゆい気持ちだったけれど、こうやって何冊か読んでいるうちに、また新しい世界がひろがって行くよう。もっと続けていろいろ新しい知らない世界を見せてほしい。

ハヤカワ文庫 2012

久美沙織 – 星降る草原(グイン・サーガ 外伝23)

天狼プロダクション監修のもと本編のつづきが数人の作家さんによって引き継がれたグイン・サーガだけれど、栗本さんが22巻(ヒプノスの回廊)まで書いた外伝も書かれることになったみたい。久美さんが選んだ物語の場所は草原。風雲児として暴れ回ったグル族の血を引く王太子スカールにまつわる物語。本編では語られなかった彼の出生や成長みせつつ、草原やグル族、アルゴスなどの種々事情をかたってくれる。

草原、懐かしいなぁ。もちろん僕は馬になんて乗れないけれど、物語を通してたくさん駆け回らせてもらった。この物語でもたくさんの駒が走り回る。懐かしいケイロニアも出て来たりしてちょっとうれしかった。

新しく作られた物語だけれど、久美さんはうまく栗本グインにつながるように書いてくれている。グル族とアルゴス、ひいてはパロとの関係や、なぜスカールがグル族を率いることになったのか、スカール誕生当初に起こったグル族内での不和などなど、新しいことだけれど、もともと織り込まれていたようにすっと読めるのはさすが。4章がちょっとずつ時間とんでいるので、最初「?」となってしまいそうだったけれど、それも読み進めば大丈夫。ちょっと説明多いかなーと思うけれど、面白かった。

ハヤカワ文庫 2012

宵野ゆめ – サイロンの挽歌(グイン・サーガ 132)


あっという間に読んでしまった131巻に引き続き、ゆっくり読みたいと願いつつも一気読みした132巻。こちらは宵野さんが書き手。栗本さんが残したテイストを踏襲しつつも131巻の五代さんともまた違うテイスト。ちょっとおどろおどろしいかな。

こちらはサイロンのお話。黒死病の蔓延をなんとか抑え、魔導師たちの怪異を収めたケイロニア王グイン。彼とケイロニアをまたさらなる怪異が襲う。それは信じられないぐらい大きなトルク(ねずみ)の大量発生だった。しかしその影には謎の魔導師のような男が。彼を駆り立てた原因は実はグイン自身にあった。ケイロニア皇帝家を悩ませる跡継ぎ問題。グインにひた隠しにされていた王妃の子供の問題。そして狂ってしまった王妃の処遇。問題が山積するケイロニア、そこに起こる事件にグインがどう立ち向かうのか。

131巻とほぼ同時期ぐらいの設定の話かなと思うけれど、まだ両者の関係はみえず、でもなんか関係してくるのだろうなーと楽しみながら読んだ。やっぱりグインが活躍する(しなくても出てくるだけでも)のはうれしい。やっぱヒーローだから。栗本さんのときは何巻も出てこないこともあったし(笑)。こちらも懐かしいケイロニアの皇帝家の人々や重臣たち、そしてグイン王の部下たちがでてきて、それだけで楽しい。

131も132もそうだったけれど、初めてこういう風に書くというのもあるからか、話をちょっと進めすぎてる(詰め込みすぎ?)感じもしないではない。けれど、待ってた人間にはそれもうれしいか。でもじわじわっと長続きしてほしいから、いいペースがでてくるといいなぁ。というか132巻、ラストあんなことになったけれど、いいの、いいの?!

ハヤカワ文庫 2013

五代ゆう – パロの暗黒(グイン・サーガ 131)


2009年に栗本さんが亡くなってしまい、その後しばらくして出版された130巻を最後に未完となってしまったグイン・サーガ・シリーズだけれど、先日本屋さんにいって、見たことない巻があるのを見つけて「え?!」と思って手に取った、131巻。どうやら栗本さんが主宰していた(のかな?)天狼プロダクションがファンなどの熱い思いに応えて、続き(正確にはそうではないけれど)を出版することにしたよう。なんてうれしい。なんて素敵な!

数人の作家さん(もちろんグインの大ファンである)たちがかわるがわる物語を紡いで行くそう。でもそれは栗本さんが絶筆した箇所からではなく、もともと正伝で計画されていた最終巻のさらに後の話(つまり外伝一巻「七人の魔導師」のあと)の話。

というわけで、思いっきり30年ほど栗本グインワールドにどっぷりだった自分が、この新しく始まるシリーズをどう感じるのかおそるおそるページを開いたのだけれど、、、、、ああ、リンダやヴァレリウス、イシュトバーンにマルコなど懐かしい面々、パロの町並み、行き交う人々、広々とひろがる中原の景色、またあの世界が戻って来た!

たしかにテイストは違うし(それは五代さんがあとがきでもはっきり書いている。「五代のグインを書きます」と)、同じ世界を描いて、同じものがでてきたとしても、選ぶ言葉も違うし、行間の感じや筆の進み具合も違う。でも、それでも、あの続きが、というかあの世界にまた浸らせてくれ、新しい物語を見せてもらえる喜びにはかえられない。また、少しずつ変化していくとはいえ、目を瞑ればありありと思い出せる、ここではないどこかに確かに存在する世界(行ったことある外国よりよっぽど鮮明な感じがする)を覗くことができるのはとてもうれしい。この企画を立ち上げてくれたプロダクションに感謝。

話はグインいるサイロンでの魔導師たちによる怪異のあと、未だに疲弊しきってるパロにいる女王リンダと彼女に無理矢理求婚してきた古いなじみであるイシュトバーンのその後。一度は体よく断られたイシュトバーンだったが、あきらめきれずにひそかにパロに舞い戻りリンダに近づこうとするが、それをヴァレリウスに阻まれる。が、そこに得体の知れない魔導師が現れ、、、、パロの街に起こる怪異、そしてイシュトバーンの前に現れる、現れるはずのない人、、、、ああ、先が楽しみ、早く読みたい!

ハヤカワ文庫 2013

栗本薫 – グイン・サーガ外伝22 ヒプノスの回廊

昨年亡くなってしまった栗本さん。悲しかった、寂しかった。長年読み続けていたグイン・サーガシリーズが未完のままもう読めない、ということがすごく残念だった。

ところがうれしいことに、限定発表された「前夜」(アニメのDVDに収録された)やハンドブックに掲載されただけの小作品が外伝シリーズの22巻としてまとめられ、ついで(といっては何だが)このグイン・サーガ・シリーズの契機となった古い作品「氷惑星の戦士」など全6編からなる本となって発売されていた!うわーんなんてうれしい。ハヤカワさんありがとう。

収録されている作品たちが書かれた時代が結構はなれているので、話ごとに微妙にテイストが違うのだけれど、やっぱりグインはグインであり、少し読むだけであの広大な世界が目の前によみがえってくる。面白いのは「前夜」というこのサーガが始まる前のエピソード(まさに事件の前夜のこと)と、本編130巻や外伝21巻で描かれたことよりさらに先のエピソードも含まれていて、この広大な物語の裾がまた垣間見えたこと。130巻の先はどんなふうになっていってたのか、いったい栗本さんなにを見ていたのかがちょっとわかってうれしい。それに英雄グインとしての活躍があんまり最近描かれてなかったけれど、今回たっぷりでてくるのもうれしい「ヒプノスの回廊」。

ああ、でもこれがほんとうにラスト。だれかに先を書いてほしいとなんてまったく思わないけれど、寂しさはつのる。もっと読みたかった。こんなに夢中になって、本当にこの物語の世界がすぐ横にあるような感覚にまでなる作品にもう出会うことなんてないかもな。

栗本さん、ほんとうにありがとう。

ハヤカワ文庫 2011

栗本薫 – 見知らぬ明日(グインサーガ130)

130巻。この巻にて絶筆。未完。

なにもかもが悲しい。寂しい。

友人におもしろいよと勧められて読み始めたのがたしか中2のときだから、もう25,6年前。そのときはまだ15巻も出てなかったように記憶しているが、もともとこういうサーガもの、ヒロイックファンタジーもの、剣と魔法がでてくる中世的な世界観なんかが好きだったので、すぐに虜になって貪るように読み、新刊が出版されるたびに喜んで買ってきては読み、途中何度か読まなかった時期もあったけれど、再び読みつないで、新刊が長く出ないときにはまたいちから読み直したことも何度か。そして完結するといわれた100巻を越え、一体どこまでいくのかと思った矢先の著者の病状悪化。そして絶筆。

こんなに長い間読んでいると、もうこのグイン・サーガの世界が自分の中では現実のどこかに存在する世界であり、確かにこのキャラクターたちが息をして生活している、という実感さえあるものとなっている。だから、この先もう物語が語り継がれずにすこしずつ彼らが風化していってしまうのがとても寂しい。もっともっと新しい物語が読みたかったし、彼らの運命の行方を知りたかった。

ダンボール箱の中に収められている、ボロボロになったグイン・サーガたち。こんなに長い物語をまた読むのだろうか?と疑問に思い、何度か捨てようかともおもったけれど、やっぱり別れがたい。また最初から新鮮な気持ちで読みたいな、と。歳を経て(もちろん自分自身も、物語も、そして作者も昔は若かった!)読んでみると、またちがった感想を持つのかもしれない。

ほんとありがとうございました、栗本薫様。
あなたの物語が私の血と肉の一部分となり私が出来ているのです。

改めて安らかにお眠りください。

ハヤカワ文庫 2009

栗本薫 – 運命の子(グインサーガ129)

129巻。ヤガに乗り込んだヨナとスカールだったが、「新しきミロク」によって追い詰められる。無事ヤガから脱したかに思えたが、追っ手は執拗でヨナも再び捕まってしまう。一体この新興勢力は何者なのか?そしてフロリー親子の運命は?

物語は急展開していく。まるで著者の余命が少なくなっているのをわかっているかのように。ここにきて外伝一巻「七人の魔道師」との絡みが急にわいてきたり、なんのかんのと物語を少しでも収束する方向に導こうとしている意図が感じられるのにもさえ、栗本氏の焦りが感じられるなーと思うのは、考えすぎ?

なんせ、あと1巻しかない・・・・

ハヤカワ文庫 2009

栗本薫 – 謎の聖都(グインサーガ128巻)

ミロク教の聖地ヤガに潜入して、その様子を探ったり、知人を探す日々のヨナとスカール。怪しげな気配がせまる中、魔導師のはたらきもあり、会いたかった人物をみつけたが、気づかぬうちに状況はすでに最悪の方向へ向かっていっており、ヨナの身に危険が・・・・

ああ、物語が急展開してくるわ、秘密がなんだかじんわり見えてくるわ、ケイロニアの様子も急変するわ(外伝一巻とのカラミがより鮮明に)、とこの先を読むのが非常に楽しみになるような巻なのに・・・ああ。

あとがきがないのがめちゃくちゃ淋しいです。

ハヤカワ文庫 2009

栗本薫 – 遠いうねり(グインサーガ127)

これで栗本さんのグインサーガは終わっちゃうのかな?だとするとものすごく悲しい。話の展開も少し新展開がみえてきて、いまだ物語には話の上でしかでてこなかった聖地ヤガが登場し、ミロク教のいまの姿が垣間見えてきたところだというのに。

また、ついに外伝一巻とのつながりがあるのであろう部分が登場、ここでつながるのか!と驚き、うなり。

少しずつ物語の輪が閉じようとしている矢先だったのに。

悲しい。

ハヤカワ文庫 2009

栗本薫 – 黒衣の女王(グイン・サーガ 126)

前巻の最終章で突然出てきたイシュトバーン。いきなりパロにいきたいと言い出す。そう、それまで怪我しておとなしくしてたんだった、そうだそうだ。

その彼が突然パロに現れ、クリスタルが騒ぎとなる。
もちろんタイトルの黒衣の女王といえばリンダ。話の展開は読めてしまうけれど、通らなきゃならないターにニグポイントか。でもリンダがほだされてしまって・・・・ていう展開になってしまったら?なんて考えても面白い。

イシュトとパロ。なかなか因縁だなぁ。

ハヤカワ文庫 2009